天然少女の悪だくみ
「うん……重い…」
背中というか後頭部の違和感で意識が浮かび上がる。目を開けると自分の膝が見える。
座ったまま寝たのか……ということはここは日葵の部屋……。
そしてこの後頭部の柔らかさは、考えるまでも無く日葵の……。
一瞬の躊躇を振り切って、その柔らかさかから逃亡を計る。なぜか体にかかっていたタオルケットが翻り、バサりと音を立てた。
「ふぃ……うーん。あっ、おはよーイックン」
起き上がってニヘラと表情の溶けている日葵、寝ている女子の部屋にいる男子がいる場合どうなる?
はい、犯罪です。なんで、そのまま寝てんだ俺!?
「お、お早うていうかだな。俺がいるのは、日葵を部屋まで送ってだなっ」
「ん? わかっているでっす。私が寝たから、見守ってたら寝ちゃったんでしょ」
伸びをしてパチっと目を開けた日葵はすでにスイッチが入っているようだった。
「いや、そうだけどさ……いやいや、それでも俺が悪い。下心は全くないんだ」
「むー。それはそれで、ヒヨちゃんの乙女心が傷つくな」
無防備に笑う日葵を見ていると罪悪感が溢れてきて気まずい。
「いいから、部屋に戻って着替えてくる。今日はデートなんだろ?」
振り返らずドアを開く。この顔の火照りを悟られる前にこの部屋から逃げ出した。
※※※※※
樹が部屋を出て行く数時間前、日葵はその手の温かさで目が覚めていた。
「イックン。……えへへ、本当にイックンは私の王子様でっす」
ベッドの脇で、背を向けてくれている樹の頭を横になったまま抱きしめる。
「いつも迷惑かけてごめんね。私はイックンに何ができるかなぁ」
そのまま、樹の頭を撫でながら再び日葵は目蓋を閉じたのだった。
※※※※※
着替えて下に降りると、すでに日葵は朝ごはんの準備を始めていた。時計を見るとまだ朝の5時50分ほど早すぎだ。
「おはよー。今日はベーコンに目玉焼き、サラダとご飯でご機嫌な朝ごはんにするよ」
「そりゃあいいな。……野菜切るくらいなら手伝うよ」
手持無沙汰だしな。時間つぶしの手すさびには丁度良いだろう。
「うーん。キッチンは聖域だけど、今日は特別でっす。ありがとね」
「そりゃどうも、このレタス切ればいいのか?」
「先に洗って、水気をキッチンペーパーで拭いてね」
「わかった」
そんな感じで、二人で他の全員分の朝ごはんを作り(途中で咲月ちゃんが入って来たので、手伝いは譲った)バスの時間に合わせて、屋敷を出る。
バスの中には数人しかなく。街まではすぐだ。
「ねぇ、イックン」
白いワンピースにサンダルを合わせ、髪をアップにまとめた日葵がこっちをみた。
「なんだ?」
「ヒヨちゃんは悪いことを考えています。悪い子でっす。イックンはどうする?」
上目遣いにこちらを見る。まぁ、なんとなくこの展開は予想がついていた。
幹久のことも踏まえて、俺達がどうするか、一緒に歩いて悩むのもデートなのだ。
「この状況でデートなんておかしいと思ったぜ。……日葵が悪い子だって? だったら俺も付き合うよ。二人で悪いことしようぜ」
パァっと表情が明るくなる日葵。さて、ほどほどでストップをかけないとな……。
錬や青柳のことも考えながら、日葵の悪だくみに加担する。
うーん。あれ? 大丈夫かこれ?
更新が遅れてすみません。少し体調を崩していました。
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ハイファンタジーでも連載しています。よかった読んでいただけたら……(文字数100万字から目を逸らしつつ)嬉しいですっ!下記にリンクあります。
『奴隷に鍛えられる異世界』
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