この先、きっと話さないだろうなと思ってた。
いつも本を読んでいた。いつも一人で座っていた。いつも… 独りだった。 俺の名前は中村諒。南中の中学二年で、特にやってる部活はなく、クラスメイトと関わろうとせず、トイレか水を飲みに行く時以外、いつも自分の席に座って、本を読んでいた。 クラスメイトと関わらないのは、ただ単に俺が引っ込み思案、控え目な性格だから。 この性格から俺は14年間、友達を作った事がない。 だから…
ガンッ
「よぉ〜 中村。相変わらず本ばっか読んでてつまんねー奴だなww」
「お前の頭の中は本のことばっかじゃねーの?w」
いきなり俺の机を蹴ってきたのは早乙女輝 こいつはいつも木村蓮 と一緒に俺のことで嫌味を言ってくる。こいつらは、まぁ いわゆる不良だ。髪の毛は金髪、ほとんど授業をサボっていて、しかもタバコを吸っている。 しかしなぜか早乙女だけ勉強ができる。この前の中間テストで学年2位を取っていた。 カンニングでもしたんじゃないのか… そんな動作は見られなかったらしいが。 木村は…ただの馬鹿。こいつらはどうせまた…
「なぁ、中村よぉ 今暇だろ? だったら俺達にサイダー買ってきてくれよ。もちろん、お前の金でなww」
まただ。早乙女はいつも面倒で迷惑な頼みを押し付けてくる。別に暇じゃないのに。
「おい、早乙女さんをシカトすんじゃねーよ、ボコられたくねーだろ?」
別に無視してない。思ったことを頭の中で言ってただけだ。 でもまたボコられたくないな…
「分かったよ。」
そう言って席を立ち上がった瞬間、
カラン、カラン… カラン、カラン… 学校が始まる合図の鐘の音と共に、担任の塩川雪 先生が 2年B組の教室に入ってきた。 塩川先生は美人でしっかり者で、男女構わず人気な人だ。 まだ若いと言うこともあってバレンタインに男子生徒からいつもチョコを貰っているらしい。
「はーい、皆んな席について下さ〜い、出席とりますよ〜 」
そう言って次の瞬間、早乙女が不機嫌そうに舌打ちをし、
「おい木村、行くぞ。」
「え、ああはい。」
そう言って二人は教室を出て行った。 塩川先生はため息をついて、
「じゃ、あの二人は欠席ね〜 まったく… 無事に卒業できるのかしら、特に木村君…」
そうブツブツ言い、先生は次々と出席をとっていった。
「橋本さーん」
「はーい」
「本条くーん」
「うーっす」
「キャルベットさーん」
「here. あー違う、います〜」
…………
「最後に中村くーん」
「はい。」
取り終わった後、 出席表をしまい、笑みを浮かべ、
「えー 今日からうちのクラスに新しい生徒が入ります〜 入って来て〜」
ガララッ
引き戸をあけ、つかつかと入ってきたのは、サイドポニーの背の小さい、ほんわかな雰囲気が出ている女子。
「初めまして、今日からこの学校に転校してきました、北村凛と言います、よろしくお願いします!」
明るくて、どこか子供っぽい。俺とは正反対な人。 それが北村さんの第一印象。きっとこの人とも話すことないだろうな、と思った。