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氷撃の派遣剣士  作者: 翼太郎
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鍛冶屋の娘


『いいから働きなさい話はそれからです!』

セルシウスの言葉が脳裏に響く……


何故異世界まで来て働ないといけないのだ……

コウヤは納得できなかった。

電気技術者の派遣社員として7年勤め上げた会社を異世界に行く事によって退社することなった。

たしかに自分が死ぬ寸前の所で助けてくれたセルシウスには感謝はしている。

しかし異世界の世界に来て親でもないのに働けと命令するセルシウスに少し怒りを覚えるコウヤ。

(理不尽すぎるだろうちくしょうが……)

社会人になって理不尽な事を経験してきたコウヤにとって異世界でも理不尽な扱いを受ける事に

ふつふつと込みあがってくる感情。


しかしこの異世界の世界でも労働者はいるのだ。

無料タダで食料や住む家が手に入る訳がない。

建築、店、農業、運搬、他国から防衛……

服や武器にだって職人が制作し商人が売るから金の価値に意味はあるのだ。

全て金がかかる。

魔法に頼り魔法のおかげで豊かな暮らしも得るのもそれはそれでいいのだろう。

しかし1000年前の大戦によって精霊達はそんな暮らしを許さなかった。

精霊達が始めた精霊大戦に人間が巻き込まれたと嘆く人もいるが大きな間違いだ。

自分たちに力をくれと懇願したのは、人間だからだ。

人間の選択によって自ら滅びの道を進んだ1000年前の人間。

精霊たちは嘆き悲しみ人間に失望した。

魔法の力を人間に与えるの辞め世界を豊かにした魔法は消えつつある。

人間に罰を与えたのもあるだろうが、魔法の危険性を再認識した結果でもあった。

精霊たちは人間を信じ魔法の力を与えた。

しかし人間達は。魔法によって豊かな暮らしと他人を攻撃できる手段にもする。

精霊の暴走と人間の暴走によって生まれたのが精霊大戦である。

精霊王は人間の欲望を測り間違えた……

自分が思いつきで始めたゲームに後悔したのだろう……

しかし精霊王に聞く事は出来ない……


コウヤは、とぼとぼとヘルズの鍛冶屋へ続く道へと進む……

俺は、少し不安であったセルシウスは、刀は『この世界に存在しない』と言っていた事が……

普通の基本系の剣と違う、打ち方と材料が違うのだ。

断わられたら非常に困る。他の剣を代用して使う事は俺は嫌だった。

魔法だけで戦うのも気が引けていたそもそも魔法の知識など無いに等しい。

RPGのゲームくらいの知識しか無い。

ガラスごしに剣と鎧が並んでる店にコウヤが前に立った時に——— 

「———行ってくるねーお父さん」

ポニーテールの金髪の少女がコウヤの横を通り過ぎる。

「ごめんなさいお客さんちょっと横を失礼しますね」

俺はうんと軽くうなづき店へ入る。

2階建ての鍛冶屋なのか1階は鍛冶場、2階は住居といった所か……

炭が焦げた匂いと元の世界の鍛冶屋とは違う古臭い匂いがする。

主人と弟子がちょうど剣を打ち終えた場に店にはいったのかすぐこちらに気づいて汗をタオルで拭きながら近づく。


「いらっしゃい何がご所望かな?武器かい?防具かい?」

鍛冶屋の職人なのか頭にはタオルを巻いた金髪の主人がコウヤに尋ねる。

「この武器を作ってもらえないか?」

俺は、はレプリカの菊一文字を主人に見せた。

「見たことない武器だね・・・剣に見えるけどなんだいこの武器は?他の大陸の珍しい武器なのかな?」

主人は鞘から抜いた刀を見て入念に見る。鋭い片刃の剣、見た事ない美しい焼き入れがあるこの剣は、理に叶なってるのかわからなかった……

「こんな細い剣じゃすぐ折れちゃうんじゃないかい?両刃じゃないのも珍しいね。包丁を鋭く大きくした様な感じに僕は見えるしこの氷の大陸の基本系の剣の方が戦う道具としてはいい様に僕は、思うけどこの形には理由があるのかい?」


主人の言うとおり叩き切るといったらロングソードかブロードソードが一般的だろうが

刀には刀の利点がある小回りと切れ味である。

折れずに曲がらないよく切れる。この条件をクリアして刀なのだ。

そもそも刀は飾りの意味合いが多く槍と弓のリーチが長く安全だ。

刀は最後に首を斬るのに使うか武器の替えが無く刀しかない時に使う最後の予備武器である説が有力である。

しかしコウヤはそんな事は気にしない刀の持つ美しさに惹かれコレクターになったのだから……

俺は、主人に刀がこの形である理由を知ってるかぎり説明する。

人を斬るのには叩き切るのに必要な丈夫さもわかるが、刀は横に切るのではない突きによる鎧の隙間を狙う武器でもある。ただしこれは戦国時代の話でありモンスターと戦うならばこちらの剣の硬さが上回ってる限り刃を横で斬っても問題ないだろう。

そして刀は先ほど話した通りに『予備の武器』であり、鎧の隙間を狙う武器ならば槍でいいだろうという結論になる。だが刀は武士としての誇りである歴史を混ぜて日本人の心の写し鏡としての刀の魅力を説明する。


「なるほど面白い理由の武器なんだねカタナって名前の武器なんだね……

普通の武器と作り方は同じなのかい?」

主人はコウヤに製作法を聞く。

コウヤは元の世界の刀ショップの主人の刀の打つ姿を何度か見せてもらっている。

コレクターであるが上に制作した事はないが、制作方法くらいは知っていた。

しかしあくまでレプリカの製造法であり、名刀を作るとなると不可能に近い

すでに失われた技術に近くどうしてあそこまでの名刀が出来たのかいまだ不明な点は

多いのが名刀といわれる由縁である。


「あー知っているが、普通の剣と制作法が違うだろうしたぶんいろいろ準備がいると思う。

鋼ってあるかい?鉄では出来てないんだ

砂鉄も使うし、刀身だけ出来てもダメなんだ……。

刀身の研ぎも必要だし鞘の作る職人も必要で、はばきや鍔の職人もいる

柄に紐も巻かなきゃダメだし塗りも必要だ。」

主人は驚いてコウヤに言う。

「そ、そんなに準備がいるのかい?!他の仕事もあるし急にはさすがに無理だねぇ」

刀は、刀身だけ打てても意味はないのだ。鞘の部分や装飾部分、各パーツは全て別の職人が独自の技術で結集した武器なのだ。1人で出来る武器なんて何処をどう探しても無い『魔法』があれば別だが……

主人は困った顔をしていた時である。

「私にやらせてよ!」

扉が勢いよく開きさきほどすれ違った少女が主人とコウヤに近づいて言う。

「エリンお帰り早かったね君がこのお客さんの武器を作るのかい?」

エリンは主人の手をぎゅっと握り頼み込む

「面白そうな武器じゃない!やってみたいわ!お父さんは他の仕事で忙しいし!むさっくるしい武器ばっかりで飽き飽きしてた所なのよ!カタナって武器とっても綺麗じゃない!」

コウヤのレプリカの菊一文字を見てうっとりするエリンであるが

「お前が作るのか?そんなに甘くないぞ刀って武器はだな」

コウヤが刀のうんちくをたれる。

「女だからってバカにしないでよね!これでもお父さんから鍛冶師としてはまぁまぁな腕だなって褒められるんだから!」

(まぁまぁで褒められた気でなるなよな……)

コウヤは頭の中でツッコミを入れるが余計な事は言わない方が身のためと黙る。

「まあ……作ってくれるならありがたいな必要な道具はこれとこれと・・・」

コウヤは鍛冶場から必要な道具を揃え、材料の確認をした——— 

「あとはとりあえず俺の言ったとおりに刀を打ってくれしょっぱなから出来るとは思えないから練習のつもりでやろう。」

「私に作れない武器はないわ!まかせなさい!」

鍛冶屋の主人は、2人が武器の制作する姿を笑いながら見ている。

エリンは、菊一文字の刃の部分に注目するがレプリカであり本物の刀ですらない武器を不思議に感じる。

「何この剣?切れないじゃない変な剣ね……」

机の上に転がっていた木材で試し切りをしたエリンが顔をしかめながら言う。

「この刀は飾って見るだけの剣なんだよ……俺の国では切れる剣を持つと犯罪なんだ。」

エリンは目を丸く開いて驚いている。

「剣を持つと犯罪?!どうやって身を守るの?モンスターとはどうやって戦うのよ!」

コウヤは、軽く自分がこの世界の人間じゃない事実と日本の歴史を説明すると意外と簡単に信じてくれた。

エリンはこの世界の事じゃないコウヤの地球の日本の歴史を聞いて納得する。

「なるほどねえったしかにそんな国だったら武器はいらないわねモンスターも戦争も無い国だなんて信じられないけど信じてあげるわ」

(どっちなんだよ!)

コウヤは、頷くと「まあ信じてくれるなんて思ってなかったしとりあえずありがとうよ!」

「さてそろそろ打つわよ!見てなさい!コウヤは間違ってるなら言ってよね手順がわからないと話にならないわ」

コウヤは「ああわかった」と返事をし真剣な顔になるエリンを見つめる。

鋼を打つ金槌の音が響く「玉鋼をいきなり金槌で打つな!そんな高温じゃだめだ!もっと低温でなじませるんだ!違う!そんなに強く打つとバラバラになるだろ!」

コウヤの刀の講習会が始まった。

「打つ位置が違う!もっと下だ!」

「今だ!水に入れてくれここで脆い部分が剥がれ落ちるんだ」

エリンは「くっ」っと口惜しさをにじませながらコウヤの話を真摯に受け止め刀を打つ。

ただ溶けた鉄を型に流しそれを剣の形にしていく製法とはまるで違う……

コウヤの刀の講習会は、夜まで続き打った刀を一日寝かす為今日の作業は終了した。

「刀ってすごいわね普通の武器の鍛え方と全然違うわ……」

エリンは額の汗をぬぐいながら一気に水を飲む——— 

「お疲れさんエリン刀は一日寝かさないとダメだから今日は終わりだが、明日はどうする?寝かせたらすぐ打たないとダメだが練習刀だし、何時いつでもいいけど次の工程からは相方がいるし俺も手伝うぞ。」

「———あ、相方ぁ?!」エリンは口にふくんでいる水を吐き出し驚く。

刀は1人では基本完成しない。できない事はないだろうがコウヤは1人で打つ刀のやりかたを知らないのだ。

元の世界の刀ショップの主人も弟子と2人で刀を打っていた。

「お父さん忙しいから無理だろうし……コウヤに手伝ってもらうしかないわねしょうがないかぁ」

エリンは、渋い顔をしながら呟やく……

「俺じゃそんなに不満かよ!」

コウヤは意義ありとエリンに言うが、彼女はそんな事は気にしない言いたい事は、きっちり言う少女である。

「不満だらけよ!私にあんだけ説教たれておいて不満がない訳ないじゃない!」

———コウヤはエリンに攻め寄られコウヤは後ずさる。

「しょうがないだろ……俺だってあんな強くは言いたくないさ気に障ったなら謝るごめん」

(とりあえず謝っておけばいいさ『顔だけ反省』していればわかるはずもないしな)

元の世界で会社という組織の中にいたコウヤは、相手を怒らせると『めんどくさい』事になるのは知っている。自分が悪くない事柄で怒られてもとりあえず謝罪すれば相手は満足するし丸く収まる……これが元の世界の『社会人』というつまらないルールだ。

素直に頭を下げたコウヤにエリンは「わかってるならいいわよ別に……」顔を赤くしながら家の階段へ登り2階に行ってしまった。

エリンの父親の鍛冶屋の主人はニコニコしながらコウヤに「気にしないでまた明日来てくださいね」

とコウヤに言い2階を指さして「私にまかせておいて今日は帰りなさい」と小声でコウヤの耳元に言い階段へ登っていった……

コウヤは言い過ぎたかなと反省し鍛冶屋を出る。

相手は自分より年下の少女……こちらの世界の大人とは違うのだ。

いくら制作の仕方を伝授すると言っても言い方があるしそれは『大人』の対応とは違う。

こちらの常識があっちの常識と同じとは限らない事をコウヤは反省する。

むしろこの世界には存在しない刀を製作してくれる事に俺は、感謝しなきゃならない。

「…………あっ冒険者ギルドに行くの忘れてた……まあこんな時間だし、しょうがないかセルシウスを宿屋でずっと待たせると悪いし今日の所は帰ろう」

コウヤは暗くなった異世界の空を見上げた……月がデカい……

地球の月とは違い大気があるような月のようだ。

「異世界か……本当にここは地球じゃないのか……」

溜息まじりに言いコウヤは宿屋へと歩を進める。

「———こんな時間になるまで何してたんですか!晩御飯用意してずっと待ってたんですよっ!ぬっ殺しますよ!」

宿屋に着いてセルシウスに怒られたのは言うまでもない。

そして日報も忘れず書いた。



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