大阪
大阪城公園ーー
「大阪城、カッコイイよね。やっぱり男のロマンだよね」
「なあ葉山、エレベーター付いてんじゃん、あれも徳川家康が作ったのか?」
「……北原に聞いて」
「フフ、そ、そんなわけないエレベーター、フフフ」
「北原、どうした?」
「フフ、フフフ、ツボって徳川家康って、フフ」
「お前おもしろいな」
「そんなことはどうでもいいの!」
ロマンを語る男3人に割って入る梶さん。
「でも天守閣のしゃちほこ……」
「お城とか、しゃちほことか、興味ないから!」
言っちゃったよこの人。
「さあ葉山くんそろそろ観念しよ」
「神、諦めが肝心」
須藤さんと川上さん、笑顔なのがなんか怖いよ。
「実はかくかくしかじかで」
「かくかくしかじかは言葉にするもんじゃないぞ」
「じゃあエトセトラ」
「それ意味違うぢゃん!」
テンション上がってる僕と竹内。大阪城をバックにツーショットとかしちゃう?
「葉山一志がここにいるって大声で叫ぶよ」
「ふざけてすいませんでした」
「ごめんなさい」
ベンチに座る6人。
「竹内、梶さん、須藤さん、川上さん、友達だよね、北原も。信じていいよね」
神妙な感じでみんな頷く。
「じゃあ話すね、麻美といずれ結婚しようと思ってる」
「……え!」
「ウソ!」
「葉山マジ? てか麻美って……」
「うん、そう呼んでる。もういっかなって」
丸い目をしたみんな、気にせず続ける。
「だからって未成年だし麻美は有名人だし、けど今バレたら日本中から怒られると思う。それに、麻美が幕張で3日間コンサートをやったんだけど、多分10億以上のお金が動いてる」
「10億……」
「スキャンダルでそれ飛ばすわけに行かないぢゃん。だからひとつひとつ順序よく、プロポーズもね」
「プロポーズって……」
「それがゼンコイとどう結びつくの?」
「ゼンコイ? ああ、『全力の恋をしよう!』ね。そこでタイミング見て、僕が麻美に憧れてて卒業したら告白しようと思ってるって言う。実際はもう付き合ってるけどね。でも高校卒業後だったらきっと問題ないでしょ」
「葉山、つ、付き合って……」
「北原、そう。言ってなかったね」
「それで?」
「僕がどういう人間かって見られるわけだから、誠実に演じる。それでもし、ないとは思うけど告白とかされたらちゃんとフル。周囲はみんな応援してくれてるけど、裏じゃみんなで会議してるよ」
ここまで一気に話した。なるほどみたいな感じでみんな俯いてたりアゴに手を当ててたり。
「なんかすごいね」
「……びっくり」
大人の世界、ましてや芸能界……。
「葉山、お前スゲーな」
「すごいのは僕じゃない、麻美の方だよ」
ポンと胸ポケットからソレを出す。
「……え?」
「なに、これ」
「痛み止めの注射」
手に取る梶さんの顔は真っ青。まるで経験者のような、何かを知ってる感じ。
「僕、病気なんだよ。あ、移るとかじゃなくて神経とか栄養とか成長の問題。人の半分だから40歳? 50歳? それくらいしか生きられないし、結婚したって子どもも出来ない、種無しってやつ。どうしようもないんだって。はは、天才薄命って感じ? 子孫繁栄できないんじゃ僕が生きる意味って……ねえ」
「え、あ……」
続ける。
「今まで月1くらいで発作来てて、ソレないとなんか死ぬみたい。疲れとか緊張とかが原因みたいだけど。道頓堀の天ぷら屋さんとかたこ焼きとか、みんな勧めてくれたのに食事制限で食べれなくて、ごめんね。それに……」
みんなキャパオーバー、気づかないフリをする。
「心っていうか、精神面にも問題があるみたいで、自殺願望とかそんなの。抗うつ剤みたいの飲んでるけど、よくなってるのか分かんない」
全部話す、止めない。
「これ、全部知ってて結婚したいって言ってくれて、だからすごいのは僕じゃない、麻美の方なんだ」
「神、ホント?」
「……うん」
川上さんは涙ぐんでくれてる、きっと感受性が豊かなんだろう。
「こんな感じかな。ピアノ弾いて、麻美と一緒にいたいだけなんだけどね。あとなに知りたい?」
「わたし達にできること……」
須藤さんの真剣な目に感じる安らぎ。
「学校で発作来たら多分ムリだから……助けて」
ああ、僕はずっと、だれかに助けてもらいたかったんだ……。
思ってることを言葉にすると、そうなんだって自分が納得する。だから少し涙目になっちゃって、ハンカチで隠す。
「葉山もっと早く言えよ……」
「竹内、ごめん」
友だちに話せたっていう安心感、そっちの方が大きくて、笑みだって自然とこぼれる。
「葉山くんは私たちが絶対守るから! 愛内さんともそう約束したんだから! だから……」
叫ぶ梶さんの声が心の真ん中へ。
「ありがとう」
麻美がいなかったらもしかしたらなんて、入院中に来た染谷マキ、連絡1本の倉科悠、駆け引きみたいな告白ごっこをしてきた2人より全然、ずっと、須藤さんも川上さんもみんなすっごく魅力的だと思う。




