レポート05
ざっざと歩きながら、敵はスズネが倒していくうちに西門には簡単にたどり着いた。
「よし、ショートカットで行くわよ!!」
「えっ、でも舗装されてる道以外は敵のレベル上がるんじゃ」
「北方面はそこまでだし、レベルがやばくなるのは首都から離れればどこも同じよ! まあ8レベルってところだから、あなたでもいけるんじゃないかしら」
「耐久戦に持ち込めばな!」
「善は急げよ!」
「急がばまわれっていうことわざを知らないのかよ」
そんな言葉を聞く耳など持たずに、さらには俺の手を掴んで引っ張られてしまう。現実でいう筋力にあたるステータスの差もあるせいで、抵抗は全くできずに連れて行かれてしまうわけだ。
少しして、手を離されて降ろされる。
「さすがにこれは突破できないから、倒すわよ」
「おう」
降ろされるというよりは落とされた感じで、立ち上がって武器を構えて敵を確認してみる。
《石人間》というエネミーか。レベルは8レベルってことは、今の俺よりも2レベル高いんだな。
名前の通り石ころがいくつもつながって人型になってる。身長的には同じくらいだけど。
ここに来るまでに、一緒にいたせいか経験値が俺にも入っていて2レベル上がったのだ。
ただまあ――10体もいるわけだが。
「さすがにきついと思うんだが」
「大丈夫よ。任せなさい……7と3ね!」
「ちょっと、待ってくれ。レベル差あるのに3!?」
「頑張って! いくわよおお!!」
「おいぃ……」
実際、スズネは7匹に打撃入れてヘイトをためて連れて行った。そして結果的に残り3匹のヘイトがこちらにきた。
「仕方ねえ……やるしかないか」
俺は決死の覚悟を決めて――その場にとどまる。
いや、盾持ってるから、あっちからきてくれたほうがありがたいんだよな。
『ゴゴゴゴッ!!』
そんな声なのか音なのかわからないものをだしながら1匹、都合よく飛び込んできてくれた。
そして俺はあることに気づいて、始まりの町の青年に感謝を告げようと思う。
「切断系だと弾かれそうだけど、打撃武器だから戦いやすい!!」
飛び込んできた石人間の横っ腹にメイスを叩き込んだ。どうやらノックバック効果があるようで、横によろける石人間。
するともう1匹飛び込んでこようと、足を踏み出したのが俺の視界に入る。
「もう少しおとなしくしてろ!!」
テンションがハイになっていた俺は何故か、盾を投げつけた。見事に命中して、1匹その場にとどまるが、もう1匹はなおも近づいてくる。
「……ゲームの鉄則。ゴリ押しでも個別撃破!!」
俺はそいつは無視して、目の前で怯ませた奴に追撃を加える。
HPバーは少しずつ減っていく。少なくともオーガよりはダメージは通っている。
「あと2発!!」
右から一撃!
そして左から一撃――入れた瞬間に、俺に対しても右から一撃!
「痛くないけど、痛い!!」
痛覚はないが、HPがわかりやすく減った。この調子だと、今のレベルじゃ3発で俺沈むな。
「だが、ポーション!!」
ショートカットに登録というなの、ベルトに装着していたポーションをひとつ使用して全回復。
「よっしゃあ!! って、さすがにそうだよな」
盾で踏みとどまってた1匹がくる。だが、1匹はさっき倒した。
「やってやるぁぁあ!!」
「あぶねぇ……あぶねぇ……」
残った自分の赤色になったHPを見てそう呟かざるにはいられない。
「おつかれさま……ってギリギリね」
「レベルはおかげさまで上がったけどな」
《メイン職業》まであと3レベルだ。
戻ってきたスズネさんはピンピンしてる。まあそりゃそうだよな、初対面の時に見たけど24レベルだったし。
「大丈夫? 少し休む?」
「町が近いならそっち行く」
「何とも遭遇しなければ5分ってところね」
「よし、じゃあ行く」
残り少ないがポーションでHPを回復させてから俺は立ち上がる。
「あと、ほら」
「うん? おっとと、忘れかけてたわ」
「そんな使い方初めて見たわよ」
「映画で見たのの見様見真似だけど、できたから使ってる」
盾を投げ渡されて、少しお手玉しながらキャッチする。そして左手に装備し直す。
「それじゃあ、行くわよ」
「了解なんだが」
「だから、何なのよその口調……」