扉の先
という夢を見たんだ。その一言で全てが元に戻ったらどれだけ幸せなのだろう。これはゲームでも遊びでもない。ただ魔法が使えるだけの凡人が、どこか似た者同士の愉快な仲間たちとわいわいキャッキャするだけのお話なのだった。打ち切り。
聞かせるさんの国に来てから二週間が経過した。私は暇つぶしに創作をして遊んでいた。その物語も先ほど打ち切りになった。吹き荒れろ、エターナルブリザードッ、私は超絶退屈していた。何の物語の予感もしない。季節は夏なのに寒い。まるで冬みたいに心が寒々しい。こんな感覚は初めてだ。うう、ブルブル震える。……あれ、いや違うなこれ、身に覚えがある、ただの悪寒だ。熱あるわこれ。うう、自覚したらますます体が寒い、そしてだるく感じる。誰かー、看病しておくれー、温かいスープを飲ませておくれー、開け夏への扉ー、そう思って自室の扉を開けたその先は果たして元いた国の家の玄関だった。うわーん、何だこれー、熱にうなされて幻覚でも見てるのだろうか。そう思ったけれど確かにここは私の家だった。ええいああええ? どういうこと? 混乱していると嗅ぎ慣れた我が家の匂いに自然と涙が浮かんできた。嬉しい。帰ってこれたんだ。何が何だかわからないけれどやったー、でもこれホテルの部屋からも出られないし、どうすんの。どうなってんの。どうなっちゃうの。私はテンション爆上げの状態になっていた。多分これはあれだ、私の魔法が発動したんだ。私の魔法は自分でもよくわからなかったけれど、部屋と部屋を繋げる効果もあったのかもしれない。完全に起こったままの理解だけれど、今はそれでいい。とりあえず家族がいるかもしれない部屋を確認しよう。うん、大丈夫、扉から細く漏れる光は依然としてそのままに誰かいそうでいなそうな雰囲気を醸し出している。お母さんお父さん私は元気でーす!と近況報告して、今は急いでテレビをつけた。時刻は午前11時過ぎ、ワイドショーがやっている時間だった。チャンネルを回す、回す、回す、回す。どのチャンネルも同じ話題だ。それは聞かせるさんの国からの被害情報。どこそこの刑務所が襲われたとか、誰それが連れ去られたとか。魔法狩りを正当化する話や、聞かせるさんの国に攻め込む話が。うん、消そう。どうでもいい。見なかったことにして私は一度ホテルの自室に戻って扉を閉めた。そしてもう一度開く。するとそこはホテルの廊下で、さっきのが夢幻ではないかと心配になって、次は家の自室に出ろと祈って開けてみる。するとそこは家の自室で。つまり私の祈りがキーとなってホテルの部屋と家の自室を繋げているのだと理解するほかない。こんな単純なことだったのかと驚きで言葉もない。いや、じゃあ今なら祈りさえ通じればどんな部屋にでも通じることができるのだろうか。むふふ、私はノワの浴室に出ることを祈って扉を開けた。するとそこは、
「え、な、なんで」
「ノワ! 何で本当にぐはっ」
「で、ででで、でてくださいっ」
顎先にノワの湿った掌底をくらい仰け反る私。ゾンビだからないと思ったのに何で本当にお風呂に入ってるんだという疑問は口にできず、そのまま扉を閉められてしまった。でもまあいいものが見れた気がする。一瞬だったけど何かそうとてもいいものが。
「これは、いける!」
と、謎の自信を身に付けた私は熱に浮かされた頭で急いでみんなを自室に招待することにした。




