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氷撃の派遣剣士  作者: 翼太郎
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眠らない城塞都市へ

コウヤは、朝の朝食の時間にセルシウスから、魔法の電池と電球の進歩状況の報告を受けた。

 木のモンスターによる発電……電球の形もコウヤのイラストで、説明した形とは、違っている事に頭を悩ませていた。

「…………まさか電気をモンスターで発電するとは……俺には、理解出来ない。魔法がある世界だからこその発想なのかねぇ……」

 自分の世界とは、まるで違う発電方法により、コウヤの計画が暗礁(あんしょう)に乗り上げていた。機械だからこそ安定した電力を送り続ける事が可能なのであり、生き物で、電気を送るとなるとその生物の気分で、電力の波が出来てしまう。仮にこのまま、送電線によって電球を点灯させた場合、どうなるか検討も付かない。

(電気を送ればいいって訳じゃないんだがな……もし、そのモンスターが高電圧で電球に電気を送れば壊れてしまう)

「コウヤ?どうしたのです?腕を組んで……電気のモンスターで悩んでるのですか?」

 セルシウスは、コウヤが、様子がいつもと違う事に眉を曇らせた。

「いや……そのモンスターが、もし低電圧で発電してくれるなら、まぁ……問題無いと思う。だが、高電圧であった場合は、変圧器(へんあつき)が必要になる。電球の定格で動作する、200ボルト以内にしないと電球が壊れてしまうんだ」

 変圧器とは、元の世界でも、電柱のバケツの形をした物が乗っかっている物を誰もが、見たことあるであろうと思うが、あれは、送電線で送られる6600ボルトに近い高電圧を家庭用の低電圧に下げる為にある物なのだ。

中身は、コイルと油が入っており、高電圧のコイルと低電圧のコイルの銅線の巻き数によって、下げる電圧が決まる。

「しょうがない!とりあえず、そのモンスターが発電する電圧を調べよう。電線もそろそろ準備が必要だし、竹の炭化やまだまだやる事は、たくさんある!」

「それじゃ、お城に行こうよ!コウヤもセルルも早く着替えて!」

 朝食の片付けの手伝いをしているエリンが突然、意気(いき)軒高(けんこう)と台所から現れコウヤとセルシウスを急かすのであった。

 コウヤは、身支度の準備をし、電気を調べるテスターや簡単な工具類を持ち、2階から降りる。

城に向かう途中に鍛冶屋に寄り、トーマスに電球を繋げるソケットを作ってもらう様に頼み、城に向かう。

「良かったね。コウヤ、お父さんなら、楽勝で作ってくれるよ、竹も渡してきたし、あとは、お城の木のモンスターだね。コウヤ、あれを見たら驚くよ!」

エリンの言葉で、いささか不安になったが、今更、発電方式を変えてくれと頼んでも無理があるだろう。一体どんな、モンスターで、電気を作ってるのか見る必要がある。電球の形も確認したが、俺の絵が下手すぎたのか上手く伝わってなかった様だ……

「まぁ……ソケットは、なるべく丁寧に伝えたし、竹も燃やすだけだから問題ないと願うよ。電球も思っていたほど、酷くはないしな」

城の門番に話を通しヨークに会う為、案内をしてもらうコウヤ達、ヨークは、古代樹のモンスターの頼みである日光の光を浴びさせる事を約束した事を守り1階の透明な氷の天井がある、広間に移動させたみたいだ。

「コウヤ殿!お久しぶりです。体調を崩したと聞いておりましたが……」

「いやぁご心配おかけしましてすいません、それで、これですか?電気を発電できるモンスターと聞いています」

大量のケーブルに繋がれた木のモンスターが静かに段々の階段の頂上で、たたずんでいる。

「はいその通りです!これでこの王国の夜も明るいと訳ですな!」

ヨークは、わははと笑いながら、木のモンスターの発電力を力説するが、コウヤの心配は、拭いきれない。

セルシウスとエリンは、木のモンスターと会話してる様で、「元気でした?」と聞いてエリンに通訳してる様だ。

「まずは、このモンスターの発電力を計測させてください。余りにも電圧が高いか、低いかで電球の明るさや壊れる事がわかりますから」

 コウヤは、モンスターという生き物で、電気を発電するリスクを説明する。あとは、電線により都市の至る所に送電線を張ってもらわないといけない。さすがに1本づつコウヤだけで、電線を張るとなると途方も無い時間がかかる。

「なるほど……そうでしたか。申し訳ない!盲点でした。計測する事は、かまいませんよ!電線も任してください!ゴムという物で銅の線を覆えばいいんですよね?」

 この異世界では、ゴムという名前が無いだけみたいで、フラスコの事を魔法試験瓶と呼ぶそうだ。フラスコの密閉させる黒い蓋がある事は、トーマスに聞いている。その事をヨークに伝えた。

「魔法試験瓶のキャップがゴムなんですか?了解しました。銅の線とゴムの量産も急いでやりますよ。できれば電線の張り方も伝授してくれるとありがたい。電線は、兵士達にやらせましょう」

「わかりました。電線の張り方は、俺自身やった事は無いのですが、にわかでいいのなら、なんとか……。電柱も必要ですし、これから大規模な工事が始まると思って下さい」

 電線を人間の力だけで張るとなるとかなり大変な工事になるとコウヤは、予想する。だから長い電線を張るのではなく、1本の電柱ごとに電線を張る。とりあえず、電球を点灯させるだけの電線なら、比較的太くなくて大丈夫だ。また、断線した場合の事を考えてのメンテナンスの事を考えて、各方向に分岐させ、ブロックごとに分けるとなると断線した個所がわかりやすくなるとコウヤは、考えた。

「了解しました!コウヤ殿、至急、兵達を集め作業に取り掛かる様にします」、

「よろしくお願いしますヨークさん、それでは、モンスターの電気を計測させてもらいますね」

 古代樹のモンスターの場所へ行くと、セルシウスとエリンが何やら楽しそうにしている。

 「コウヤ、ヨークさんとの話は、終わったのですね。この古代樹さん、中々面白いですよ。なんて、言ってたと思います?」

「わかる訳無いだろ……なんて言ってたんだ?」

「外は、寒いし人間は、思っていたほど怖くなかったと言ってましたよ」

まぁ……木のモンスターだから、寒冷地帯は、あんまり好きじゃないだろうな……いい感じに人間の事を悪く思ってない様だ。

「それじゃ、ちょっと発電してもらえるかな?お前の出す電力は、どんくらいか計測したいんだ」

 かばんから、(けい)測器(そくき)を出し、木のモンスターの枝に電極を当てるとメーターが左から右へ針が動く。針は、直流の800ボルトくらいだった。これくらいなら、変圧器も大型を用意する事無く、なんとかなりそうだ。

「計測完了だ。それじゃ宿に帰って、電球の中身の作成だな……大量に必要だから、これは時間かかるぞ」

 これから、本格的に電球の生産をしなくてはならないが、現時点で、工場で大量生産という事は、不可能で、コウヤ1人で、電球を製作しなくてはならない……まずは、街頭の照明を最優先で制作し次は、家庭用だ。この作業には、2週間以上かかるだろう。ヨークも兵士達も他の作業で、忙しい。助力を頼むのはさすがに無理だ。

コウヤは、まさか、現実世界では、コンビニや電気屋に行けば、簡単に手に入る電球を自分の手で制作する事に少し頭が痛いが、これも、技術者としての務めと身を引き締める思いだった。計測器をかばんにしまい「帰るぞ」とセルシウスとエリンに言い出口へ足を向ける。

「コウヤもう帰るの?じゃあね!アンソニー!また来るからね!」

 エリンは、木のモンスターに名前を付けたらしく。モンスターも名前も気に入ったのか、アンソニーは、木の枝を左右に振って「じゃあの」という感じにエリンに別れの動作をした。

 宿に向かう道中に、この異世界の花を集めた庭園にコウヤ達は、寄る事にした。このセルシウスの氷の大陸は、ほとんどの動植物が育たない為、せめて街の中ではと住民が植えた花と聞いたことがある。庭園のベンチにコウヤ達3人は座り今後の話をする事にした。

「セルシウス、エリン、ちょっと相談したい事があるんだ」

 コウヤは、神妙な面持ちで2人に言う。これからは、ほとんど電球の制作に取り掛かり自分は、ほとんどそれに時間を当てる事になる。だから、その間に2人にその他の事案の解決に動いてほしかった。

「俺は、これから電球の中身の制作に取り掛かるけど、都市を街頭の電球全て作るとなる俺1人だとかなり時間がかかる。……俺はほとんど他の事に気を回すにはちょっと無理そうなんだ」

「たしかにコウヤ1人では、たくさんの電球が必要ですし時間がかかりますね……私とエリンで他の事を見てもらいと?」

「そうだ。ヨークさんと兵士の状況を聞きたい。すまないけど、セルシウスは、ヨークさんの様子をエリンには、竹の炭を大量に作ってもらいたいんだ」

「まかせてよコウヤ、さっさと終わらせて、もっといい刀打ち方教えてよ!」

エリンは、拳を握りコウヤの前に突き出すとコウヤも拳をエリンの前に突き出し言う。

「あぁ……さっさと終わらせて休暇ほしいな」

 ウヤは、鍛冶屋の2階で、電球の制作作業に入り、エリンは鍛冶屋1階で炭作り、セルシウスは、城への進歩状況の伝達、材料確保の為それぞれ動いた。

 コウヤ達が、この作業を完了するのに、約3週間の日程が必要になり、城の兵士達は、路地に木の電柱を建てる姿に戦をするはずの兵士達が、作業で汗を流す姿に住民達が興味を示すのは、必然であろう。

 民達は、兵士達に何をやってるのか聞く事で、コウヤ達が夜の街を明るく照らす電球を製作している事を知る。

インフラ整備等、この都市の技術者、力自慢の住民、はヨークの指示により電線を電柱に繋げる作業に関わり、作業に参加できない女性や子供、老人は、食事の配給等、都市全体でこのプロジェクトに参加する事となった。

 やがて……この都市の動きは、城の王族達にも伝わる事になる。ヨークは、この電球の事は、王族達には伝えていない何故なら、戦争の兵器開発の技術者であるヨークは、この事を王族に話しても理解されないか反対されと思っていたからだった。あくまで、ヨーク個人の思いで、コウヤ達に協力したのであるが、都市の民がこの作業に加わるとなるとさすがに王にこの事を話さなくてはならない。

ヨークは、この一連の事業をテセルブゼ8世に伝え了承を得た。

 王もこの民達のお祭り騒ぎに興味を示し各大臣、貴族、将軍、軍隊まで、動き出す事になる。

コウヤは、この状況をセルシウスから耳に挟み知ってはいたが、作業が忙しく表には出られないまま篭りぱなっしで、電球を製作する。なにせ、街全体で作業で加わる事になるのだ。土木の工程も猛スピードで進み

電球の制作が追い付かない……

 コウヤは、セルシウスとエリンにも電球制作を手伝ってもらう事になり、3人でとにかく電球の生産を急いだ。

 そして……1か月が過ぎ、電線の張りの確認、電球のソケットの装着、ブロックごとにブレーカーの設置による電流の短絡、地絡による全ての停電を阻止する器具付け、一定の間隔で、電柱に変圧器を設け、モンスターによる電源を電球用の電圧に落とす事による電球の発火を阻止する工程等、多大な時間を要する事になった。なにせ安全面を徹底する事になれば、あれもこれもと安全策を講じるのが、電気事業である。電源から電球を照らすだけで、一体どこまで、セーフティ設備を設けるのが、課題であり悩み所ではあるが、できるだけこの街の技術者だけでメンテナンスが出来る様にコウヤは、マニュアル作成等、電気技術の簡単な講習会まで開き住民達が電気で、事故を起こさない様、なるべくもてる知恵を振り絞り徹底したかった。

そして……ついに電灯がこの街の闇に光を照らす時がきた……電球制作から、ほぼ3か月かかることになり、元の世界のクリスマスの5日前の事である。

この、異世界でも⒓月は、お祝い事の行事があるようで、大精霊の祝福による、雪のマークが街の至る所にはためいて、街頭の点灯式もこの日に行われる事になった。

 コウヤは、1本の街の大きな木に電線と小さな電球を括り付け、クリスマスツリーを作っている。

エリンは、梯子で作業しているコウヤの梯子を押さえながら言う。

「ねぇコウヤ?一体何をする気なの?こんな気に電線巻きつけて星のマークの飾り付けまで……」

「あぁお前らきっと驚くぞ!これが俺の世界での祝い事の飾り付けなのさ」

コウヤは、元の世界では、ほとんどクリスマスを祝った事が無かった。何せ、共に祝う家族も友人も遠く離れた地方へいる為、仕事に忙しいコウヤにとってクリスマスとは、ほとんど意味のない行事に過ぎなかった。

しかし、この異世界で他人の為に技術を絞ったコウヤにとって初めてクリスマスを祝いたくなったのだ。

「コウヤ!余所見してたら危ないですよ!電球の点灯式もすぐなのに、クリスマスツリーを作りたいとか、全くもう……」

 セルシウスは、長い梯子の上にいるコウヤの危ない行動にハラハラしている。

「そろそろ王様から式典の開催を始める演説か始まるんですよ!コウヤもこの事業の総責任者みたいなものですから、コウヤもスピーチしないといけないのに!」

式典開催まで、あと1時間を切った所で、コウヤの作業が終わり急ぎ城の向かったが、住民達のバリケードに阻まれ結局、城に到着したのが、式典5分前だった。

 「これより!氷の大精霊!祝福祭を開始したいと思います!まずは、我が城塞都市ヘルズの王!テセルブゼ王によるお言葉を頂きたいと存じます!」

 司会による行進により、王が城の3階から、民達を見下ろす形で、娘のセルシア姫と共に民達に言葉を告げる。

「我が愛する民達よ!今年も大精霊の祝福を祝うこの日を皆で、祝う事をワシは、喜びたいと思う……

この、城塞都市ヘルズも、初代王のテセルブゼ1世による建国で、極寒のこの地に皆が安心して暮らせる街を作る事都市を作り、他国の侵略も幾度となくはねのけてきた……しかし残念ながら未だ他国の侵略が続き帝国が我が国を脅かす日もそう遠くはなかろうと思うが、今日この日は、その事を忘れ!皆で祝おうではないか!」

 王の演説により民の熱烈な歓声がヘルズに轟く……王は、言葉を続ける。

「さらに祝い事が1つ増え皆に知らせる必要がある。今日この日で、夜のこの城塞都市を照らす光が付く照らすと言うのだ!なんと喜ばしい事か!これで、民達の暮らしもより一層、豊かになる事であろう……この偉大な功績を残した3人を紹介しようと思う……コウヤ、セルル、エリン!ワシの前へ……」

王に誘導され、コウヤ達は、民達を見下ろす形でスピーチを言う。

「皆さん……自分は、コウヤといいます、そして、この2人は、セルルとエリンです。今回のこの電灯の事業で皆さんには、本当に感謝しています。今は、代表として自分がこの場で立っていますが、自分だけではこの事業は決して成功しなかったでしょう。この場にいる、セルルとエリンはもちろん、ヨークさん、トーマスさん、兵士さん、そして興味を沸いて手伝って下さった皆さんのおかげで、今日という日を祝う事をとても嬉しく感激しています。皆さん本当にありがとうございました!今日この日をもって、この城塞都市ヘルズは、眠らない都市へと変貌するでしょう!皆さん準備はいいですか‼」

 コウヤの演説により民達は、両手を上げ喜び、司会がカウントダウンを開始する。

「さぁ!待ちにまった時がやってきました!いいですか?10秒数えますよ。10……9……8」

司会のカウントダウン開始により民も一斉にカウントを叫ぶ。コウヤは、手元にあるスイッチをONにすれば、すべての電球が点灯する仕組みだ。

「「4……3……2……1……0」」!!

 コウヤをスイッチを押し今まで、火による明かりが、電気の明かりに押され、赤い光から、黄色い光へと街全体を包み込む様に照らす。ついにコウヤ達による、街の電灯が完成しこの街に光をもたらしたのだ。


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