プロローグ
《『桜前線此処にあり』もよろしくお願い致します》
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新入生の入学式から二週間後。
最上級生となった私たちは、既に病院実習に追われる日々を過ごしていた。
この時期の私たちは、毎日朝から夕方まで一日を通して病棟で実習を行い、翌日には大量の記録物を提出しなければならない。
かといって、年明けには国家試験を控えているのでその対策勉強も怠れない。
実習後は、友達と遅くまでレポート作成や勉強会をする。
そんな過酷な毎日もだいぶ板についてきた。
「はぁ、今日も遅くなっちゃったなぁ……」
この道一帯に並ぶ桜の木を不意に見上げた。
ライトアップされた桜の花々は見事で、今が一番の見頃のように思えた。
私が毎日持ち帰る複数の鞄の中には教科書やら実習道具やら様々な物が詰め込まれており、これがもうとにかく重い。
肩に掛かる重力に負けじと自宅へと歩みを進めるのであった。
しばらく桜並木を歩いていると、何処からか生暖かい春の風がビューっと一吹きした。
突風に絡めとられるかのように舞い上がる桜の花びら。
その様はライトアップの効果と相まって何とも幻想的だ。
「あっ!」
歩きながら上を見上げていた私は、何かに躓いた拍子に手にしていたレポートを手放してしまった。
それを掴もうと、咄嗟に手を伸ばす。
「えっ? う……嘘っ!!」
ひらひらと舞いあがる大切な数枚のレポートは指先にかすりもせず、あろうことか高さ2~3メートルはあろう河川敷から私は足を踏み外してしまった。
肩に下がっていた鞄などたくさんの荷物を胸に必死に抱え込み目蓋を固く閉じると、訪れるであろう強い衝撃に備え私は覚悟を決めた。