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氷撃の派遣剣士  作者: 翼太郎
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異世界へ

ついに主人公の杉下が異世界へ向かうきっかけの出来事を書く事ができました。

次の物語からやっとファンタジーらしい世界が繰り広げられます。

世界観や構想は中盤までは考えてあるので、頑張ります。

仕事を終え着替えが終わり家へ帰る為、駅へ足が向かう。

今日もくだらない1日だったな・・・。

(あーあ今日も疲れたな・・・しかし明日は休みだ!明日は名刀の菊一文字のレプリカを買いに行くぞ!)

杉下は胸を躍らせていた。

唯一の趣味が、刀のレプリカコレクションだ。小学生くらいから侍のアニメで日本刀がほしくなり、おもちゃの刀で遊ぶのが大好きだった。

大人になっても刀の魅力に憑りつかれる。現実の世界に存在する名刀はもちろん大好きであるかどうかもわからない空想の刀の存在も好きだった。

杉下自身は刀を振るう事はあまりしなかった美しい曲線美が描く姿を見るのが何より癒しなのだ。

家へ帰る途中ATMで金を下ろしスーパーで惣菜のコロッケとサラダと飲料を買い自宅のアパートへ向かう

このアパートは派遣社員である寮みたいなもので、半額は派遣会社から負担される。もちろん電気、水道、ガス、インターネット代は自腹だ。

アパートの部屋の鍵を開け「ただいまー」と小声で言うが、もちろん返事は無い。

わかってはいるが、言う事が習慣付けされた杉下は、仕事から帰ったら必ず「ただいま」を言う。

家から帰ったら、派遣会社に今日の仕事の結果と働いた時間をインターネットで入力しなければならない。

派遣先である会社では、私用のインターネットになる為、出来ない事になっている。

(本当この日報報告めんどくさいよな・・・)

毎日の日報だけではない、月に1度出す月次報告書、スキルの目標と今後の技術力向上に何をするのか報告するスキルノート・・・

単純に派遣先で仕事をしてればいいという訳ではない。

家の中でも仕事を思い出す必要があるこの作業は、杉下は好きになれない仕事は仕事で家は家でプライベートくらいは自由になりたい。

本来だったら、自分の技術向上の為に勉強をしなきゃならないと思うのだが、いくら頑張っても正社員になれない現実に諦めていた。

テレビから流れるニュースキャスターの声を聴きながら、温めたスーパーのコロッケと自炊で炊いた米とみそ汁、サラダを食べる。

風呂掃除をしてから風呂を沸かし、入浴を済まして歯を磨き布団に入る・・・

布団の中で飾ってある刀のコレクションを見つめる

刀達は静かに杉下を見守る様に佇んでいる・・・

(明日はお前達に仲間が増えるよ・・・)

そう心の中で言い、眠る前に今日の出来事を思い出す。

仕事の職場に向かう途中で考えた自分の中の最大の疑問を考える己の存在理由について・・・


(俺はこんな事をしたい為に生きている訳じゃない・・・一生派遣で生涯を終えるのか・・・)


最近は、ずっと眠る前にこの疑問を自分にぶつけていた。

みんなは、自分の存在について考えた事はないのか?親に祝福され生まれた事を幸福に思うべきなのか?子供から大人へ金を稼ぎ税金を納める。


この日常は、みんなつまらないと考えた事ないのか?別に仕事自体が嫌って訳じゃないんだ・・・この、もやもやとした気持ちをどうかわかってほしい・・・

杉下は、涙を我慢しながら、眠りについた・・・


朝の鳥の鳴き声が耳に響く

うっすらと視界に朝の光が差し込む・・・土曜日の朝が来たのだ・・・

仕事は土日祝日は派遣先が休日の為休みである。

「うおっしゃああああああああああああ朝だああああああああああああ」

杉下は叫んだ朝っぱらから防音効果も薄いアパートで、隣の住人からドンっと壁を叩く音が聞こえたが気にしない。

だって嬉しいのだから!

「刀買いに行くぞ!」

誰も答えないのに刀コレクションの前で言う。

時間は9時になっていて、朝食と着替えを済ます事を考えたらちょうどいい時間だ。

ふふーん♪ふふふーん♪鼻歌を歌いながら、朝食の目玉焼きとパンと牛乳を食べる。

急いで歯を磨き、ものすごい早さで着替えをする。

車のキーを持ち財布とスマホをバックに入れいざ出陣!

目指すは、刀が売っているレプリカショップだ。

本物の刀も売っているが、派遣社員には値が高すぎるし何より刀の所持する免許も無い

車で行ける山道を越えた先に目指す刀ショップがある。

「待ってろよ!菊一文字!」

車の中で叫びながら、山へ向かう

法定速度ギリギリで走行し、子供の頃に大好きだった侍アニメのオープニングテーマ曲を聴きながら、刀ショップを目指した。

ちょっと帰り道は、曲がりくねったカーブの連続がありスピードを出しすぎていると危ないのだが、注意してればなんら問題はない。


(ここだけは注意しないとな・・・まじで事故ったらシャレにならんし)


関東から外れた山道を車で進み、目的の店が見える。

刀ショップの主人は古くからの顔見知りで、気前のいいおっちゃんだった。

「よう杉下じゃないか例のアレか?」

ショップの主人はニヤニヤしながら杉下に言う。

「そうだ例のアレを買う金の準備できたアレを見せてくれ!」

アレだアレだ飛び交っているがもちろんアレとは菊一文字の事である。

鎌倉時代の刀工、菊一文字則宗により制作されたといわれる刀で、後鳥羽上皇が定めた皇位の紋である16弁の菊紋を銘に入れることを許された。一文字派は銘を「一」とだけ彫り、この刀はそれに加えて菊の紋を彫ったので菊一文字と称するようになった。となっているが・・・

この刀は実は、実在はしていない空想に近い刀なのだ。

ショップの主人が、奥から布に包まれた刀を杉下の前で見せる。

「見てみな」

杉下の手渡された名刀菊一文字レプリカが光る

細身で大変優雅な太刀姿これぞ!菊一文字!(実在はしていません)

「おっちゃん!買いだ!べらぼーめ!」

杉下は、興奮が収まらないのか普段使わないっ江戸っ子を真似て叫ぶ。

「毎度!」

毎回、杉下が刀を購入する度この様なやり取りがあり、ショップの主人も杉下の事を気に入っており、そこらのレプリカよりかは、遥かに

出来のいいレプリカ刀を渡している。

「次は虎鉄なんてどうだ?いい感じに出来上がったら連絡するぜ?」

主人も嬉しそうに杉下に次の刀を提示すると杉下は、テンションがMAXだった。

「虎鉄か!いいな!金が出来たらまた来るよそれまで待っててくれ!」


車に乗り、隣の座席に菊一文字を寝かせエンジンをかける。

家に帰ったら1日この刀を愛でるのだ!家の刀コレクション達もこの菊一文字の仲間入りを待っているはずだ。

あまりの嬉しさのあまりに運転が雑になり、山道の下り道で考えもなくブレーキを使いすぎるとどうなるか・・・

山の下り道を車で下る途中のカーブに差しかかかる時に事件が起きる。


ブレーキが効かなくなる。

ブレーキペダルを最大に踏み込んでも加速が進みサイドブレーキをとっさに引こうと考えたが、目の前のカーブに運転するのに精いっぱいで、そんな余裕がない。

壁にぶつけて減速しようとも考えた瞬間に・・・

車が崖から守るガードレールを突き破り宙を舞う。

(あ、これ・・・俺死んだわ・・・)

直感でわかる己の死を読み取り走馬燈の様に高速で思考した。


あーあ俺の人生こんな糞な最後で終えるのか・・・なんだよこれ・・・笑えるだろ?

せめて人の役に立つ仕事でも思って技術者になったけどさ・・・

誰からでもいい一言感謝の言葉があれば頑張れたのかな・・・

杉下は最後の懺悔を刀に向かってつぶやく。

菊一文字を隣の座席から胸へ抱きか抱え車が地面へ激突する時間のわずかな間に

頭の中で声がした。


(もしもし 聞こえますか? あなたは私に選ばれました・・・契約の時が・・・来たのです。)

頭の中の声に何が起きたかわからず車の落下中で高速で思考が回転する。


「おいおい今、自分が死ぬかもしれないって時に幻聴かよ・・・とにかく助けてくれ!俺は・・・まだ死にたくない!」

車の中で刀を抱えながら見知らぬ声の主に「こちとら派遣社員だ契約だったらいくらでもしてやる」

そう叫んだ瞬間に声の主が頭に響く・・・

「わかりました・・・お連れしましょう・・・私の世界へ・・・そして私の願いを叶えてください・・・」

車ごと淡い光に包まれ杉下 幸也は、この世界から存在が消えた。





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