宣伝開始!
葉山一志:見学に行けなくてごめんね
倉科悠 :楽しみにしてたんだけどなあ
葉山一志:ほんとごめん!
倉科悠 :冗談冗談! 来月、会えるしね
葉山一志:そうだね、よろしく!
倉科悠 :そういえば聞いてよ、キスしたんだけどさ
葉山一志:お、おう
倉科悠 :なんか事務的っていうかお仕事っていうか微妙っていうか
葉山一志:そうかも、ね
倉科悠 :一志くんの家でした時とは気持ち的にもやっぱり全然
葉山一志:あれもあれでどうかと思うけど?
深川麗蘭:え? なに? どういうこと? いつキスしたの?
倉科悠 :帰りがけ
葉山一志:僕とじゃないからね
深川麗蘭:カズシじゃなかったら他にだれがいるのよ!
倉科悠 :あさみお姉様
深川麗蘭:あ、そ、そうですか
倉科悠 :下着は交換したもん、ねえ一志くん!
葉山一志:処分に困ってるんだけど
深川麗蘭:わたしのを渡せばカズシのくれるの?
葉山一志:あげないしいりません!
◇◇◇
火曜日と水曜日で『ボクの罪とキミの罰』は完成した。完成はした、低音の黒鍵をメインに拍子をズラしたフォルテ強めの曲だ。したんだけどこれでいいのかどうかが分からない。
「納得行かない感じ?」
電話口の麻美の声。
「んー、なんか想像以上にカッコよくなっちゃって」
「じゃあいいんじゃない?」
それはそう、なんだけど……。
「麻美の歌詞だとさ、現在と過去、2人それぞれにある記憶や思い出を忘れないで、未来起きるだろう出来事も全部、一緒に生きていこうみたいな感じだよね」
「うん、そんな感じ」
「でも一般的に言えば罪と罰って言葉は、あんまりいい意味じゃないっていうか、それをカッコよくしていいのかって考えすぎ?」
どうだろう、でも深く追求することは大事だよとのこと。
「この前の、水戸の協会でのことが気になっちゃう?」
「まあなくはないけど、どうなんだろう……」
「やっぱり第三者の意見も聞きたいし、スタジオだと緊張感あるし、予定通り週末にバンドメンバー交えて演奏してみようか」
「うん。じゃあ楽譜、PDFで送るね。BCとCCは?」
「いつも通りでよろしく」
「分かった」
数時間後、六本木の事務所のPCのシーケンスソフトで再生されたそれを聴いた麻美の感想。
「超カッコイイ! もうこれで決定!」
僕が聞いてもそれはそう……。
◇◇◇
ーーー
『雨宮くんの日常は大騒ぎに溢れてる』
主演:野島ヒロト・倉科悠
出演:金沢高月・三浦侑芽・渡部力・黒川有里紗
主題歌:『NOT ALONE』
(愛内麻美wf葉山一志)
12月1日、全国上映開始!
ーーー
よくある映画の宣伝は今の僕には特別で、テレビで流れるクレジットに僕の名前を見つけて喜んだ。
いつものメンバーはもうみんなPVのフル映像を見たみたいで、教室でも、教室以外の学校中が、思った通りの大騒ぎ。
「ヒロトの顔とわたしの声が重なってる!」
「北原くん全然別人だって!」
「え、待って! 『NOT ALONE』もうランキング入ってるんだけど!」
「葉山くん、次はわたしも参加させて!」
「にいとの一生の思い出」
「それはわたしもそうだけど!」
雨男の雨宮くんの趣味はラノベを書くこと。ある日、晴れ女のひまわり(悠)の持ってたノートと学校で入れ替わった。
それを読んだひまわりは授業中にも関わらず号泣。ひまわりはそのノートの持ち主が雨宮くんだと知り、2人の距離が縮まり、雨空が少しずつ晴れて行くって内容。
『NOT ALONE』
題名通りのあったかくて分かりやすい曲。見た人聞いた人が自然に理解できるように、主張やクセはできるだけ抑えた。
だれでも歌えるそんな曲ーー。
見には行けなかったけど、映画と曲の相性はすごくいいんじゃないかって僕は思ってる。プロの人が聞いたらどうだろうって、それ相応のお金がかかってるんだろうし、きっと合格なんだろう。
◇◇◇
律子おばさんが作ってくれた料理がテーブルに並んでる。その沖縄料理の味が懐かしくて、ハシで口に運ぶ度にいろいろと思い出す。
今回の曲をみんな喜んでくれてるかな、たくさんの人たちがエイサーで送り出してくれて、それに応えられているかな。
「あ、ニライカナイに沖縄の要素なんにもないから作曲し直そ……」
でも律子おばさん、今日ちょっと味薄すぎると思うんだ。特にこのチャンプル。キッチンに行って塩コショウを少しだけ入れた。
でもあんまり入れすぎると怒られちゃいそうだから、そんなに変わらなかったけど美味しかった。




