表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】学園の二大王子がクラスの天然女子に興味を持ったようです。ってそれ俺の彼女っ!!  作者: 路地裏の茶屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/88

天然カップルの舞台準備

『今日の一冊』にて当作品が紹介されることになりました。 

掲載期間は1/10 (火) 14:00 〜 1/24 (火) 13:59となります。

この作品を読んでくださっている皆様のおかげです。ありがとうございます。

https://syosetu.com/issatu/

「着替えるのって難しいな」


 シャツに袖を通し、時計を確認する。時間的にはちょっと心もとないな。

 ネクタイに苦心していると、ドアがノックされた。


「イックン。着替えられた? どう『いけそう』?」


 日葵のようだ。先に着替えて髪をセットしていたはずだが……。


「ああ、()()()()かな。そっちは終わったのか?」


 バーンと景気よく扉が開かれる。いつものことだが、ドアに優しくしたげてください。


「終わったよ。どう、ヒヨちゃん、可愛い?」


 明るい黄色のパーティードレスだった。髪型はハーフアップにされ、フワフワした髪型は元々が天パの日葵にとても似合っている。

 ドレスは一見すると明るすぎる色だが。ベルトで腰を絞っているので胸が強調されて体のラインが良く見え、それが落ち着いた大人びた雰囲気を演出している。薄く施された化粧が少しだけ少女を大人にしていることも理由だろう。


 つまり、めっちゃ可愛い。


 だけど、素直に言うのは癪……まぁ、今日くらいはいいか。


「可愛いよ。悪い子には見えないな」


「ニヒヒっ。なんか大人ごっこみたいだね。ネクタイしてあげる」


 慣れた手つきで日葵がネクタイを締める。呼吸が聞こえる距離感で数秒の静寂が、お互いの動悸を伝えてしまいそうだ。最後に鏡を確認して身だしなみを整えた。

 時間は10時を過ぎたころ。今日の催しは深夜まで続く予定だ。二人でリビングまで行くと、すでに他のメンバーは準備ができているようだ。


「準備できたわね。じゃあ行きましょうか」


「ハハハ、樹君。少しはスーツに慣れたようじゃないか。だが、娘との距離が近いぞ」


「もう、お父さん。今日は忙しいんですから、そういうのは終わってからにしてください」


 晴彦さんの背中をおす咲月ちゃんは銀色のパーティードレスであり、透ける生地に刺繍がほどこされているセクシーなデザインだった。うん、絶対に中学生には見えない。

 全員で外に出ると、タキシード姿の森重さんが慇懃に礼をして迎えてくれた。


「お待ちしておりました。皆様」


「あら、シゲさんはお父さんの所に行くのかと思ってたわ」


「……御大は皆さまを守るようにとのことです……本日の()()()を近くで拝見させていただきます」


「アハハ、大丈夫だよシゲさん」


 日葵がニコニコと車に乗り込み、皆が後に続く。最後に乗り込もうとすると森重さんと目が合った。

 深い皺がさらに深くなり、優しい笑顔になる。


「日葵様は良い表情をされるようになりました。ありがとうございます」


「アイツはもともと、よく笑う奴なんですよ。今日は、よろしくお願いします」


「そうですな。では責任を持ってお送りいたします」


 前に乗ったハイエースではなく、見るからに高そうな高級車でビル街へと向かう。

 車内は静かだった。ここまで来れば、やることを頭の中で反芻するしかないしな。

 ほどなく到着する。まず男性が降りて女性に手を貸すのがマナーだ。日葵の手をとって先に進む。ここからは計画通りにやらないとな。


「あぁ、待ちたまえ樹君。これをあげよう」


 晴彦さんから渡されたのは手に収まる程度の小さなスプレー缶だった。


「超小型のパイクリームを詰めている。好きに使えばいいよ」


 まるで、物語のキーキャラクターのような余裕のある態度で晴彦さんがどや顔をしている。


「いや、普通にいらないですけど。邪魔ですこれ」


 邪魔すぎる。普通に返品したい。コンパクトでスーツの内ポケットにいれても違和感ないというこの無駄な高性能さが逆にうっとおしい。


「なんだと。急な旅先でもパイ投げできる逸品だぞっ!」


「そんな需要あんたにしかないからなっ!」


「もう渡したもんねー。じゃあ葉香さん、咲月、行こうか」


「はいはい。日葵、イックン。パーティー、楽しんでね」


「うん。わかったよ」


「はい」


 日葵と一緒に()()()のエレベーターへと向かう。

 作業員用の通路に入ると、俺の着替えが用意されている。従業員の配置もバッチリ把握しているからな。昨晩の内に仕込みは終了している。


「早着替え、朝の練習では『ギリギリ』って言ってたけど大丈夫?」


「俺は本番に強い主義なんだよ。ほら、主役はステージに上がりに行け」


「ニヒヒッ。じゃあ、待ってるね。イックン」


 時計を確認。ここから一分で着替えて、協力者と合流するまで二分でいかないといけない。

 日葵は笑顔でドレスの裾を揺らしながら次の階へ上がっていく。

 

 幹久は俺達を無視して自分の話を進めようとするはずだ。だったら、俺達を無視できなくしてやる。

 茶番には茶番でやり返す。


 ただし。


「俺達の茶番の方が、絶対に面白いぜ」

ブックマークと評価ありがとうございます。ポチっていただけたらモチベーションが上がります。よろしくお願いします。

感想も嬉しいです。いつも楽しく読んでいます。



ハイファンタジーでも連載しています。よかった読んでいただけたら……(文字数100万字から目を逸らしつつ)嬉しいですっ!下記にリンクあります。



『奴隷に鍛えられる異世界』

https://ncode.syosetu.com/n9344ea/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓ハイファンタジーでも連載しています↓

奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
[良い点] ふんわりとした雰囲気に覆われた水面下のひりつき、をデコろうとするなパイ投げ!w
[良い点] 素直にヒヨちゃんを誉めるイックンはデキる子。 [気になる点] >「もう、お義父さん。今日は忙しいんですから、そういうのは終わってからにしてください」 これが誰のセリフか分からない。 お…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ