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側と側の政治

「パトリシア・ブリュネ、わたしと結婚してほしい」

「確か、あなたと会うのは初めてだったと思うけど。それに年の差も」

「そうだ、だが本気だ」

「興味がないので他を当たってください」




◇◇◇




「本当によく食べるね」

「言ったでしょ、食べるのが好きなの。ガブリエウ、約束通りお代はお願いしてもいいのよね」

「もちろんだ」




◇◇◇




「まさか本当にあなたとこんな関係になるなんて」

「体のラインまで美しい」

「わたし、性格は悪いって自覚してるわよ」




◇◇◇




「もう、約束から10分すぎてるじゃない」

「遅れてすまない」

「まあその代わり、今日は美味しいところ連れてってね!」




◇◇◇




「あなたはいっつもそう。理論で固めて自分がまるで正しいように話す」

「だが今回はパトリシア、君にも責任があるだろ?」

「責任ってなに? じゃあそのあなたが言う責任をわたしにどうしろって言うの?」




◇◇◇




「ねえ、たまには手をつないで普通の恋人みたいに街を歩きたいわね」

「そうしたいがお互いに立場がある」

「そんなもの、ない方が楽なのかな」




◇◇◇




「またピアノのせいにするの? じゃあピアノなんて辞めちゃえばいいじゃない!」

「それは君に女優を辞めろと言ってるのと同じことだ。それに世界が許してくれない」

「今度は世界のせいにするの? それにわたしの話しはしてない、あなたの話しをしてるの!」




◇◇◇




「自分のブランドを立ち上げることにした。立場上、リコルルのアミューは辞なければいけないけど、君との時間も作れると思う」

「将来的にはピアノを辞めるってこと?」

「分からない」

「わたしも言い過ぎたの、ごめんなさい」




◇◇◇




「おじい様お久しぶりです。お元気そうでなによりです」

「おおパトリシア、こっちにおいで」

「はい」

「パトリシア、もしかして悩んでるのか?」

「お分かりになるんですか?」

「当たり前だ。パトリシア、お前はわしの大切な孫なんだ」




◇◇◇




「君のお祖父様には残念だった。もしわたしがナントの邸宅を購入して保管しようと考えたら、君はどう思ってくれるかな」

「ガブリエウ! わたしを妻にしてください!」

「わたしの人生をかけて君を幸せにする」




◇◇◇




「ねえ、あなたのピアノを演奏を見てるの、わたし、つらい」

「お祖父様を思い出してしまうのか?」

「そういうわけじゃないと思う。分からない。もし本当にピアノを辞めるとしたらどんな時?」

「どうだろう。考えたこともないけれど、きっと、わたしが負けた時かな」




◇◇◇




「おじい様と連絡を取り合ってたってどういうこと! おじい様にあなたは一体なにをしたの!」

「パトリシア、話しを聞いてくれ」

「聞くもんですか! わたしに内緒でそんなことして。ナントの邸宅だって、北側を勝手に工事してなにか企んでるに決まってるわ。あなたのブランドの売上だってあまりよくないのも知ってるんだから!」

「お願いだから聞いてくれ」




◇◇◇




「君に内緒で話しを進めたのは謝る。だがやましいことはなにもない」

「今はあなたを信用できない」




◇◇◇




「あなたが用意した同額を振り込む準備が出来ました

た」

「……もう、無理なのか?」

「わたしはあなたとの将来を考えられません。結婚する前でよかったと思ってる」

「分かった」




◇◇◇




「パトリシア、長年の功績を称えて、君をアミューにしようと考えてる」

「CEO、嬉しい限りです!」

「リコルルは全面的に君をバックアップする。なにか困ったことがあればいつでも言ってくれ」

「……困ったこと」

「なんじゃ? ワシでよければ相談に乗るぞ」

「ガブリエウ・ブランに勝てるピアニストはいますか?」

「ガブリエウ・ブラン? アミューを辞めた男か。ワシの息子が楽器も出来んくせに音楽関係は詳しくてな、ちょっと待っておれ。ワシじゃ、副社長を呼んでくれ。さてパトリシア、悪いようにはせん。ゆっくり聞かせてくれないかな?」




◇◇◇




「カズシ・ハヤマを調査したところ、いろいろと問題が。ただしアメリカのマルクス・ルイスとソフィア・ギャリック、ノルウェーのアンネ・ヨハンソンを味方につければ急成長し、ガブリエウ・ブランに勝つためのヴァルハラ行きも十分に可能かと。念のためアルゼンチンのカタリーナ・ロメロも加え、オペラも鑑賞させましょう」

「我がリコルル一族には先見の明があるという。もう少し仕事に向けてくれればワシも楽なんじゃがのう」

「ただ、コンクールの審査員がちょっと……」

「そっちはワシに任せておけ。ちなみにだ、その日本の高校生じゃなくて名のあるピアニストでは無理なのか?」

「彼に勝てる該当者は、彼以外1人もおりません」




◇◇◇




「彼の情報が欲しいならあげるわ。いっつも部屋でビクビクして震えてたものね。ただし条件があるの。彼に危害を加えない、今後はわたしと関わらない、どうかしら?」

「分かった」

「本当は彼が怖くて怖くて堪らないんでしょ? ピアノを弾くことすら怖いんでしょ? 世界中からの期待が怖いんでしょ? 負けたら辞めれるって思ってるんでしょ? 卑怯で嘘つきのガブリエウ・ブラン、ねえせっかくだから答えてよ」

「……全部、パトリシアの言う通りだ」

「フフ、わたしたちがあなたに勝てるピアニストを育てるから、あなたは、安心して大嫌いなピアノを練習してちょうだい」

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