レポート49
順調に進んでいく時間の中、昼が過ぎて音原さんの出番が近づいてくる。
付き添って、とりあえず教室まで戻ると、何やら舞台裏という名の隣の教室のほうがバタバタとしていた。
音原さんは中にはいって、委員長へと事態を聞きに行く。俺も近くにいた北谷を捕まえた。
「何があったんだ?」
「王子が部活の出し物の方で怪我したそうだ。幸い、大事には至らなかったようだが劇は難しい……まあ、それだけで済めばよかったのだが」
「主役がいなくなる以上のことがあるのか」
「体育館ステージのほうのタイムスケジュールのほうも何かしらのトラブルが合ったそうでな。演劇部の連中がブッキングだ……その上で、あいつらはそっちにいってしまった」
「一概に攻め切れないが……たしかにやばいな」
劇の練習をしていたりしたのは最低限の人数とは言わないが、余裕があるわけではない。調理と配膳にそれなりの人数はさくようだし、準備班から代役がでるしかないわけだ。
「で、どうするんだ。ここからの公演は」
「演劇部が担当していた部分の担当は、設営班担当からやってくれると名乗りでてくれてどうにかなりそうだ……台詞も少ないしな」
「それはつまり主役がいない状態じゃないのか」
「その通りだ……そして、もともと劇の役者として練習してた連中だと衣装のサイズが合うやつがいない」
そうか、衣装の問題もあるのか。
「最悪、カンペを出すから台詞はどうにかするとして、台本を把握していて衣装が合う人間を探さなければいけない……後30分以内にな!」
「そうか……まあ、俺じゃ力になれなさそうだ。受付ぐらいならまた手伝うよ」
「すまん。助かる……」
俺はそういって、外の列近くに設置されてる受付用の机に行こうと廊下に出る扉に手をかけた――しかし、その手を誰かに掴まれた。
「えっ!?」
「ちょっと、動かないでくださいね! へい、採寸!」
「ヒッキーちょっと、おとなしくしててね」
文丸さんと、確かこの人は名前忘れたけど衣装・美術担当のリーダーの女子。おとなしくしてると、メジャーでいろいろと測られる。
「いけます?」「いける、衣装のほうが大きいけど、誤差程度」
終わったらなんか、話し始めてしまった。嫌な予感しかしない会話なんだけど。
「というわけで、日角さん!」
「ヒッキー!」
「じゃ、俺は受付やるんで」
しらばっくれて再び扉に手を装備しようとしたが、失敗した。
「逃しませんよ~。クラスのためですから」
「そうだよ。暗い印象も払拭できるチャンスだって」
「いやだー!!」
俺は表舞台に立ちたくないというか、ヒッキーの名の通り引きこもりなのは否定出来ない程度の人間なんだよ!
王子様になるのは、ゲームの中だけで十分だ。
そんな願いむなしく、俺は舞台裏の奥へと引きずり込まれていった。




