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歌姫の全力の愛が僕を襲う!  作者: 長谷川瑛人
芸能界デビュー編
23/326

一瞬で

 憂鬱な月曜日の朝、ベッドに沈みたい、枕の中に潜り込みたい、布団があったかい。

 あったかい布団をぎゅうって抱きしめて全身でそのあったかさを感じ取る。


 幸せ。


 これで二度寝できればもっと幸せだろうけど、外の明るさはもう起きる時間だ。あと少しだけ寝たい、抱きしめた布団をさすり布団の曲線に合わせて手を添い、ん、曲線やわらかくない?


「葉山くんのえっち!」

「……マジで心臓止まりますって!」

「おしりさわったのに?」

「死ぬ」

「さあ起きて、教えたメイクやるよ」




◇◇◇




 おしりさわったのに? イヤンエッチ! でも、葉山くんなら、やめろ、やめてくれおれの脳、そのチンプな想像を止めろ! 今外だし、ニヤけるし、もうすぐ駅だし!

 南口から改札へ、髪もそうだしメイクもこれだし、でも服が着慣れてる高校の制服だから昨日の焦りはどこへやら、そのまま改札前を通り過ぎて北口へ。


 停留所でバスを待つ。目的地は同じ高校なわけで同じ制服が並ぶ。

 髪を切るなんて日常のことだし当たり前だし、メガネからコンタクトにしたからって、なんかチラチラ見られてるようか気がする、なんだろう、もしかして変?


 バスに乗り込むとき前にいた知らない女の子、1年生? なんかこっち見てバスのステップに躓いたから咄嗟に手を伸ばす。


「大丈夫?」

「あ……」

「君が無事でよかった」

「はい」


 ずっと僕の顔を見てるやっぱり変? いや人並んでるしバス乗ろうよ。


「僕の顔、なにか付いてる?」

「……いえ」


 学校の下駄箱で上履きに履き替える。おしりさわったのに? もうだめだおれ、この右手が愛内さんのおしりを。


「あは、ねえ」

「でしょでしょ」


 こっち見て笑ってる2人、バレた? おしりさわってるの思い出し笑ってるのバレた? ニヤニヤしてた? 自重しよう、でも想像が、脳が! 教室、2ー3、やっと着いたってドアをくぐる。


「え、マジぢゃん、ヤバ!」

「でしょ、超カッコイイーー!」

「え、じゃあ写真も?」

「神、マジで王子様!」


 なに?


 焦るおれ、キョドるおれ、一歩も歩けないおれ、そのおれの前に梶さんが来た。黒艶ロングに青いリボンが似合ってる。昨日の今日で何か言ってやろうくらい思ってるんだろうか。


「葉山くん……」


 なんですか……。


「あなたのファンになりました」


 へ?


「それと、ファンクラブ50人超えちゃった」


 ……へ?




◇◇◇




愛内麻美:早! 笑!

葉山一志:どうしたらいいんでしょう。

愛内麻美:そんなもんでしょ!


 トークで相談って、なんの相談にもなりやしない。


「よ、モテモテ」

「なにが起きてんだよ」

「こっちっていうか、みんながそれを知りたがってるんだけど」


 席から教室を見回す。何人かと目が合い、キャッとか言って笑ってる。


「それで会長がわたしで副会長が須藤さん、100人目指して頑張るね!」

「わたしも頑張る!」


 いや頑張らないでください。


愛内麻美:ファンクラブって笑。営利じゃなければヘイキ!

葉山一志:いやそういう問題じゃ


「お金とかじゃなければ君たちに任せるよ」


 なに言ってんだおれ。


「分かった、2人だけの秘密だもんね!」

「さゆり、なんの話し?」

「なんでもなーい」


 そうだ断ろう、やめて欲しいって言おう、この明日には消えそうなから騒ぎを!


「だからファンクラブのグループトークに入ってくれる?」

「僕でよければ喜んで」


 違う! そうじゃない!


《王子様をみんなで遠くから愛でる会》


 いやいやネーミングセンス! 覗き込む竹内に梶さんがまるで、生ゴミの中の魚の骨でも見るような視線で刺す。


「面白! なあなあおれも入っていい?」

「は? 死ね」


 竹内、お前、梶さんになにしたんだ。




◇◇◇




 その日の夜、愛内さんが家を出た。出た? 追い出したのはおれだけどーー。


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