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吉姫様の戦国サバイバル ベータ版  作者: 夢想する人
第四章 激動の天文十七年(天文十七年1548)
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第九十七話 鉄砲作りその弐

鉄砲作りの続きです。





『鉄砲作りその弐』



天文十七年三月も下旬に差し掛かかり、領地へ行く為の準備をしている頃、津田殿から先日の鉄砲が完成したと報告がありました。

その鉄砲の為のパーツは既に佐吉さんが完成させています。

毎度のことながら、完成品を知っているというのは本当に強いですね…。

この人は歴史オンチなのですが前世での知り合いにサバゲーの銃のパーツ作りを頼まれていた関係で銃器の知識があるのです。

自分でも海外出張の時に射撃した経験が有るというのですから心強いですね。

まあ、私も有るのですけど…。


鍛冶場の奥にある鉄砲鍛冶の区画に訪ねて行くと、津田殿と芝辻殿、それに鈴木殿らが待っていました。


既に机の上には頼んでおいた鉄砲が置いてあります。

と言っても機関部だけの鉄砲なのですが、一瞥するだけで技術の高さがわかりますね。


「津田殿、芝辻殿、鉄砲が完成したとの事ですがご苦労様でした」


「はっ、姫様こちらの方になります」


机の上の鉄砲を指し示します。


「鉄砲としては未完成も良いところなのですが、こちらの方で宜しかったでしょうか?」


芝辻殿が恐る恐る聞いてきます。


私は笑顔で答えます。


「ええ、これが欲しかったのです。

 佐吉さん、あれをお願いします」

 

「はい」


佐吉さんが箱を出してきます。


「この鉄砲で試してみたい部品を佐吉さんに頼んでおきました」


そう言うと、佐吉さんが一つずつ並べていきます。


ピストルグリップ、折りたたみ式ストック、直銃床に曲銃床、更にはフォアグリップにバイポッド。

この部品だけみたらさながら特殊部隊の装備に見えますね。


津田殿や鈴木殿は興味津々ですが、芝辻殿はだんだん不安げな表情になってきました。


これらの鉄砲のパーツを取り付けるため、この鉄砲の機関部を収めるためのガワが最後に取り出されました。

事前に紀州筒を一丁渡してありますので、寸法の方は大体合うようで芝辻殿作の見事な火縄銃がケーシングに収められました。


するとどうしたことでしょう、戦国情緒溢れる火縄銃がたちまち現代銃に大変身。

正に戦国の匠と現代の匠のコラボレーションです。


勿論、そんな事は知らないある意味戦国銃ヲタの二人は興味津々ヨダレたらたらでさあ触らせてくれと手がワキワキしてますね。


まずはスタンダードに曲銃床、それにアイアンサイトと普通のライフルグリップを取り付けた物を渡します。


津田殿が先に受け取り、持ってみたりバランスを見たり狙いを付けてみたり。

ひとしきり見終わると鈴木殿に渡します。

鈴木殿も同じく実際に狙いを付けて引き金を引いてみたりします。


「ふむ、いい感じですな。

 今使われている普通の火縄銃に持った感じが近い気がします。

 しかし、この肩当てですがこのままだと鎧に当たりまするぞ」

 

「ええ、この形がいま西の果にあるこの銃の出処の国では普通の形なのですが、銃の肩当てを付けるための金具が鎧に付いていたりこの部分だけ切れ込みがあったりします」


「なるほど、それでしたら大丈夫そうですな。

 一先ず練習場で試してみませぬか?」

 

「そうですね。ではそうしますか」


そう言うと、皆頷くのでぞろぞろと皆で練習場へ向かいました。


そして、準備をしてもらうとお試しの開始です。

そろそろ専用の射撃レーンが欲しい感じはありますね。


津田殿と鈴木殿が順番に撃ちます。


「では、まず最初の形から試しまする」


平成の世の警察が使ってるショットガンの様な形の火縄銃の準備をし、試し撃ちをします。

見た目は近代的になっても相変わらず暇が掛かりますね…。


隣で津田殿の弾込めを見ている鈴木殿に話しかけます。


「何かこの弾込めを短縮する為の良い方法は見つかりましたか?」


鈴木殿は思案顔になります。


「一応。

 紙に一発分の弾薬を包んで入れておき、それを弾込めの時に使うという方法で少しは短縮出来るようになりましたが、まだ工夫が要るようで劇的には早くなりませぬ」

 

早合の原型をもう作りましたか。さすがですね。


「そうでしたか、その方法なれば恐らくその紙を油か蝋に浸せば湿気を防ぐことが出来るかも知れませんね」


鈴木殿は手を叩きます。


「おお、言われてみればその様な事もありますな、早速試してみまする」


津田殿が準備を終えて一発射撃します。


パーンと独特の乾いた音が響くと的に当たります。

そして、津田殿は感覚を確かめると鈴木殿に渡します。


「姫様、この肩当ての付いた銃は威力の強い銃に良さそうですな。

 この火縄銃は二匁半の弾を使う火縄銃ですが、この肩当てがあればもっと威力の強い鉄砲で効果を発揮しそうに思いまする」

 

「そうなのですね。

 普段撃っている火縄銃は頬撃ちをしていますが、あれはそこまでの反動では無いのですね」

 

「左様、これより大きな弾を使う鉄砲なれば反動も凄うござる」


「ならば、一度その威力の強い鉄砲で試してみるのが良いかも知れませんね」


「はい、また新たにこしらえて試してみたく思いまする」


津田殿とそんな話をしていると鈴木殿が準備を終えて撃ちます。


鈴木殿の感想も津田殿と同じで、更に威力がある銃ならば効果があるだろうとの事。


次は直銃床にピストルグリップの組み合わせに交換してまた試し撃ちです。


鈴木殿が感想を述べます。


「この銃床は反動が真っ直ぐ後ろに来るので、反動をより抑えやすく銃が安定します。

 しかし、照準器の位置が低くなるので少し狙いにくくなりますな」

 

それを聞いた佐吉さんが照準器の位置を高くして調整します。


鈴木殿が受け取り試しに覗いてみます。


「おお、これならば問題ございませんな」


「なれば拙者が」と津田殿が今度は試し撃ちします。


「ほう、この銃は良うござるな。

 狙いやすく、反動が上手く抑えられる。

 この新しき持ち手が実に手に馴染みます」

 

津田殿は気に入ったみたいです。


更に、フォアグリップを追加します。


「これは、更に安定しますな。実に良い」


それを聞いて待ちきれない鈴木殿が奪い取る様に受け取ると、狙いをつけてみます。


「ほう、これは…」


早速、弾を込めて撃ってみます。


「これは良うござるな。

 そして、これならば今のように一発一発時間を掛けて弾を込めるのではなく、引き金を引くたびに弾が出るような物になればもっと良い様に思いまする。

 まあ、その様な夢の如き鉄砲は存在しないのでありまするが…」

 

私はそれを聞き、思わず佐吉さんを見てしまいます。

佐吉さんは肩をすくめて見せます。

流石にそれは実現が難しいのでしょう。


最後に、バイポッドを試します。


これまでと違って、机に脚を立てての試し撃ちです。


「ほう、これはこれは。

 こんな簡単な物を前に付けるだけで、こんなに狙いやすい」


津田殿が感心します。

そして、引き金を絞るとパーンと音がして的に命中。


「これはよろしゅうござるな。

 使い方を考えねばならぬかと思いまするが、狙い撃つのにとても良きものです」

 

次いで鈴木殿が同じく試してみます。

そして、射撃した後ジッと考えます。


「これは…、もっと大きな鉄砲で距離を飛ばす時に使えば相当な効果が見込めまするな。

 これは色々と使い方を考えれば、やれる事の幅が広がるやに思いまする」

 

津田殿もそれを聞き頷きます。


「この銃の組み合わせならば、これまでの火縄銃とは別の事ができるやも知れませぬ。

 拙者もどういう使い方が有るのか考えてみまする」

 

「そうですか、それは良かったです。

 この銃はあくまで試験用に色々と組み合わせられるように特別に作ってもらったものですが、いい組み合わせが見つかれば、その形で作るのが良いと思います」


「はい。その様に思います。

 早速此度の結果を踏まえて清右衛門に作らせてみまする」

 

「期待していますよ」


「ははっ」


こうして今回の鉄砲の試射会は終わったのです。

また少しだけ前進したような気がしますね。


鉄砲作りの人たちと別れた後、佐吉さんに図面を渡します。

そう、千代女さんに頼まれていた小型のクロスボウです。

所謂連弩的な物で、カートリッジに十本程度の矢を収めテコの原理で弓弦を弾き引き金を引いて射撃です。

殺傷力は多分あまりありませんが、怪我をさせて行動不能にすることくらいなら出来るかも知れません。

何より連発で矢が撃てるのが良いでしょう。多分、馬上でも使えるかも?


佐吉さんは図面を見て話します。


「ハンドクロスボウですか…。

 また作っておきます」

 

「はい、よろしくおねがいします。

 近々、田植え機を持って領地の方に行きますのでその時は同行してください」


「わかりました。

 では…」

 

しかし、千代女さんこんなもの貰って何に使うんでしょうね…。

まあ良いですけど。



地味に鉄砲の開発が進んでいます。

そしてハンドクロスボウも発注しました。

次は田植えですね。

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