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歌姫の全力の愛が僕を襲う!  作者: 長谷川瑛人
全力の恋を始めよう!編
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藤原凛

「熱いねえ。でもみんな盛り上がってるね!」


 藤原さんは大きな口が特徴的で、衣装なんてデニムのラフな感じで、大きな身振り手振りに彼女らしさがある。


「もうすぐ待ちに待った花火が上がるよ。12、000発、すっごい楽しみ。ねえその前に、今日さ、観客席に『全力の恋をしよう!』の6人が来てるんだよねえ」


 藤原さんの紹介でモニターに映し出される僕たち。立ち上がって笑顔を向けると神宮は歓声で包まれた。


「あたしも毎週見てるんだあ。ユウキくん、レオくん、カズシくん、ユキちゃん、ユアちゃん、レイラちゃん、ねえちゃんと言えるでしょ」


 ちょっと照れくさいけど仕事仕事と落ち着かせる。


「みんなはこの中に推しいる? あたしはねえ、カズシくん。同じ音楽関係ってのもあるし、高校卒業したら愛ちゃんに告白するって、なにその純愛! そういうの大好物!」


 歓声の中、じとっとした視線のレイラの隣りで、左右のモニターには僕の顔。


「そういうわけでカズシくん、あたし、君とコラボしたいんだあ。あとで所属に連絡すらからよろしくね。あと愛ちゃんにもよろしく!」


 藤原さんは一方的に話して曲に入った。


『もっと熱く』

『全てを情熱に変えて』


 大きな口が大きな声出して、歌う藤原さんはテンポとか音程なんかズレたってそんなのお構いなく、それでも伝わる必死さ、全力さ、一生懸命さに会場は一体と化す。

 会場の空気は麻美のコンサートとは違うけど、いいとか悪いとかじゃなくて、それぞれの個性溢れるってやつだ。


 君の瞳に映った僕は

 ちゃんと笑えてるんだろうか

 カッコワルくてもそれでもいいって

 ただ心はちゃんと君を見てる


 およそ全員が、会場全員の声が、藤原さんと一緒に歌う。楽しい、楽しい、楽しい、感情は声に乗って夜空に届く。


 スゴイ!


 なるほどこれがなんて、藤原さんの好きな演奏なんだろうって、僕の心も楽しんでる。


 曲が終わると同時に上がる8尺玉。


 破裂音がお腹に届く前に、赤と白の無数の光が高層ビル群を照らし出した。


「すごーい!」

「ね」


 それから始まる光と音の演出が会場全体の、外苑の、東京の、たくさんの疲れた人たちの顔を上に向かせて笑顔にする。

 ナイアガラ? スターマイン? 聞いたことがあるそんな名前は、色と形でなんとなくこれだろうって想像だけしとく。


「たーまやー!」

「かーぎや!」


 後ろから聞こえてくるそれはなに? 玉屋? 鍵屋? ボーリングの玉とか売ってて倉庫に保管しといて、鍵で開けるとか? 花火関係なくない?

 番組的にはエルプルさんと藤原さんの演出、それに花火の映像はガッツリ映すらしく、今回の分は2週に分けて放送されるらしい。


 あと3回。


 『ゼンコイ』で僕らが会うのもあと3回。当然これからも付き合いは続くだろう、けれどこういう形で会えるのはあと3回。その後はそれぞれがそれぞれの生活に戻る。




◇◇◇




「カズシ、藤原さんからコラボお願いされてたぢゃん。するの?」


 ユウキが興味ありげに帰りのバスの中で聞いてきた。


「多分、しないと思うよ」

「スゲー楽しそうだからやればいいのに」

「藤原さんはきっと、楽しみにしてくれてるんだろうけどねえ」


 それよりも少し気になることを隣りのレイラに小声で聞いてみた。


「ねえレイラ、帰りさ、ユウキとユア、レオとユキが並んで歩いてたよね?」

「あ、気づいちゃった?」

「うん、なに?」

「わたしも直接は聞いてないんだけど、なんとなくそっちの線もあるみたい」

「マジ?」


 恋愛リアリティードラマ特有の、いびつな恋愛がいつの間にか始まってる。ええ、僕は外野から観戦してただけだから知りませんでした。


「次会えるのは2週間後だね。カズシはどこか行ったりするの?」

「家でずっとピアノの練習してると思う。世界大会へ向けて少しづつ始めてるからね」

「そっかあ。来年の4月だよね?」

「そう。レイラは?」

「悠と一緒にちょっとだけ北海道に行く予定」

「あれ? 悠は帰らないって言ってたような……」

「それは悠がカズシと夏休み中ずっと一緒にいるつもりだったからだよ」

「あ、なるほど……」

「わたしと悠と、一緒に行きたい?」

「……遠慮しときます」




◇◇◇




六本木ーー




「そういうわけで一志ちゃん、藤原凛からコラボ依頼が来てるけど?」

「遠慮します」

「wfじゃなくて一志ちゃん個人への依頼よ?」

「イヤです」

「凛ちゃんコンサートとかだと楽しくなっちゃって、あんな感じだけどホントは歌うまいよ?」

「麻美に言われてもムリなものはムリ」

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