レポート06
何かに遭遇することはなく、俺は辿り着いた。
砂岩のような崖などが見える、岩でできた町《ロックスソルド》。
「うっし、舗装された道の近くでレベル上げしてから《ソルジャー》になるか!」
「お疲れ様。それじゃあ、私はここでお別れかしらね」
「あぁ、そういえばそうだな……お疲れ様でした。ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ。ゲームでは助け合いが大事だから当たり前のことしただけよ」
「そうか、そんじゃ」
時間的に、夕飯までもう少しあるし1レベルぐらいあげられるかな。スズネに手を降ってその場を離れる。
その後は少し割愛するが、石人間と比べれば弱いと感じてしまう同レベルのモンスターをバッタバッタと倒していたら、9レベルまで上がることができた。
そして、ポーションの補充に《ロックスソルド》に戻ってきた。ここまでだいたい1時間ぐらいだ。すると、さっきの場所になんかうずくまってる褐色少女がいる。
「もぅ……またやっちゃったぁ……なんで、こう最後に私は甘いのかしら」
ブツブツ言ってるな。ネットコミュニティの取り方を学ぶためにも、声をかけることに挑戦してみよう。幸い大人数の中からひとりではなく、あそこでうずくまっている少女に話しかけるだけだしな。
「あの~、大丈夫ですか?」
「えっ、あ、いや、あの、なんでもない――あっ」
驚いたように立ち上がって距離を取られたが、至極当然だから傷つかない。ただ、少女は数少ない知った顔だった。
「あ、スズネじゃん。クエスト終わってから何かあったのか?」
「あ、いえ、そういうことはないんだけど。その……うぅ」
何故か口ごもってしまう。一体なんだっていうんだ?
――もしや、俺と同類のリアルではコミュ症タイプ?
いや、それにしては俺にはすぐ話しかけてくれたしな。違うよな。
「…………」
「…………」
岩の町をバックに褐色肌のハンマー少女の絵は、結構いいなとかどうでもいいことすら考え始める沈黙が過ぎた。
「あ、あの!」
「は、はい!!」
沈黙を破ったのは彼女だった。ていうか、俺も驚いて気をつけの姿勢をとってしまった。
「と、友達登録いいですか」
えっ、いや待って。あれほど沈黙やうずくまって深刻そうだった理由がそれなのか。いや、助け合いが大事って言ってた人が、そんなわけないよな……そんなわけないよな!?
「……ど、どうぞ?」
「じゃ、じゃあ……」
すごい、ゆっくりぎくしゃくとした動きをするスズネ。そして、通知音が聞こえてメニューを開くと《フレンド》の欄に新着アイコンがでている。
『スズネから友達申請が届いております。認証しますか?』
俺が《YES》を押すと、フレンドの中にスズネの名前が追加された。というか、初めてのフレンドだから一番上に配置された。
「あ、これって、認証すると相互で登録されるのか?」
「えっ? えっ!? ま、まって、確認するわ」
すごいあたふたしている。もしかして、さっきの予想マジであたってる?
「と、登録されてるわ!!」
すごい笑顔になった。
「じゃ、今日は夕飯だから一旦落ちるわ。またな」
「う、うん。またね、ヒカク!!」
そのままの満面の笑みで手を振られて、俺はメニューから《ログアウト》を押してゲームを終了する。
そしてゲーム機を外して、自室のベッドに座り意識を落ち着かせる。
――めちゃくちゃかわいかった。