だってこんなに好きだしね。@花咲さくら
「いいね」
「でしょ? 今度絶対見に行こうね」
今私が話しかけている男の子は柿本英治くん。
わたしの念願叶っての初彼だ。しかも彼からの告白付きだ。
高校二年、始業式の日。公園の桜の木の下で思いを伝えてくれた。
後で聞けば、わたしの名前に因むために、半年待ったそうだ。
何それ、めっちゃ嬉しいんだけど。
彼は物静かで、良く人気の無いところでぽつんといる事が多い人だった。
それに気づいたのが一年の冬。そこから何か気になって見てしまう自分がいた。そこから自然と話しかけたりして、彼との交流が始まった。
一度彼の懐に飛び込めば。思ってもみないような安らぎがあった。
心に傷を持つわたしを急速に癒してくれる何かがあった。
そして、遂には告白されることになった。
彼との交流は、好意は、あったかくて、心地よいものばかりだったから、精一杯可愛いらしくOKの返事をした。
だけど最近何かおかしい。わたしを見つめる眼差しは変わらない。
けど諦観みたいな、達観みたいな。そんな目をたまにするようになっている。
嘘告なら長いし。
わたし、飽きられたのかな。
でも彼にはそういうアプローチはしていない。
身体の関係なんて気薄。やらせたら捨てられる。だから彼とはそういうことはまだしないし、彼も求めてこない。
そういう目で見ない優しい眼差しの彼の横は、ただただ心地良かった。
付き合ってから気づいたけど、こんな事は今まで初めてだった。
心が擦り切れになった初恋とは何もかも違い過ぎた。
ギラついた目で見てくる他の男子とは何もかも違っていた。
でもそろそろ。
わたしの誕生日には良いかなって思う。
だってこんなに好きだしね。