BBQ
千葉県白子町
九十九里浜リゾートホテル
プライベートビーチーー
「カズシ、告白の件でネットすごいことになってるけど大丈夫か?」
「ホント、カズシへいき?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
悠のことでバタバタしてて、麻美への告白が遠い過去のように思える。
「よかったあ。ねえ、CCとグループトークでみんなつながろ?」
「うん、よろしく」
今日は視聴者が待ちに待った水着回。ユキは白のヒラヒラしたやつ、ユアは水色のスカート付きワンピース、レイラは黒のビキニ。
もうこれで視聴率いいんじゃない? 僕ら男3人はほっといてこれだけ撮ろ!
ユウキ、レオ、ユキ、ユアの4人はジェットスキーに乗って沖合のボートへ。僕は体調をそこまで気にする必要もないと思ったけど、念のためビーチでバーベキューの準備。
わたしもお留守番して手伝うって、レイラも残ってくれた。
「みんなと一緒に行ったらいいのに」
「カズシとおしゃべりしたかったって言ったら、カズシは迷惑?」
「全然。僕もレイラと話したかった」
「え、なんか嬉しい」
バーベキュー……、さて、この用意された肉と野菜をどうすればいいんだろう。切ってこの串で1個1個刺せばいいのかな?
「もしかして、カズシはバーベキュー初めて?」
「うん、まあ、ね」
「じゃあ教えてあげるね!」
「よろしく」
見よう見まねでやってみる。なあんだカンタンぢゃんって、肉以外なら野菜を焼くだけだろうし僕でも食べれそう。
「……レイラ」
「んん?」
「悠、倉科悠さんがうちにいる」
「え、悠が? どういうこと?」
「カメラなしにして、全部話していい?」
「……うん」
トウモロコシ切ってキノコ切って、玉ねぎに串刺しながら話した。
突然うちに来たこと、休んだ理由、連絡取れなくなった理由、3人で生活してること、僕の友達を紹介したこと、きっと何か悩んでること。
「そっかあ、そんなことになってるんだ。なんか、ごめん」
「レイラが謝ることじゃないよ」
「そうだけど……」
「レイラは、悠のこと嫌いなの?」
「ううん、全然。ただタイミングなくて言い出せなかったっていうか」
「悠と話してくれないかな」
「カズシは、悠が、好き、なの?」
「友達としては、レイラとみんなと同じくらい好きだよ。心が不安定って、僕もそうだからさ」
「そっかあ、きっと愛内さんが言ってたこと合ってるのかもね」
「話してくれる?」
「分かった」
みんなが戻って来たころ、レイラのおかげでバーベキューの準備も整った。なんとなく、ユウキとユキ、レオとユアの距離が近い。
「おかえり!」
「ただいま。カズシ、レイラ、準備ありがとう」
「待ってたよ。ほとんどレイラのおかげだけどね。さあ、焼こうよ」
「この大きくなっちゃった肉はユウキのね!」
網の上でジュージュー音してる肉が見た目は美味しそう。肉汁が炭に落ちて煙をパチパチさせてる。
「うま!」
「熱……」
「美味しい!」
美男美女が美味しく食べる絵はイイネ。
「カズシ、それ野菜しかないぢゃん」
「うん、僕、脂っぽい肉食べれない」
「……ベジタリアン的な?」
「いや、体調の問題。食べたら死ぬんじゃないかな?」
途端に静まり帰る現場。
「あ、ごめん、ついつい。スタッフさん今のとこカットでお願いします」
「……マジ?」
「どうかな、食べたことないけど、救急車とか? あ、焼肉おごるのどうしよっか。まあ後で考えよ」
わざとあっけらかんと話す僕。
「落ち着いたらみんなには話すよ」
「……分かった」
なんとなく微妙な空気になっちゃったけど、今日の撮影は終わり。来週は夏祭りと花火、完全に脇役に回ってるけどそれなりに楽しめそう。
「じゃあまた来週な!」
「グループトークで話そう」
「またね!」
6人がそれぞれの車に移動。アルファードに戻って後部座席のドアを開ける、それと同時に手筈通りに外に出る悠。
倉科悠がレイラに駆け寄るーー。
「麗蘭!」
振り返るレイラ。レイラは悠を見つけて深川麗蘭の顔になった。
ゆっくりとレイラが悠に近づく。お互いに女優、でもこんな時はどんな顔したらいいか分からない、2人の照れた顔はそう言ってそう。
「悠、久しぶり……」
「……だね」
僕らが撮影中、麻美はレイラのマネージャーさんに話しをしてくれてたらしく、少し時間をもらえた。
それから30分くらい、僕と麻美と五十嵐さんは車で待ってる。砂浜のベンチで、悠とレイラが何を話してるかなんて、僕らは知らなくていいこと。
「お待たせ」
泣いちゃった、そんな瞳と目元。
「悠ちゃん帰ろっか」
「はい」
成田空港の近くを通過して常磐道へ。
「今ならまだ、黄門祭りの花火に間に合うかもですね」
「五十嵐さん急げー。かき氷食べたーい!」
「悠ちゃん降りたらパニックになっちゃうでしょ?」
「もう別にいいじゃないですか」
「悠、なんか吹っ切れてない?」
「そう? いつも通りだけど?」
「じゃあ急ぎますね!」
「……安全運転でお願いします」
これで悠はきっと大丈夫、なんて、悠の闇はそんなカンタンじゃなかったーー。




