暗黒のバスタード
0時を回ってから自分の部屋に戻った。あと3時間練習したいって言ったら怒られた。
10人の男部屋。0時にみんなが寝てるかどうかは知らないけど、左端に竹内が寝ててその隣りの布団に入る。
なんかあったかいし柔らかい。ん? 柔らかい? これって前にもあったような……。
ふとんに潜ってる苦笑いの川上さん、小さくなってる川上さんと目が合う……あの、えっと、なにやってるんですか?
ケータイが光る、個人トークの申し込み。
川上真弓:神ごめ、寝ちゃって
葉山一志:なんとかする!
本当に寝てたんだろう、薄い普段着を超えて伝わる川上さんの体温が高い。
葉山が女連れ込んだ、スキャンダル、葉山くんサイテー、一志ちゃんと説明して、巡り巡る想像。
「葉山、戻ったの?」
竹内の声に脳より先に肩がビクッて反応。
「ああ、ちょっとピアノの練習してて」
「てか寒くね? 足そっち入れていい?」
「はあ、来んなよ!」
川上さんの肩に腕回してこっちに抱き寄せる。全身で感じる体温、それに、お互いの心臓の間にある気にするなって言う方が無理なアレ、そうアレ!
破壊神ーー。
全てを破壊し尽くすそれは、または人類全ての救済か。天使と悪魔、いやいやいやいや、僕には麻美という未来の……。
僕の背中に細い腕を回す川上さん、なぜに?
川上真由:脱ぐ?
葉山一志:ホントマジでやめて!
ケチだなあなんて竹内は反対側を向く。それどころじゃないので勝手にしてくれ。そのうち竹内は寝るだろう、あと何人いる? 8人?
あと何分こうしてればいい? 少しは体動かしていい? 川上さんの太ももが、腕が、食べると幸せになる大きな大きなメロンパンが……食べる? いやそうじゃなくて。それに妹みたいって思ってたけど、腕の中にすっぽり収まってくっついてて、可愛いらしい女の子で……。
川上さんの手が背中から脇腹へ。
川上真弓:くすぐってみた
葉山一志:この状況楽しんでる?
川上真弓:ご褒美
……なんかヤバくない? この何かが始まる空気感。蒸気したみたいに赤らむ川上さんの頬。
「なあ葉山、起きてる?」
次はなんだ、この声は右側の松野。
「あ、うん」
「芸能人ってキレイな人、多いっていうか……」
「ん?」
「クラスの子ってどう見える?」
「どうって……松野、好きな子でもいるの?」
「あ、いや、好きっていうか。実は川上真弓なんだけど」
ここにいますけど! なんだ罠か、罠なのか!
「スゲー巨乳ぢゃん」
ゴッ。
「……いっ!」
脇腹殴られた。
葉山一志:僕じゃないよ
川上真弓:なんとなく
「どうかしたか?」
「昼間、歩きすぎて足ツリそうで。で、川上さん……ウッ!」
「大丈夫か?」
「うん、ヘイキ。それで?」
「あの、胸とかじゃなくて優しいっていうか、葉山仲いいから教えてほしいっていうか」
あ……そういうことね。
「川上さんは素直でいい子だから、思ってることそのまま伝えればいいんじゃないかな」
この状況をそのまま伝えられない僕が言える立場じゃないけどね!
「葉山、サンキュー」
「応援するよ」
川上真弓:トイレ行きたい
葉山一志:もう少しガマンして
◇◇◇
「楽しかった!」
「ホントマジで勘弁してよ」
寝静まって寝息が聞こえて来たのが30分後、廊下で能天気に笑う川上さん。
「神に抱かれてドキドキした」
「誤解してるけど、抱いてはないからね」
心臓が、少しづつ脈を落ち着かせ始める。
「勃った?」
「あのさ」
「わたしは」
「ん?」
「あの……」
モジモジしてる小さな肩、呼吸は少し震えてる。
「王子様とか神とかいろいろ言われたって、子ども出来ないからって、普通の高校生じゃないかもしれないけど、そりゃ、そういうこともあると思うよ……」
ニコリってする川上さん。
「兄みたい。これからにいって呼ぶ」
「神呼びよりはいいかもね」
「にいを勃たせた女」
「うん、もうやめて……」
◇◇◇
「……夜這い?」
「いや、だから、今ちゃんと説明して……」
「あはは、信じてるから大丈夫。青春してるね」
「ホントごめんなさい!」
「もし相手がわたしだったら?」
「やっぱ昨日、あの後行っとけばよかった」
「聞いてあげたのに……」
「次は遠慮しない」
「一志、いつから肉食系になっちゃったのかな」
「麻美がそうしたんでしょ?」
◇◇◇
東京駅
八ツ橋と、大阪行ってきましたって書いてあるチョコレートのお土産持って新幹線で夕方、東京駅で別れた。
五十嵐さんに電話、駅の近く、平将門の首塚方面で待機してるらしい。
明日は渋谷ZAFT、今夜はロキシー・エージェントの仮眠室で泊まり。疲れた、練習は明日の昼間出来そうだし、今日は少しにしようと思う。
疲れたーー。




