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歌姫の全力の愛が、僕を襲う!  作者: 長谷川瑛人
芸能界デビュー編
51/328

2人のライバル

「今日から3日間、指導を担当させて頂く原です。ですが、全日本の時に葉山くんの演奏を会場で聞いてまして、会えて嬉しいというか、指導できることがあるかどうかは……」

「お願いします」


 ロキシーエージェントの本社から車で10分のスタジオ、そこを3日間借り切って最後の練習をする。


「前日はリハーサル、本番と同じ場所で番組の進行の確認をする。本番は生放送なので一発撮り、いいね」


 古川さんの説明。


「だいたい分かると思うけど、進行の人が紹介して画面が変わり演奏スタート、3分の演奏後、違う映像を映してCMに行くタイムテーブルになってる。CMは番組にとってすごく大事で、ただどうしてもCMに入るまで15秒間かかる。その間の尺を何かで埋めないといけない」


メインステージで進行が紹介

 ↓

3分間の演奏後に控え室に戻る

 ↓

15秒間、別映像

 ↓

CM


 へーなんて思いながら聞いてる。


「20時ちょうどくらいにぶち込んでやったわ」


 自慢げな虻川社長。


「関係あるんですか?」

「18時半から22時までの3時間半の番組内で、視聴率を一番稼げる時間帯ってことよ」


 僕はなんでもいいけど愛内さんはそうはいかないんだろう。


「参加者は男女20組づつ、計40組。ライジンやフライルーとかのアイドル枠、RICKsやNT1Aといったバンド枠、子ども向けアニメの主題歌に新人枠、テクノ系のエルプルも出るわ。加えて実力派、コンクールとかではないけど視聴率という数字で評価される面もあるからね」


 メディアでしか聞いたことない名前ばかり。


「同じ実力派の中で藤原凛、それに染谷マキ、この人たちとは比較されると思って。藤原凛は当日、横浜アリーナでのコンサートを中継する予定で、染谷マキは大ヒットした映画『いつも心に花束を』の主題歌を歌う予定になってる」


 藤原凛、染谷マキ、確かに2人とも上手い。


「その中でも一番注目されてるのがあんたら愛内麻美wf葉山一志、頑張んなさい」

「なんでそんなに……」


「そんなの」虻川社長の目が光る。「あんたんとこの白河が営業頑張ったからに決まってるじゃない」


 白河さんが。


「ご飯は任せてください」そう話すのは僕のマネージャーの五十嵐さん「キッチンあるし沖縄料理いっぱい作ります。でも愛内さん、ちょっと教えてほしいかもです」

「あはは、やろやろ!」


 泊まり込みで3日間の練習、その後はリハーサルと本番が残すのみ。




◇◇◇




 懸念的はふたつ--。


・愛内麻美の歌唱レベル。

・葉山一志の直近3回の発作による疲労と再発。


 だそう。


「お昼間に合わなくてすいませんです」


 五十嵐さんがコンビニで買って来てくれた、栄養満点のゼリーと食べれそうなのを口に運ぶ。


「全然ヘイキですよ。こういうゼリー昔から食べてますし」

「葉山くん、それで栄養取れるわけないでしょ?」

「ビタミンとか、なんかいろいろ書いてありますよ」

「だからってちゃんとね」

「愛内さんこのメーカーのCMやってませんでした?」

「ごめんさない反省します」

「お2人はお付き合いしてるんですか?」


 いきなりのツッコミ。


「え、いや、あの、ね」

「五十嵐さん、僕17歳なので……」

「ああ、ナイショってやつですね。マネージャーとしてちゃんと見守りますから、ね!」


 あなたが一番危ない。


 虻川社長と古川さんは忙しそうにスタジオを出たり入ったり、五十嵐さんは料理とかいろいろとお世話してくれて、指導員の原さんは僕たちの練習をずっと見てくれている。

 第三者がいるだけで2人の空気が変わる、お願いしてよかったと思う。


 休憩を挟んでから発声練習という基礎、また休憩を挟んでから発声練習という基礎、おおよそその繰り返しで大半の時間を使う。

 だいたいは出来上がってる僕の演奏と、経験則からなる愛内さんの歌声、それを一番キツイ基礎練習を繰り返すことによりでミスを減らし安定させ極限まで高める。


 きっとその先にあるだろう限界突破、ゲームみたいだ。


「どうやら葉山くんの場合は、今まで1人で演奏して来たのでだれかに合わせることに慣れてない。合わせることに意識しすぎてその分、指が疎かになりやすい。かといって日本のトップレベルにある事実に変わりはないがね」


 さすがは指導員、原さんの指摘は正しい--。

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