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吉姫様の戦国サバイバル ベータ版  作者: 夢想する人
第二章 裳着の年 (天文十五年1546)
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第十五話 オトナの一歩

領地へ視察に行きましたのですよ。





『御開帳』



裳着を終えた翌日。大人としての新しい一日が始まる。


昨日は疲れすぎていたのか、気が付かなかったが私が使ってる居間に新しい家具が増えていた。


そう、鏡。この時代では高級品のアレです。


漆塗りの絵画のイーゼルのような台の上に載せられたソレは、埃が被らないように綺麗な覆いが付いていて、それを外すと丸い蓋がついた鏡が姿を現す。


蓋も漆塗りで豪華な絵があしらわれており、それをそっと外すと久しぶりに反射する板が見えた。

金属を磨き上げてで出来た鏡は円形、それなりの厚みで軽く持ってみたが結構な重さがあり、ガラス鏡に比べると写りは今ひとつ良くない。


さて、この世界に来て初めて自分の顔とご対面…。


はい、前世とはまるで別人です。当たり前ですが。


前世ではどっちかというと彫りの深い顔つきだったが、今の顔は一言で言うと凛々しい。

そう、平成の芸能人で言うと大河ドラマに出ていた仲○由紀恵に似てる様な?


思ったのはコイツどう見ても十二歳には見えないでござる…。

そして、他人の顔感が半端ない。



兎も角、尾張一の美女と言われた市姫がどんな顔をしていたのか、この時代の美的感覚は判らないので、それは判らないが、いずれ妹として対面すれば明らかになる筈。

私が女である以上、史実通り女である保証は無いが…。


今の私は平成の感覚ならば、それなりの美人の様な気もするが、この時代の感覚から見てどうなのかは判らない。少なくとも、尾張一の美人などではないだろう。

女中さんにも美人は居るし、寺に通ってる女の子の中にもかなりの美少女が居る。





『初視察』



今日は領地に視察に行く予定。

この時代の漁村ってどんな感じなんだろう。


朝餉を済ませると身支度を整え、いつもの使用人の男性に化粧地に行くことを伝える。

すると、聞いております。との事で、この人が案内してくれるらしい。


この人は弥之助という名だそうだ。


屋敷の前に来ると、姫様、お供いたします。と、昨日の滝川殿が待っていた。


弥之助と滝川殿と私、それに女中さんの四人で化粧地へ向かう事になった。


場所は古渡の城の南の方で、熱田にも近いらしく、そんなに遠くない場所との事。


古渡城の城門の方に進んでいくと、何故か柴田権六殿が立っていて、一緒に行ってくれるらしい。


お役目は忙しくないのか聞いてみたら、まだ当主ではないから戦でも近くなければそんなに忙しくないとか。本当かなあ?


本人がそう言うので、権六殿を加えて出かけようとしたら、後ろから何処かで聞いたことのある声が私を呼んでいる。


何故か、やってきたのは佐久間半介殿。聞くと、自分もお供しますとのこと…。


権六殿と同じ質問をすると、同じ答えが帰ってきた。この時代の当主じゃない嫡男ってそんなに暇なのか?


そう言えば、信長の愚連隊もひがな遊び歩いてたっぽいなあ…。


それで、半介殿も加えてさて行きましょうと声をかけようとしたところで、半介殿が滝川殿を見つけて、吉姫様、この者はどちらの方です?と聞いてくる。

すると、権六殿も家中では見かけませんが、どちらの家中の方なのです?と。


私は、新しく父に仕官してきた甲賀出身の滝川彦右衛門殿で、私の側仕えをしてくれることになったと答えた。


滝川殿も、二人に自己紹介する。


すると、二人は何故かショックを受けた様子で、側仕えなら…と言いかけたところで、顔を見合わせて。兎も角、何処へなりと、我らもお供いたす。と言い出した。


私は、二人は随分と暇なのだなと呆れたのだった。


とはいえ、二人は既に戦にも出ていて、そう遠くない時期に起こる美濃での戦にも出ることになるんだろうと。

そう考えると、二人と今こうやって交流するのも悪くないと思ったのだった。


いずれ二人とも家を継げばこんなところで油を売ってる暇など無くなるだろうから。


彼らを伴い、てくてくと化粧地に向けて歩いていく。


弥之助を先頭に、滝川殿、私、女中さん、そして権六殿と半介殿の順だ。


古渡を出て南に進みに進んでいき、熱田を通り過ぎると程なく潮の香りが漂いだした。

案外と海が近かったのだと気がついたのだった。


よく考えれば、熱田もすぐ側が海だったが、あの時は祭でそこまで行かなかった。


そして、浜まで行くと、そこからは浜を左手に見ながら歩いていき、古渡を出て一刻も歩かないうちに、ひなびた感じの集落にたどり着いた。


そこが私が父より貰った領地だった。


弥之助が先に集落に入っていくと、村の乙名がやってきた。


父は既に代官を通じて知らせていたらしく、村に迎え入れてくれた。


この村は父の直轄地で、この村の代官は他にも父の直轄地をいくつか受け持っているとかで、用事のあるときにしか来ないらしい。


この村は私の領地となるので、この村の税は代官を通じて私の化粧料となるらしい。

化粧料というとお化粧する化粧品代の様に聞こえるが、勿論それも含まれるのだが基本的には武家の女性の生活費の事で、ここから使用人や家臣などの給金も支払われる。


私の場合は今のところ家臣も使用人も居ないから、自分の生活費だけという事になる。

滝川殿は私の側仕えという事になっているが、父の家臣だ。


さて、私の領地はというと、平成の感覚で言えば寒村でありひなびた漁村だ。

砂浜から桟橋が伸びており、そこに小舟が係留されている他、浜にも小舟が並ぶ。


他には、海産物を干していたり、村の内陸の方には普通に畑があり田んぼがあり、と言った農村っぽい風景が見える。


こういう半農半漁の村を磯付村と言うんだったかな。


船大工を兼ねてる大工も居れば、農具や漁具を作る野鍛冶も居るが、店は無かった。


権六殿も半介殿もこういう村には来たことが無いらしく、船や漁具を物珍しそうに見ていた。


私もどんな事が出来るのか考えながら、乙名の説明を聞きながら色々見て回った。


とりあえずは塩なんかが良いのかな、それとも領民の人にメリットがある方向が良いのかな?


勿論、自分の領地だからと言って、門外漢が好き勝手出来るというわけではないから、この村の人たちと相談しながらなら色々と試せれば良いな。


まだ手付かずのスペースは沢山ある様だし。


兎も角、ここで私は色んなことを試してバリバリ稼ぐのですよ。


ちなみに、今現在先立つものが全く無いのに、税金が入るのはずっと先との事で、どうしたら良いのか弥之助に相談した所、父からしっかり預かったお金が屋敷にあるらしいので、一先ず安心したのだった。


この日は、村で獲れたての魚をご馳走になり、村の人達に挨拶し村を後にしたよ。

お供の皆も新鮮なお魚が食べれて大満足でした。


やはり、魚には醤油がほしいなあ。



吉姫は水を得た魚のように領地で色々やらかすことが出来るのか。

そして、滝川殿の正体は?一益なのか、それとも一族の誰かなのか。

答えはまだまだ先になります。

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