表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異説・桜前線此処にあり  作者: 祀木楓
第15章 壬生浪士組で過ごす数日
91/131

芹沢一派

 

 

 色々と考えたものの、結局のところ答えが出る事はなかった。


 総司がこの部屋に来る事もなく、時間だけがただただ過ぎて行く。


 どうして総司は私をここに連れてきたのだろうか?


 そんな疑問が頭をよぎる。








「邪魔するぞ!」



 朗らかな声と共に現れたのは、芹沢さんと見知らぬ男達だった。


 芹沢さん達は、私の横に並んで座る。



「お前さん……もう戻って来ちまったのか。聞くところによると、沖田君が連れてきたようだが?」


「そうみたい……ね。私もが何だか……気付けば此処に居たんだもの」


「そりゃあ、災難だったな。あぁ、そうだ……コイツは新見。新見錦と言って、ここの局長だ」


「局長? 局長は近藤さんじゃないの? 筆頭局長が芹沢さんで、近藤さんが局長だった気がするんだけど……」


「近藤君も局長だが、この新見も同じ局長なのだよ。お前さんは数日滞在するらしいな。顔を会わせておこうと思って、連れてきたんだ」


「……そう」


「それから、新見の隣が平山五郎。その隣が平間重助で、最後が野口健司だ。皆、気の良い奴ばかりだからな。見知っておいてくれ」



 芹沢さんからの紹介が終わると、私と新見さん達は互いに会釈した。



「それより……長州のモンには、お前さんが怪我をした事になっているらしいな。見たところ……元気そうだが、こりゃあ一体どういう事だ?」


「ご覧の通り、私は元気よ。怪我なんて何処もないわ。そうね……きっと、体裁なんじゃない?」


「体裁?」



 芹沢さんは、意味が分からないといった表情を浮かべている。



「総司が私を連れてきたもんだから、その理由を後から取って付けたのよ。土方さんが言ってたもの。そんな事が知れたら、此処は潰されちゃう……って」


「そりゃあそうだ。天下の長州様だもんな。昨日、今日できたような小さな組とは、訳が違う。流石は策士の土方君だな」


「笑い事じゃないわよ。こっちは、屋敷に帰れなくて困ってるのよ?」



 笑いながら言う芹沢さんの姿に、私は頬を膨らませる。


 何のために連れてこられたかも分からず、総司が私の元を訪れる事もない。


 屋敷にも帰れずで、私からしたらいい迷惑だ。



「悪ぃ、悪ぃ。それにしても、気の強ぇ面白い女だな。まぁ、そうだったな……お前さんにとっちゃあ、災難なんだもんな。そうだ……お前さんは、俺が言った事を覚えているか?」


「言った……事?」



 芹沢さんが私に言った事……一体、何の話だろうか?


 私は首をかしげる。



「何だ、忘れちまったのか? お前さんの力量を見たいと言った話だ。どうだ、思い出したか?」


「あぁ、その話ね! 今思い出した。力量って言われても……私は、そんなに出来る訳じゃないけど……それでも良いの?」


「勿論だ。お前さんとて、こんな所に居ても暇だろう? ちっとばかし、この新見の相手をしてやってくれ」



 芹沢さんの何気ない一言に、私は慌てふためく。


 いくら何でも……切紙の私が、局長の新見さんと渡り合える筈がない。



「む……無理だよ! 局長相手じゃ、一瞬で負けるもの!」


「それでも良いさ。新見とてお前さんを相手に、本気でやろうなんざ思わねぇよ。俺はお前さんの太刀筋が見たいだけだからな」


「で……でも……」



 そうは言っても、無理なものは無理だ。


 断ろうと、私は口を開く。



「芹沢さん……あのね」


「そんな面ぁしてねぇで、さっさと行くぞ!」


「えっ!? ちょ……ちょっと! 待ってよ!」



 私の訴えが芹沢さんに届く事は無く、私は引っ張られるようにして立ち上がらせられる。


 芹沢さんは私が立ち上がったのを見ると、生むも言わさず、私をそのまま引き摺るようにして部屋の外へと連れて行った。



 何て強引な……



 私の表情とは裏腹に、芹沢さんは嬉々とした表情を浮かべていた。

 

 

 

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ