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異説・桜前線此処にあり  作者: 祀木楓
第16章 長州へ発つ
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民間療法の行末

まだ生きている人を埋めるなんて何事かとも思ったけど、解毒ができない今はそんな迷信めいた行為にすがるより他はない。


それで生き抜いた人も居たからこうして伝承されているわけだし……


埋めることで体力の消耗を防いで腹式呼吸の手助けになるのかもしれない。


そんな一縷の望みに賭けて実行に移した。





その後は交代で様子を見続け……やがて長い夜が終わりを告げた。





「呼吸が……安定している?」




苦しそうな表情から穏やかな表情に戻っている彼の様子を見て、私は心がざわめき立つのを感じた。



もう無理だと思った彼は見事に生き延びたのだ。



それは民間療法が功を奏したのか、はたまた彼の生命力が強かったのか……真相は分からない。




でも



この夜、私たちは最悪な毒素に打ち勝ったことは確かだ。




数日間様子を見たのち、彼は笑顔で去っていった。

郁太郎に散々叱られたので、二度と河豚を口にしようとは思わないはずだ。



「もうこんなふうにドキドキするのは御免だな」



去り行く彼を眺めながらポツリと呟く。



「お前も拾い食いなぞするなよ」



そんな郁太郎の言葉に



「拾い食いなんてしないわよ! そこまで意地汚くないもん!」



私は頬を膨らませた。



「お腹が空いたら言うんだぞ。拾い食いで腹を壊されたら困るからな」



義助もクスクスと笑う。



「もう!」



更にむくれる私を見て、2人は声を出して笑う。



「よくやったな」



そう言って頭を撫でる2人。

子供扱いされているようでなんとも癪に障るが、穏やかなこの瞬間は嫌いじゃない。

そんなふうにも感じてしまうのどかな昼下がりだった。




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