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お嬢さまと執事と…

お嬢さまと執事とお仕事

最近(さいきん)最近(さいきん)、あるところにお(じょう)さまと執事(しつじ)が大きなお屋敷(やしき)の中に住んでいました。

お嬢さまは、ご本を読むのが趣味(しゅみ)のちょっぴり大人なかわいい女の子。

執事は、いつもお嬢さまのためにせっせとお掃除(そうじ)、お洗濯(せんたく)、お料理(りょうり)にお裁縫(さいほう)などしているマジメで(かお)の整った青年です。


そんな二人がいつものように過ごしていたある日、お嬢さまはいつものようにご本を読んでおりました。

でも今日のご本は一味ちがうのです。

それは、と〜ってもこわいおかあさんと、と〜ってもこわいおねえさんたちが、ある少女にお掃除、お洗濯、お料理にお裁縫を一人でやらせて少女が行きたかったお(しろ)舞踏会(ぶとうかい)がある日には一人で留守番をさせて自分たちだけ舞踏会に行ってしまうお話でした。このご本にはまだ続きがあるのですが、お嬢さまは、それを読んでいても立ってもいられずに執事のところへ飛んでいきました。



そのころ執事は、鼻歌を歌いながらお昼ご飯に使ったお皿をあらっていました。するとキッチン部屋(べや)のドアがとつぜん開いて


「執事さん!執事さん!」


お嬢さまが息を切らしながら(あらわ)れました。執事はキョトンとした顔をしてから


「どうなされましたか?お嬢さま。そんなに息を切らして。」


ゆっくりとした口調で、お嬢さまにたずねました。たずねられたお嬢さまはあわてたようすでこたえました。


「どうしたもこうしたもありません!執事さんはそこで休んでいてください!今日から私が執事さんのやっていたことをやるのです!」


それを聞くと執事は、のこり1まいのお皿をあらい終わってからお嬢さまに言いました。


「お嬢さま。落ち着いてください。今、紅茶(こうちゃ)をおいれします。少々席にすわっておまちください。」


お嬢さまは言われるがままに席にすわりいれられた紅茶をのみました。そしてお嬢さまはホッとしてから、もうしわけなさそうにお嬢さまは言いました。


「すみません。執事さん。わたしは少しあわてていました。」


それを聞いた執事は、にっこりと笑ってやさしく言いました。


「いいのですよ。お嬢さま。だれであっても大変な事があったらあわててしまうものです。そのときに落ち着けるかどうかが、とっても大切なのですよ。」


「わかりました!」


お嬢さまは元気な声でこたえました。


「元気で何よりです。それでさきほどお嬢さまのお言葉ですが、どうしてあのようなことをおっしゃったのですか?」


執事は笑顔でうなずいてからたずねました。


「それは…執事さん。執事さんは、いつもお掃除とかお洗濯とかお料理とかお裁縫とかしてくれるています。」


お嬢さまはこたえ始めました。


「はい。そうですね。」


執事はうなずきました。


「でも本当は執事さん。本当はお洗濯とかじゃなくて、舞踏会とかお散歩とか楽しいことをしたいんじゃないかなと思ったのです。だから今日から私が執事さんの代わりをして執事さんには楽しいことをしてほしいのです!」


執事は、目をぱちぱちしながら聞いていました。


「執事さん?どうしましたか?」


お嬢さまは心配して執事に聞きました。


「いえ。なんでもありませんよ。ご心配なさらずに。」


執事は目を少し赤くしながら答えました。それでもお嬢さまは心配だったのでポッケに入っていたハンカチを執事に渡しました。


「どうぞ。執事さん。」


「申し訳ありません。ありがとうございます。」


執事はそう言いながらハンカチをうけとると自分の目をぬぐいました。


「お嬢さまはおやさしい方ですね。」


執事はにっこりわらいながら言いました。


「 そうですか?」


お嬢さまは首をかしげます。


「えぇ。そうですとも。」


「ふふ。ほめても何もでませんわよ。」


今度はお嬢さまが顔を赤くしてこたえました。


「おや?お母さまのお真似ですか?」


ちょっとへんにわらってたずねました。


「とっとにかく、今日から執事さんはしばらくお休みです。舞踏会にでも行ってきてください。」


「お嬢さま。お休みのお話ですが、やはりおことわりさせていただきます。」


「え?なんでですか?」


お嬢さまは、おどろいてキョトンとした顔をしました。だって執事さんはよろこんでお休みをもらってくれるだろうと思ったからです。


「私はお掃除、お洗濯、お料理にお裁縫だって楽しくやっているのですよ。何よりお嬢さまのためですから。」


「そうだったのですか。執事さんを心配してそんしたかもしれません。」


お嬢さまは少し残念そうに言いました。


「そんなことはありませんよ。お気持ち、とってもうれしく思います。」


執事は、えがおでこたえました。


「なら、これだけ言わせてくださいね。」


「なんでしょう?」


「執事さん。いつもありがとうございます。」


お嬢さまは執事にぺこりとおじぎをしました。


「どういたしまして。お嬢さま。」


そしてまた執事もお嬢さまにおじぎをしました。


「でもお皿ふくのてつだいます。」


「ありがとうございます。では、そちらのティーカップをふいてくださいませ。」


そうして今日もお嬢さまと執事は仲良く一日を過ごしましたとさ。



シリーズ化しておりますので、良かったら他の作品も読んでいただけると幸いです。


誤字脱字を見つけましたら気が向き次第、ご連絡をお願いします。


それでは、良い一日を。

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