表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌姫の全力の愛が、僕を襲う!  作者: 長谷川瑛人
芸能界デビュー編
57/328

共演者たち

「リハーサルってこんな感じなんですか?」

「生放送だからね。主に明日の確認作業ってとこかな」

「一志ちゃんも早く慣れちゃいなさい。どうせ細かくやったって生放送なんてトラブルばっかで」

「ねえ……」


 ねえって、裏側はきっとそんなもんなんだろう。


「そういえば聞いた? あんたたちが歌った後、CMまでの間ヘリ飛ばして上空から局映して使うって」

「あは、わたしたちここで歌ってるみたいな感じ?」


 なにやら楽しそう。


「あの虻川社長、僕って何秒くらいテレビに映るんですかね」

「2分よ」

「2分? そんなに?」

「だいたいだけど麻美ちゃんが1分、一志ちゃんが1分、2人一緒、どっちかが背景だったり分割だったり引いた映像だったり、ってのが1分ってとこかしらね」


 2分、長。


「どのくらいだって思ってたの?」

「……2秒くらい、ピアノ弾いてるだけだし」

「そんなわけあるかー!」

「その後トークの時間もあるからね」

「トーク?」

「2人で進行の人とちょっとおしゃべり」

「は? 面白いこと言えと? ムリムリムリムリ」

「麻美ちゃんの隣りで笑顔で立ってればいいのよ」

「そろそろ引退……」

「デビューすらしてないのに?」

「……デビュー?」

「明日、葉山くんが芸能界デビューってこと」

「なんか芸能人っぽい」

「芸能人なんですけど!」




◇◇◇




「レンさん、涼さん、お疲れ様です!」

「お、葉山くんぢゃん!」

「久しぶり」

「木場雄也さん、岬良太郎さん、はじめまして!」

「噂の葉山くんだね。ユーヤに良太郎でいいよ」

「はじめまして!」

「ライジンの皆さん一番手なんですね」

「そうなんだよ、実はさ……」


 ライジンさんの皆さんに挨拶。僕ライジンさんと知り合いなんだぜって、ちょっと声大きくなるしなんかだれかに言いたい。

 ご飯行こうとか、ぜひ、でも僕まだ未成年なんでとか、僕ライジンさんとこんな会話してるんだぜ、ってだれかに見せつけたい。


 写真もお願いして、うん、ただのファンだな。歌あんまり知らないけど。


 挨拶も仕事--だそうで麻美に連れられて共演するだろう人と「こんにちは」「はじめまして」とか「ニュースで見かける葉山くんだ」「写真撮ろう」とか。


 どうでもいいけど、へたっぴ隊長が面白そう!


 それからも続く「お会いできてよかったです」「握手しよう」とか女性からの「連絡先を教えてください」「彼まだ高校生なんで代わりにわたしが」とか、麻美がさりげなく鉄の盾。


 もはや、へたっぴ隊長と友だちになりたい!


「葉山くんが目移りしないで安心」

「JーPOP、麻美の声しか興味なかったし」

「え、急に、あは」

「へたっぴ隊長だけは特別」

「ちょっとお!」


 藤原凛--探してみたけど見かけなかった。横浜アリーナからの中継って言ってたし、きっとそっちなんだろう。


 だれと仲良くしていいかも分からず、結局は同じ事務所のゼフィランサスさんとアンダーコアさんのグループの人たちとピアノの事とか聞かれたので話しをしてた。

 怖そうなイメージだったけど、皆さん音楽に熱い情熱を持っているようで、話して楽しかった。


 目を離した隙にいなくなったへたっぴ隊長、見つけた僕は猛ダッシュ、写真を撮らせてもらいました。トークに上げる許可も頂きました、笑顔で。


「愛内さん、へたっぴ隊長と写真撮らせてもらいました」

「ああねえ、彼歌は……」

「そういうのはいいんです。なんか存在が」

「あはは、そこは安全なのでご自由に」

「この気持ちはまさか、恋?」

「はあ? 今すぐ消して! なんなら今から存在ごと消してくる!」


 その後はプロデューサーさんにディレクターさん、といった肩書きを持った人たちと挨拶、その後も挨拶、そして挨拶、もう顔と名前が一致しない。


「ここが私たちが自由に使っていい控え室ね」

「個室? すごいね。共同だと思ってた」

「フフ、歌姫様を舐めないでね」

「ところで皆さん優しいというか、すぐに話しが盛り上がるというか……」

「まあ言って同じ分野で同じ目標だから、共同体みたいで仲良くなりやすいよね」

「そんな感じなんだ」

「なのでいろいろと誘いも多いから、まあいろいろ……」

「ラブコメは帰ってからね」

「あは」


 明日にはきっと空気も変わるだろうという予想は、だいたい当たりそう。


「来る時、報道陣いたよね、事務所の前とか」

「もう他局では放送されてるかもね。見る?」


 おもむろに楽屋のテレビをつける麻美。


「葉山一志くんと愛内麻美さんを乗せた車が事務所を出ました。葉山一志くんの顔、笑顔です。こちらに笑顔を見せています」


「来年はフランスパリで行われる世界ピアノ選手権に最年少での出場が決まってますからね。将来の日本のピアノ界のエースです」


「子供のころに両親を亡くしそれから一人暮らし、それから上の世代の大会を総なめにした神童、神の子、神に愛された演奏」


「今日まで我々、報道機関には一切の情報を遮断されてきました。愛内麻美wf葉山一志、とうとう明日、芸能界に進出です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ