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吉姫様の戦国サバイバル ベータ版  作者: 夢想する人
第二章 裳着の年 (天文十五年1546)
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第二十二話 弓師が来た。牛さんも来た。そして、吉姫はまた領地へ。

弓師が例の依頼の物を届けに来ました。何故か牛さんもやってきました。





『弓師が来た。牛さんも。』



先日頼んだ弓の試作品を作ったと知らせがあり、弓師が訪れた。

この人は、実は守護様の正式な家臣ではないが、家臣筋の人だそうな。

それで牛さんと付き合いがあったり、合戦に参加したりしてるのだとか。


弓師は包から弓を取り出すと、私に見せ、これで宜しゅうございますか?と。


私は、出来上がった弓を受け取ると、細部を確認する。

まず、滑車だが、木製ではなく鋳物らしい金属に変わっていた。

やはり、木では強度に難があったか…。


滑車の辺りを見てみる。


弓師曰く。


滑車は頂いた部品は木製でしたが、強度に問題が有り、こちらの伝手で鋳物師に鋳物製の複製を作らせました。

これで、前のものに比べると重量はありますが、強度は大丈夫かと思います。


あとは、この時代では見られない弦の掛け方。こちらの方もしっかり掛かってる。


弓師は、弦は普段使われてる弦ではこの弓では柔軟性が足りず、色々試してなんとか用途に合う弦を用意しました。


更にリムの部分もこの弓に適合したリムになっており、通常の和弓のそれとは異なる。


弓の部分は和弓と力の掛り具合が異なっておりましたので、試行錯誤してこれに合う弓を作りました。


と、それぞれ顛末を話してくれる。


そして、弓を引いてみると、最初は重く、そして引くほど軽くなり、引ききるとそのまま女の腕でも楽に維持できるほど軽くなるという、滑車弓の特徴を実現していた。


私は弓師を見て、よく出来ています。流石、太田殿の推薦です。と褒めた。


すると、太田殿がいやあ、拙者が骨折りしたかいがあったでござる。というと笑った。

弓師はムッとするのかと思ったら、


曰く。


そうなんですよ。この鋳物の滑車の鋳物師を紹介してくれたのも、この御仁だし、弦もこの御仁の手です。

それがし一人では実現は難しかったやも知れませぬ。というと、太田殿の肩をポンと叩く。


すると、太田殿が拙者では肝心の弓の部分は実現できなかったでござるよ。と。

太田殿が弓師の背中を叩く。


では、お二人の頑張りでこの弓が完成したと言うことですね。流石です。と褒めると、二人共照れた。


そして、後は、と、用意しておいたリリーサーを取り出すと、それを使って弓を放って見せて完成。


弓名人の太田殿が目を丸くしていた。


二人に試撃ちしてみたか聞くと、既に試射してみたとのことで、引けば引くほど軽くなる感触が不思議だったとかで、最初が重たいだけで後が軽くなるなら、今より強い弓に仕上げても良さそうだと口々に話してくれた。


まずは満足するものが出来たかな。


二人を伴うと、古渡の城の弓の練習場に連れていき、リリーサーを試してもらう。

付いてなかったノッキングポイントを付けてもらい、そこにリリーサーの爪を掛けて弓を引き絞る。

この時代の弓には存在しないサイトとピープサイトを覗き、的に放つ。

以前より、更に撃ちやすくなったと好評。

むしろ、これだけ精密な弓であればこそ、これが必要だと太田殿の弁。


ただ、太田殿曰く、この複雑な弓は合戦で使うには壊れるのが怖く、普通の弓衆に混じって使うよりは、特に上手い弓名人が大将首を狙うのに使うのが良いのではないかと。


確かに、この弓だと何かに当たったり、打ち付けたりしたら壊れてしまいそうだ。

合戦では弓につける槍パーツみたいな物で近接戦をする事もあるらしい。


兎も角、二人にはご褒美に焼酎の瓶をプレゼント。


二人に、この弓の代金を聞くと、半分戯れで作ったような物だから、お代は必要無いとか。

ならばと、私もこの弓は性能を見たかったので作ってもらったので、一先ずこの弓は太田殿にお貸ししておきます。といって、太田殿に渡したのだった。


太田殿はちょっと驚くが、感激し、ならば拙者はこの弓で、次の戦にて手柄にてお返ししましょう。それまでには、この弓を少々改良したり、修練せねば。とニンマリ。


弓師に、この弓が実現し、この様に効果がわかったから、またいずれ新しい武器の制作をお願いするかもしれないので、その時はまたお願いします。と頼んだ。


弓師も、承った。またお声掛けくだされ。鉄砲が持て囃される昨今、拙者もこのような新しい武器を手掛けられるのは存外の喜びです。と微笑んだ。


コンパウンドボウは一先ず成功。

弓衆に配備というのは無理そうだけど、使い方を考えれば使いみちは色々ありそう。





『農具革命』



前回領地に行ってから、十日程過ぎた頃、いつものメンバーでまた領地に赴いた。


弥之助が先行して先触れを出し、領地に到着すると乙名が出迎えた。

最初に比べると随分とフレンドリーになってきた気がする。


また、乙名に手土産を渡すと、進捗など報告を聞く。

圧搾機の方は、建屋のほうがほぼ完成していた。

この時期の漁村の建物はお金がなければ瓦葺きにするわけでもなく、平成の感覚で言えば板葺きの掘っ立て小屋。

それでも想像より早い進行に、大工を労い差し入れを渡す。


乙名の話だと、前に作った三本鍬や円匙が領民に好評との事で、領民の私に対する評判が上がってるらしい。


そんな話を聞きながら、鍛冶屋へ向かうとはねくり備中は既に完成、しかも人力耕運機まで完成していた。


はねくり備中は田起こし鍬と名付け、人力耕運機はそのまま耕運機と名付けた。

使ってみた農民の話では、固くなっている畑も腰を傷めず楽に耕せ、更にそれで起した所に耕運機や三本鍬を使えば、これまでより遥かに楽に、短時間に作業が出来ると絶賛した。


人力耕運機は手間がかかると思ったが、新しい農具に気を良くした村の者が手伝った事と、早く見たいという熱意に圧され完成したらしい。


なんとも、鍛冶屋には苦労をかけた。鍛冶屋にも労をねぎらいいつもの手土産を渡す。


費用はまた乙名より、代官を通じて受け取って欲しいと伝えた。


権六殿はあまり口を出す方ではないが、出来上がった農具の数々を見て、これらがこの尾張の国で普及すれば、農民はより多くの田畑を手がけることが出来ますな。と、腕を組み、顎髭を扱きながらしみじみと語った。


半介殿も然り然り。この半介、感服つかまつったと。感心顔。


私はただ、領地の生産性を上げれば先立つものが出来るだろうと、その程度のことしか考えてなかったが、改めて考えの狭さ、浅さ、と言うものを反省したのだった。


確かに、いずれこの領地で結果が出れば、父の領地で使われ、更には尾張全土に広がっていくのかも知れない。かつて平成の世で見た、金色に輝く収穫期の田園風景が目に浮かんだ。





『武具を作成』



焼酎をチビチビしながら一服を入れてる鍛冶屋に新たな仕事を依頼する。


図面を渡し、各部位について説明する。

これは、海の向こうの外国で使われている武器で、非常に強力だが、使うのが難しい、猛将が使うための武器だと話す。


鍛冶屋は、図面をじっくりと見ながら、ほう…。と言葉を漏らす。


そして、暫し見た後、武具はもう長く作ってない。だけど、これを見て心躍らないといえば嘘になる。と、ギラギラとした漢の顔をした。


これは贈り物にするので二振り作って欲しい。費用はまた乙名を通じて請求して欲しいと伝え、期間を聞くと、武具は地金が大事だから運が良ければ一月後に完成してるとのことで、ではまた一月後に来ると伝えた。





『釣りと戦国BBQ』



村人に釣り道具を借りると、お供たちと釣りをすることになった。


桟橋に魚籠と餌を置くと、各々が針を垂らす。女中さんは見てるだけでいいらしい。


流石、この時代は水産資源が豊富なのかよく釣れる。

大きいのだけを残し、小魚はどんどん放流し、一回分の食事くらいの魚が釣れたので、砂浜で焼いて食べることにする。味付けは塩。そう言えば、醤油はどうなったんだろう。


捌こうと包丁を借りると、なんぞコレ…。刀?

なんと、平成で見慣れた包丁はこの時代には無いのでござる…。


女中さんも魚を捌いたことなど無いとの事で、仕方ないので包丁を貸してくれた村の女性に頼むことにした。


流石、漁村の女性、手際よく捌いてくれて、釣りたての魚を串焼きにし、堪能したのだった。


意外に、男連中は皆釣りの経験があり、結構な釣果で、釣と魚を楽しめたのだった。


乙名に礼を言うと、一月後にまた来ることを告げ、村を後にした。



農具の改良は、生産力の向上にも繋がるという話です。


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