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もう少し待っていて。@柿本英治

「あのさ、わたし、英治くんの何なのかな?」


「え…?」


 文化祭が終わってから始まった通常授業。その日の放課後にそんなことを花咲さんは聞いてきた。


 いや、それは僕が聞きたいけど、聞けないし聞かない。


 けど、チャンスだ。



「彼女だよね。それなのに何で二日間とも出ないわけ? みんなに可哀想なんて言われたんだよ!」


「…? お昼にメッセしたけど…遅かったよね…やっぱり…」



 彼女の都合の悪い時の返信はいつだって翌日の朝だ。多分夜は本彼氏くんと二人か、自問自答しているんだろう。


 事実、文化祭もそうだった。



「あ、それは、その、ちょっとお友達とお話してて…そのごめんなさい」


「ああ、そっか.…僕、楽しみ過ぎて熱でちゃったんだ。ごめんね。情けないよね。やっぱりさくらとは───」



 これくらいなら擦りもしないか。


 この頃にはどうやったらキレるんだろうこの人、なんていつも考えていた。


 彼女はモテる。


 学校ではたくさんの男女に囲まれていた。

たまに苦い顔をする事があって、その時はすぐに僕のところに来ていた。


 だからこの頃には学校内でのていのいい壁役なんだなと思うようになっていた。


 偽彼氏にそんな利用の仕方があるのか。


 本当に初めての事ばかりだ。


 それに気づいたら、僕はそれを叶えてしまう。無視する事は出来ない。彼女の辛い顔は見たくない。


 ただただ都合の良い男。


 それが僕なんだろう。



「あ〜いいの、いいの! 辛い時にごめんなさい! 身体はもう大丈夫?」



 そして、僕の無茶苦茶な行動をただただ許す、優しいし、酷い女の子。


 それが花咲さくらさん。



「もう……大丈夫だよ。それに、休んで良かった。思いついたから」


「? 何を?」



「さくらの幸せを一番に考えたことがさ、その、今までのお詫びというか…まあ待っててね」


「え。あ、うん! え〜何だろな〜なんか嬉しい!」



 彼女はまるで名前のように、花咲く笑顔で笑った。


 超可愛い。


 片想いには最高の女の子だ。


 だから、大好きな気持ちと惨めで最高にカッコ悪い振られ方を。


 両方きっちり揃えるから、もう少し待っていて。

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