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犯人さがし  作者: タッチ
1/8

第一話 犯人探し

 ーーこの世に罪人など必要だろうか?


 いや、いらないだろう。

 罪を犯したいとも思わない。


 だから時々思うのだ。


 彼を罪人にした犯人は()なんだと。



 ◇



 理想に近づくたびに思う。

 これは長くは続かない。


 自分のことだからよくわかる。

 このメッキは()がれだす。


 すぐに腐敗(ふはい)して真っ黒に


 つらい現実にもどるなら

 ここで終われたら、、と思う。



 ーー誰が書いた日記だろう。


 続きがある。

 ともかく読んでみるか?


 次のページをめくる。



 強い不安のせいだろうか?


 町を歩くと人の声がとがる。


 なぜか悪口だけを言っている。

 すこし前から世界は真っ黒だ。


 向こうから人がくる。

 じゃまだ。


 だが、相手はよけようとしない。

 仕方なくよける。

 

 だが、少しおくれて相手もよけた。

 お互いよけたため、結果的にまたよけなくてはならない。


 イライラしながら、またよける。

 だが、またその先をふさがれた。


 まただ。

 また道がふさがれた。


 、、なんだ、そういうことか。

 結局、私のじゃまがしたいのか。


 やつは、素知(そし)らぬ顔でどんどん近寄ってくる。


 いっそ刃物でも持ちあるくか? それがいい。

 そうすれば、さすがによけるだろう。


 私が子供みたいな顔だちだから、なめてるのだ。


 きっとそうだ。


 やっと家に着く。

 イラつきで、手がふるえる。


 家のカギがとりだせない。


 玄関のドアを蹴りあげる。

 ようやく少し落ち着いて、無事カギをあける。


 家に入る。

 疲れきっている。

 目をとじる。


 やっと1日が終わる。


 明日、目が覚めなければいい。



 ふむふむ。

 よほど歩くのがヘタなやつらしいな。


 何度もじゃまするヒマ人などいない。

 こいつの勘違いだろう。


 勘違いやろうの、なんとも()に落ちない文章であるはずなのだ。


 だが、、これは、なんとなくなんだが、少し興味がわいた。


 また、次のページをめくる。



 夜道を歩いていて人がまったくいなかった。

 これからは夜道だけを歩くのはどうだろう?


 人が居ないなんて素晴らしい。

 何とも快適、、と思いかけたところで、誰もいないはずの道がふさがれる。


 視線を上げると、黒い影のようなものが電柱に浮かんでいた。


 どうやら幻覚が見えているようだ。


 思わず、笑ってしまった。

 ここまでするのかと。


 少しして、笑ってしまった自分がイヤになる。

 本当はイヤなはずなのだ。



 とりあえず、こいつには幻覚が見えるらしいな。

 また、次のページをめくる。



 歩くだけでもこの通りだ。

 たった飲み物一つ買うでも、疲れきる。


 すれ違う人は自分をバカにしているように感じる。

 ガマンしてやり過ごす。


 家に着いて、またドアを蹴りあげる。

 部屋に入って言葉にならず叫ぶ。


 とうの昔に玄関のドアは(ゆが)んでいる。


 逃げてばかりの人生だ。

 じゃまがお似合いなのかもな。


 また少し笑ってしまう。


 ......



 ふーん。

 まだ途中だったが、次のページをめくる。

 少し興味がなくなってきた。



 なんというか。

 さっきと似たような話だったり、急に人生だのと、まとまりがないんだよな、、。


 自分が書いたことを覚えてないのかな、って、、、、あれ?


 俺の感想が書いてある??


 なんで??



 え??

 前のページに戻る。


 



 何も書かれていなかった。

 さっきまでは、書いてあったのに。


 どこをめくっても、その日記は白紙だった。


 本は内容より、読んだページ数に快感を覚える俺だ。


 自分の仕事の成果を奪われたようで、少しガッカリだ。


 しかし、不思議な日記だ。

 この世にこんな日記などあるはずがない。


 あと、ここはどこだ?


 記憶にない場所に、不思議な日記、、。

 まさか!? これが今流行りの異世界転生というやつか!?


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、違いますよ。ちゃんと日記は書けましたか?」


 この部屋には窓があり、そこから部屋をのぞくオッサンに話かけられた。


 こんな笑い方をするやつを、前の世界では見たことがない。

 いよいよ異世界転生な気がしてきた。


「まったく。ここにきて2ヶ月。

 これでは本当の精神疾患者のようではないですか。

 やれやれです。

 私との取引を忘れてしまっては困りますよ?」


 オッサンはやや冷めた口調で言った。


 異世界転生でなければ、何だというのか?

 さっきの日記のことといい、このオッサンを問い詰めてみることにしよう。

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