理不尽な世界で
朝の光で目が痛い。
馴染みのある部屋、自分の家の布団に横たわっていたようだ。
さっきまで夢を見ていたかのように身体の感覚がじわじわ、と滲んできた。
起きてすぐにパッとスマホを見た。
「20××/03/05 」と書いてあった
スマホのカメラアプリを開いて内カメにして自分の顔を見てみた。
「あぁ、大人に戻ってる。」
傷跡も無い、多分今まで見た凛も 押されて轢かれたあのホームでの出来事も夢だったんだろう。
そう思いながら、ゆっくりと布団から足を出す。
「痛!!」
足で何かを踏みつけた痛みで目をはっきりと覚ました
「…スーパーボールかよ。」
そう言いながら落ちてたスーパボールをポイッと捨てた。
足の痛みに我慢しながら仕事の準備をしながら外へと出かける。
いつもの通り道をいつものように歩いて仕事へと向かう。
「痛い。やめて!」
と路地裏の方から声が聞こえる。
(あぁ、カツアゲが行われてるんだな。可哀想に)
僕はそう思いながら、こんな理不尽な世界ではしょうがない事だと自分に言い聞かせてカツアゲ現場を横目にスルーをしようとした。
「『理不尽な世界を変えたい!』」
夢で語った自分の叫び声が頭に響いた。
その時もう身体は路地裏に駆けつけるように動いていた。
路地裏の中を見ると男性が2人がかりで女性のカバンを漁ったりしてるのが見えた。
「男性二人かがりでやることかよ。」
ついボソッと呟いてしまった。
「あぁ!?なんか文句あんのか?ガキ!」
カツアゲしてた1人が自分に向かって怒鳴りつけてきた。
「文句は無いけどさぁ、ここの現場見たら、この人はどう思う?」
呆れた顔してスマホの通話画面に『110』と打ってある画面を相手に見せつけた。
2人のカツアゲ犯はスマホの画面を見てあたふたと動揺して 僕の肩を押して路地裏から出ていった。
取り残された女性は恐怖からの安堵かその場に
ドサッと腰を抜かすように座ってしまった。
「ここら辺危ないですのでお気をつけてくださいね」
と言い、その場を去ろうとしたその時
「待って…!」
という声と共に僕の左手を女性が掴んだ。
「…あ、綾太くん。だよね?」
と震える声で僕の名前を女性は呼んだ。
バッと後ろを振り返るとそこには 確かに、成長して髪も伸びているが見覚えのある姿があった。
「神月…凛…?」
僕の声を聞くと女性はフフッと笑って
「他人行儀ですかぁ?男性の方」
と見慣れた、にやけ顔を晒す凛がそこにはいた。
「変われたかね?綾太くん」
何を言ってるのか最初はわからなかったが凛の見て思い出した。
「あぁ、夢じゃないのか。」
そう言いながら僕は凛の手を引っ張り一緒にわけもわからず笑った。
「…はぁー笑えた笑えた。」
ある程度落ち着いた時に凛はそう呟いた
こうやってゲラな所を見ると改めて凛だなと確信がもてた。
「え!?なになに!高校卒業ぶり私を見て安心したなの!あははっ!やばいお腹、お腹が痛い!!」
そう言いながらまた笑い始めた。
「これは、デジャブか。」
「ははは!やっぱ綾太くんは面白いねぇ」
「どこがだよ。」
「ほらー中学の時から変な子だったからさー」
失礼極まりない発言が過ぎる。
天然で言ってるのかそれとも馬鹿にしたくて言ってるのか、こいつの場合分からないんだよな、こいつは。
僕を見て凛は落ち着いたのかポケットから2個の飴を取り出して1つをパクっと口に入れ、
「あげるっ」
と言い飴を口に入れたまま、もう1つの飴を僕の手に置いた。
「口を開けるなよ…汚い」と呟いた。
「びほーおあらもらええんあお!ごほーびでほーが!」
(美少女から貰えてんだよ!ご褒美でしょうが!)
「口にものを入れた状態で喋らない!」
僕の聞いた凛は無言で睨めつけてきた。
あちらこちらに散らばってる荷物を整理して、
二人で路地裏を出た。
チラッと腕時計で時間を確認した
「は!?やば!!遅刻じゃん!」
時間を見て咄嗟に大きい声が出てしまった。
その姿を見て凛は笑いながら
「それは理不尽だねー」
と僕の顔を見ながらニヤニヤと言う
「あーくそ、こんなんなら、大人なんかにならずに赤子のまんまが良かったわ」
そう呟くと
「赤子、綾太っ!あははっ!!」
とまた笑い始めた。 昔からこいつのツボはどこにあるのか分からなすぎる
「あぁ、上司に怒られるよ、もういっそ僕のことをまるでお酒のツマミの中にある1つのピーナッツ…、いや違うな、道端にいるアリの集団の一匹みたいな…、」
そう独り言をブツブツと呟いてると
「あぁ!もうたとえ下手すぎ!例えるなら『 干し草の山や砂漠で針を探す』でいいでしょ!」
妙に納得する例えだった。
「なんかさー、私はカツアゲに会うし、それを助けた綾太も遅刻しちゃうし何してもさ」
「『この世は理不尽だ』ね」
2人の声がハモった。
「カーンカーンカーンカーン」
踏切の音が響き渡った
「あぁ!やばいやばい!電車くる!ほら、綾太!ほら!走るよ!」
そう言いながら凛は僕の手を引っ張って走り始めた
いい事しても報われない、たとえ何もしてなくても酷い目にあう事だってある僕はこんな世界で理不尽に生きてくしかないのか。そう思いながら 凛に続くように駅のホームへと走り出した。
僕はこんな【理不尽な世界】で理不尽で唐突に降りかかる【新たな疑問】を抱えながらも【少女の戯言】でも聞いてまた新しい【理不尽の始まり】へと立ち向かう。
ー終わりー




