お節介は見つかる。
「ふぃー。汗かいたね」
神社でお参りを済ませた後、商店街側とは逆側の道を歩いて街へ戻る道中。
少し走ったからか、二人共かなり汗を掻いてしまった。先ほどの金髪がまだいるかも知れない。
ちょっと残念だけど、そろそろ戻るか。
「帰って、シャワーでも浴びるか」
「ズコーッだよ」
しごく真っ当なことを言ったつもりだが、日葵は大げさに手をコケるような仕草をする。
そんなことをしてると本当に転ぶぞ。
「ここは、九州なんだよ。どこ行っても温泉があるんだよ!」
「そうなのか?」
「たくさんあるばい。というかお屋敷のお風呂も温泉を組み上げてるよ」
「じゃあ帰ればいいじゃん」
「銭湯に行きたい気分なの。イックンと一緒にフルーツ牛乳を飲みたいっ!」
両手を胸に当てて力説する日葵。言われてみれば、九州には別府温泉とか湯布院とか有名だ。この街は別に温泉を観光地にしているわけでもないが、探せばあるのかもな。
「どこか銭湯を知っているのか」
「任せるでっす。えと、近くにスーパー銭湯があるよ。せっかくだからそこに入って、フルーツ牛乳を飲もうよ!」
「着替えが無いだろ?」
「銭湯で洗濯と乾燥できるよ。その間は浴衣を借りればいいのでっす」
「なるほど、そう言われると行きたくなるな。よし、温泉行くか」
銭湯は結構好きだし。というわけで、一応周囲を警戒しながら銭湯へ向かう。
昔ながらというよりは、ちょっと頑張ったタイプのスーパー銭湯だ。夏休みということもあって家族連れも多いようだ。金髪は……いないな。流石に催しから一週間も前に現地入りするようなゲストはそうはいないとうことか。
その分、金髪の気持ち悪さが際立つけどな。
「おぉー。イックン、家族風呂とかもあるよ。私達で入れば混浴だよ」
「バカっ。はしたないぞ」
チョップ。まったく、何言ってんだ。……ちょっと考えちゃったじゃないか。
背が低いので汗ばんだワンピースの胸元、その深い谷間に視線が吸い込まれそうになる。
「ムギュ、いたくなーい。じゃあ、お風呂からあがったら。売店に集合ね、一時間後でいい?」
「わかった。じゃあ後でな」
「うん。またね」
日葵と別れて、浴衣に入浴セット一式をレンタルして湯舟を目指す。
一時間もあるし、ゆっくりと……。
「おいおい」
ワイワイガヤガヤ。
なんと、男湯の更衣室には多くの中学生。なんかの部活の遠征のようだ。耳に入る会話はから野球部のようだ。
風呂から溢れんばかりの密集度である。落ち着けないぞ。
ため息をつきながら体を洗って湯舟につかるが、喧噪は収まることをしらない。マナーが悪いというわけではないが、ちょっと疲れる。
こりゃ、ダメだ。適当に浸かってさっさと出よう。
「……また、静かな時間に場所を見て温泉を探すか」
結局カラスの行水程度しか入らなかった。もったいないが、まぁ幸いゲームコーナーとか漫画や雑誌を置いてある場所もあるみたいだし、日葵が来るまで時間をつぶしとくか。
浴衣姿でプラプラと歩いていると、目の前に人影。
「……おいおい」
「すまないが、少しを話をしたい。職員室前では逃げられたからな、今回は目を離さない」
銭湯というイメージからは対極に存在するような、潔癖な印象の青い王子様が立っていた。
しかも浴衣姿である。髪は湿ってないし、ただ着替えただけか?
「なんでこんなところにいんだよ」
「こちらの台詞……いや、考えればわかったことだったか。まさか、君のような血筋の無い人物が卜部と一緒にいるとはな」
「……手短に頼む、日葵が戻ったらフルーツ牛乳を飲む約束をしたんだ」
「……わかった。そこのベンチでいいだろう」
浴衣姿で逃げるわけにも行かず。大人しくついていくことにした。
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ハイファンタジーでも連載しています。よかった読んでいただけたら……(文字数100万字から目を逸らしつつ)嬉しいですっ!下記にリンクあります。
『奴隷に鍛えられる異世界』
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