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Magic shop

作者: お目覚め
掲載日:2025/12/28

私は前まで他の投稿サイトで活動をしていました。この作品はそのサイトで投稿していたシリーズもので再編成を加えて投稿しました。

仕事もプライベートも最近うまくいかない主人公「私」。そんな「私」はある夜、不思議な夢を見る。不思議な出会い、不思議な世界に戸惑いながらもだんだんと「私」はある大事なことに気が付く。

 また失敗してしまった。最近、仕事もプライベートも失敗続きの毎日だ。疲れは取れない、気だるい、体が重く感じる。密かに目指している整体師の勉強も最近は疎かだ。私は冷凍食品を買い物かごに入れ、帰路へ着いた。時刻は深夜0時を回っている。明日も早いし早く寝なきゃ。急ぐ気持ちを疲れが抑える。いつもより家が遠く感じてしまう。あぁ、どこかに私を助けてくれる妖精みたいなのがいればな。私は空想に浸りながら、自宅の電気をつける。買ってきたご飯の準備を始めた。テレビをなんとなくつけると政治に対する討論番組が放送されていた。チャンネルを回してみても面白そうな番組がやっていない。ご飯を食べ、ベッドに飛び込む。引き出しに目をやると薄暗く光っているように見えた。手元にスマホはあるよな。不思議に思いそっと引き出しを開けてみた。すると中で小人のような妖精のような不思議な奴が横になって寝ていた。全くこちらに気づく気配がない。声をかけるのを一瞬ためらったが、こんなものが家に居座られては寝るに寝れない。

「おい」

強めに放った声はその妖精を驚かせるのに十分だった。振り返った妖精の目は奇妙に光っている。数秒目が合った後にその妖精は話し始めた。

「うーん、何かお困りごとを抱えたにおいがする...どれ、話してみなさい」

その顔は自信に満ち、胸を張っていた。得体のしれないいきなり現れた未確認生物に私の悩みを話す筋合いはないし、なんでこんな自信満々なんだ。私は疲れているから早く寝たい。私は出ていけと言わんばかりのため息をついて見せた。それに呼応するかのように妖精は机の上に登ってきた。

「疲れに満ちた表情に暗い溜息。お困りごとを話せぃ」

その図々しい態度に腹が立った私は妖精をつまみ上げ、外へ放り投げようと思った。これは悪夢だ。疲れすぎて何か悪い夢でも見てるんだ。その妖精は暴れたが、体が小さいので大したことはなかった。また入ってこないようにとドアの鍵を閉め、まだ家にいないかを確認した。なんだかより疲れた気がする。私はさっさとシャワーを済ませ、ベッドに入った。明日も仕事か。私はいやに気持ちを抑えながら眠りに落ちた。

 目を覚ますと広い平原の中にいた。空にはたくさんの星がちりばめられ思わず息をのんだ。ここはどこだろう。私は家のベッドで寝ていたし、こんな所へは来れないはずだ。感覚はあるし、自由にも動ける。聞いたことがある。夢の中では時々現実かと錯覚するかのように自由な夢があると。もしかしたら私は今そのような夢を見ているのか。訳も分からず辺りを歩いてみる。きれいな水の流れている小川に、鳥たちのさえずり、そしてなんだか私の立っているこの地は少し遠くを見るだけで地平面が見える。神様からのささやかな贈り物か。仕事で疲れ切った私を癒してくれているのだ。夢の中で使える頭を使い、歩き続けた。すると小さなログハウスが見えてきた。ここはどこかを聞ける。人が住んでいるのかは定かではないがドアをノックしようとしたその時ドアにかけ看板がしてあることに気が付いた。(Magic shop)。

「まじっくしょっぷ?」

なんだか怪しい感じがしたが、ここからまた人が住んでそうな場所を探すのは大変だと思ったので構わずノックをした。中から「どうぞー」と声が聞こえ、慎重にログハウスのドアを開けてみる。カランコロンという音が室内に響き渡る。少しずつ開けたつもりが盛大に音を鳴らしてしまったことに恥ずかしさと疑問を持ちながら、室内の様子を観察してみた。天井にはどこまでも続く銀河が広がっており、おもちゃの列車が空を駆けている。壁には謎の言語で書かれたたくさんの本が並んでおり、とても整理整頓が行き届いていた。花のフローラルなにおいに誘われ、室内の奥に進んでいくと先ほどの声の主か一人のおじいさんがこちらに背を向けて本を読んでいた。

「こ、こんにちは...」

思い切って声をかけてみるとおじいさんは振り返り笑顔を返してくれた。頭と顎に白髪を蓄え、優しさがあふれ出ている印象を受けた。

「すみません、ここはどこですか?」

若干震え声で質問をしてみる。それを察したのかおじいさんは優しい声で返答してくれた。何を話しているかわからなかったが意味は理解できたと思う。混乱する頭を片隅に置きとりあえず相槌をしてみる。

「おーい!じいさん!腰を痛めたばあさんがまたやってくるぞー!」

話を聞いているといきなり店内にさっきもめていた妖精が入ってきた。だけどなぜかさっきの怒りの気持ちは消えており、すんなり話を聞こうと思った。まもなくしてそのおばあさんらしき人が店内に入ってきた。

「やあ、ーーーおばあさん、腰の調子はどうだい?」

おじいさんは私と話していたのと同じようにおばあさんと接する。

「いや、だめだね、前にあんたにもらった羽カエルの油も星木の枯草も全く効き目がない」

おばあさんは痛めた腰をさすりながら、おじいさんと話していた。

「じゃあ、今度はこれを試してみようか」

おじいさんの手には紫色で中身が見えない瓶が収まっていた。少し高いところから取っていたので取りづらそうであった。おじいさんがふたを開ける音が私のひらめきと重なった。

「あの、すみません。そのおばあさんは腰を痛めているそうですね」

このころにはもう緊張などはなくなり気楽に話せるようになっていた。私は整体師の勉強をしたことがあると二人に伝えおばあさんの腰に手を当ててみた。二人は初めて聞いたのかセイタイシという言葉を不思議がっていたが、私はすぐにおばあさんの腰痛の原因が分かった。単なる腰痛。本当に加齢によるものだろう。なぜおじいさんもおばあさんもそんな簡単なことに気が付かなかったのだろう。私は勉強した整体師の知識を集め、マッサージに取り掛かった。数分の後おばあさんの顔は腰痛で痛めた苦痛の顔から笑顔に変わっていた。おばあさんは店内をあちこち歩きまわりしきりに感謝を述べてくれた。なんだか久しぶりに感謝をもらった気がする。私はとてもうれしくなった。隣にいたおじいさんは目を丸くし、私に聞いてきた。

「どんな魔法を使ったのじゃ?」

「何も使っていませんよ。マッサージもとらえ方次第では魔法なのかもしれません」

私は少しはにかみながらそう言った。笑顔で帰っていくおばあさんを見送り店内に戻ろうとしたその時、どこからか子供の泣く声が聞こえた。辺りを見渡すと木の下で泣いている男の子を発見した。どうやら木に風船が引っかかってしまいとれなそうである。おじいさんと一緒に男の子の話を聞いてみる。高さから見るに私しか取れなそうな位置にある。私はさっと簡単にとってみせ、男の子の前に風船を持ってきた。男の子はありがとうと言い残しその場を去った。子供を助けるなんて久しぶりだ。学校に行っていた頃は正義感が強くボランティアにもよく参加していたものだ。そんな思い出を頭の片隅に置き、男の子を見送る。

「あのおばあさんもさっきの少年も君がここにいなければ助けることはできなかった」

おじいさんは唐突にそう言い放った。私は褒められてうれしい気持ちを抱えつつ、最近のことを振り返ってみた。最近は怒られてばかりいて生きる気力もわかなかった。誰かに相談しようと思ってもいつも踏みとどまってしまう。どうせこんなことを話しても傷になるだけ、私が傷つくだけなんだ。本気にされず終わる。笑われて終わる。でも、おじいさんと話しているときには素直になれた。きっとお爺さんが持つ特有の優しい声と優しい表情が私にそうさせているのだろう。私が居たからあのおばあさんとおとこの子を助けることができた?まだ納得はできないけど、心には確かに少しの希望が灯り始めていた。整体師として助ける私。ボランティアなどに積極的に参加し感謝される私。この世界が私を見つけてくれた。

 気が付くと自宅のベッドの上にいた。頬はぬれ、泣いていたように感じる。変な体勢で寝たのかな、体のあちこちが痛い。空には大きな雲が流れ、庭の観葉植物の葉には雨粒が乗っていた。頬を手で拭い、力を込めて立ち上がった。そうだ、失敗しながら怒られて、でも整体技術で困っている人を助けることができる私はここに確かにいる。この今の私こそが本当の私なんだ。あれは本当に夢だったのか、分からないけどもらった小さな希望を抱きながら今日も朝の準備支度をする。

完全ファンタジー読み切り作品です。

連載ではありません。時々読み切り作品も書いていこうと思います。

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