天然姉妹と夏の水着
走って来る赤井に唖然としてしまったが、その後ろを見るとすでに数人の女性を連れている。
……アイツ、女性恐怖症のクセになんでこんなところに来てんだ?
「助かったぜ樹。皆、ゴメン。ダチと遊ぶからさ」
肩に手を回すなと言いたいところだけど、すでに大分顔色が悪い。流石に見捨てるのは可哀そうか。
「あ、あぁ。そうだな」
引きつった笑みで女性陣を迎えるが、目線が全然合わない。完全に赤井をロックオンしてるな。
「えー。じゃあ、そっちの人も一緒でいいからさ」
「そうそう……連れ込めばどうにでも……」
「よく見たら……イケル!」
つ、強い。全然諦める気配が無いぞ。夏の海水浴場ってのは人をここまで強気にさせるのか。
赤井が頭を下げて耳打ちをしてくる。
「樹。どうする? ちょっと距離感ができたから。今なら走って逃げれるぞ」
「人を待ってるんだ。逃げるなら一人で行ってくれ」
「お前、こんな場所で一人で移動してみろ。すぐに囲まれちまう」
「何で来たんだよ……」
「雑誌で穴場だって書いてたんだよっ!」
「だからって多少の人はいるだろ」
小声で言い争ってうちにも、水着姿の女性達がじりじりと寄って来る。
確かにこれは怖い。赤井狙いなのはわかっているが、それでも圧倒されてしまう。
どうしたものか思案していると。後ろから元気な声が響く。
「お待たせーイックン。何してるの? 楽しそうだねっ」
「時間がかかってすみません。……それで、この人達はいったい?」
着替えが終わった日葵と咲月ちゃんだった。
姉妹共にワンピースタイプだが、日葵は胸元を下品に感じない程度に露出し、明るい色調で体のラインを強調する水着で活動的な印象。咲月ちゃんは真っ白なフリルの着いた可愛らしいデザインでスレンダーな体系に合わせたデザインとなっている。オーダーメイドの水着というだけあって、二人共似合っており、特に日葵は普段の子供っぽい雰囲気とのギャップにドキマギしてしまう。デザインを合わせたパーカーを羽織っており、前は開いているようだ。……日葵は前を締めずらいということもありそうだが。
っと。思わず見とれてしまったが助かった。合流して、さっさとこの場から脱出しよう。
「あぁ、ちょっと話してただけだ。早く移動しよう。すみません、ツレがいるので……赤井?」
「あー。赤井君でっす。どしてこんな所にいるの?」
「お知り合いですか?」
無言の赤井、どうしたんだコイツ?
二人が接近すると、それまで詰め寄って来た女性陣が一歩下がる。
「え、うわっ。何あの子達……」
「美人……化粧無し……」
「E……F! 馬鹿な! あの身長で……なんてスタイル!?」
おお、卜部姉妹に圧倒されているようだ。まぁ、確かに咲月ちゃん中学生に見えないレベルで美人だもんな。日葵は……水着になると、色々と凄い。普段はその言動ゆえにあまり意識しないけど、日葵って童顔ではあるが美少女と言っても過言ではないんだよな。
なんにせよ。今がチャンスだ!
「赤井、行くぞ。……大丈夫か?」
さっきから電源が切れたロボットのように、うんともすんとも言わない。もしかして、ストレスが飽和して動けないのか?
心配になったが、再起動したようにぶるぶると動き始めた。その視線は日葵にくぎ付けになっている。
「卜部……いや、み、水着…。樹が……」
バタンッ。
「赤井、おい、赤井!」
「わわっ。赤井君」
顔を真っ青にした赤井が、盛大にぶっ倒れたのだった。
なんなんだコイツ!!
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