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吉姫様の戦国サバイバル ベータ版  作者: 夢想する人
第一章 戦国時代転生(天文三年1534~天文十五年1546)
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第八話 遊具を作ろう。

更に年を経て、もうすぐ十歳。

吉姫は中々子供たちと打ち解けられず悪戦苦闘です。





『朝廷よりの使者』



また年が明けて天文十二年、吉は九才になりました。


もう直ぐ二月になろうかという頃に、父に朝廷より使者が来た。

父はこれまで備後守は自称であったが、正式に朝廷より備後守に任じられた。


と言っても、父は備後に居るわけでもなく、何か大義名分として使えるわけでもない。

無価値ではないが、名誉称号みたいなものだ。


使者の本当の来意は、当然別のことにあり、今回は手元不如意な帝の荒れ果てた内裏を修理するために資金を出して欲しいという、そういう話のはずだ。


父は快諾し、父の命を受けた平手政秀殿が上洛の為、京に旅立った。


平手政秀殿というと、史実では信長の傅役だった人だが、この世界では弟の嫡男勘十郎の傅役となっているので、私は精々顔を見た程度だ。


史実に残ってるように、外交を任されそうな知的な風貌の御仁だった。


父はと言うと、相変わらず忙しくあちこちを飛び回っており、父の死因って実は過労死なんじゃないかと思えるほど。


特に聞かされることもないが、このときもあちこちに私の弟や妹が出来てるはず。


平手政秀殿は初夏の折に、父のもとに戻ってきた。

朝廷への貢献が認められ、平手殿は中務丞に任じられたそうだ。


父は政秀殿の無事の帰還を喜び、随分話し込んでいた。

恐らく、京までの通り道で色々見聞したことを話してたのだろう。


実は去年の秋頃、隣国の美濃より土岐頼芸様が某蝮殿に追われ、父を頼ってきた。

今は那古野城のかつてあそこの城主だった今川氏豊殿が父のために建てた離れに、家族と住まわれている。


いずれ、美濃に攻める時の大義名分となるはずだが、ここで父は大敗するのだ…。

なんとか、それを阻止したいと考えている。私の生き残りのためにも。





『ゲームを作ろう』



多忙な父は兎も角、私は相変わらず屋敷での習い事と、寺通いを続けている。


快川和尚との習い事が終わってからのお話は楽しいものの、肝心の同じく寺通いをしている子達との距離が、どうにも縮まらない。


勿論、以前に比べれば木彫り細工のプレゼントなどで距離は縮まったと思うのだが、やはりどうしても信秀の娘というのが見えざる壁となっていると言うか。


他の女の子達は普通に男の子達と混じって隠れん坊をしたりかけっこをしたりと、楽しそうに遊んでいるのだが、私が行くととたんに空気が変わって姫様と下々になってしまうのだ。


一人くらい跳ねっ返りが居ても良さそうだけど、なんともこの時代の武士の子供たちの礼儀正しいこと。


信長の愚連隊は一体どこに居るのやら。


そこで、他の子供達と更に距離を詰めるため、何か遊ぶものはないかと考えた。

幸い、私は小刀で作れるものなら、大抵のものは作れるし、文字も書ける。


一つは、定番だがリバーシ、もう一つは将棋。


テーブルトーク的なものも考えたが、流石に筆と草紙では厳しい…。


そんなわけでまず作りましたリバーシ。


草紙に線を引き、丸いコマの片方を筆で黒く塗り、完成。


やはり、娯楽に飢えたこの時代の子供たちには好評。特に小さい子にもルールがわかりやすいので習い事の後の楽しみとなった。


しかし、何故か私は相手が居ない…。解せぬ…。

早々と組みが決まってしまい、声が掛けづらいのか私が取り残されてしまうのだ。


仕方がないので、更にもう一つ。

この時代の将棋のルールは詳しくは知らないので、私の知ってる平成にもある将棋を作った。


駒を削り、裏表に文字を書き、同じく草紙に線を書き、完成。

こちらの方は少々手間だったでござる。


将棋は少々ルールが難しいので小さい子はよりシンプルなリバーシを好み、年長の子らに受け入られた。


流石にやったことがある子は居なかったが、どんなものかを知ってる子が居て、もっと大掛かりで難しいものだと思ってたらしく、私がこしらえた将棋は好評だった。


幾つも作るのが大変だったが、他の年長の子や寺の小僧さんが文字書きなどを手伝ってくれ、なんとか年長の子たちで遊べる数を揃えることが出来た。


そして、早速対局と相成るのですが…。


解せぬ。


私は再び一人取り残され、快川和尚と対局…。

和尚は京で本格的な大将棋もやったことがあるらしいが、私の作った将棋はシンプルでルールも洗練されており、対局しやすいとのお言葉。


さすが、最終的に残った形だけある…。


和尚との対局は、面白いのだけど、やっぱ強いのです。

全く勝てぬ程ではないにせよ、気がつけば詰んでいるのです。


でも、そんな私を和尚は始めたばかりでこれだけやれれば十分と褒めてくれるのです。


スミマセン、和尚。初めてじゃないのです。前世ではそれなりの回数やってます…。


そんな感じで、ロンリーな寺通いは続くのでした。


こんな筈では無かったでござる…。





『寺の子供たち』



寺の子供たちの中では私の評価は変わり者の姫様らしい。

一人黙々と木工細工をしていたり、かといえば遊具を作ってみたり。


普段は、和尚様とばかり話をしていて、それが余計にとっつきにくいのだとか。

親しくなった寺の小僧さんがこっそり聞いてくれましたよ。


ふむう。何が悪かったのか。


和尚とは話ししますよ?

だって、私が呼んだのですから。


頭がよく、マッチョで爽やかなイケメン僧侶、歴女じゃ無くても話ししたいですよ?

ええ、見た目は九歳でも中身は三十路をとっくに過ぎたお姉さんですもの。


それだけ和尚との会話は楽しいのです。


閑話休題、和尚は私の師ですから、将来の伴侶にはなりません。


今のうちに青田買いするという私のプランは既に崩れつつ…。


あれから、私が名前を知ってる子達が更に入ってきました。


佐々与佐衛門君、前田犬千代君の二人。


後の佐々成政は私より三つ年下の六歳、犬千代君は五歳。

どちらもまだ小学一年位の子供で、可愛いですね。


さて、次はどんな手を考えるかな。




そんなわけで、中々信長のようにはいかないのでした。


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