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【本編完結】学園の二大王子がクラスの天然女子に興味を持ったようです。ってそれ俺の彼女っ!!  作者: 路地裏の茶屋


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二大王子、現地入り

「ふぃー、やっと着いたか。熱いな……それにしても、この辺は意外とデートスポットが豊富なんだな」


 白いTシャツに黒のブラウスを羽織ったラフな格好で、観光の雑誌を片手にブツブツと呟いているのは学園の二大王子の片翼である赤井 錬である。180㎝を越える高身長に端正な顔立ちゆえに周囲の女性たちの視線が集まっており、本人がそのことに気づけば顔を青くするだろうが、今は他のことに集中しているようだ。


 実家が取ってくれた高級ホテルにチェックインしようと、フロントを訪れると目の前には見知った顔があった。思わず雑誌を握りしめる。


「……なぜ、君がここにいる?」


「俺の台詞だっ!」


 学園の二大王子、そのもう一人である青柳 玲次が目の前に立っていた。 

 ボーダーのシャツに五分袖のジャケット、下はジーパンといういで立ちは、年相応であり普段の彼を知っているものなら違和感を感じるだろう。線が細い立ち姿で、中性的な顔立ちを不服そうに歪ませている。何かを読んでいたのか、手に持っていた本を鞄に突っ込んでいた。


「僕は仕事だ。太い取引先の催しがあるからな。そこに呼ばれているんだ」


「……俺もそうだよ。っていうか絶対それって龍造寺のイベントだよな?」


「やはり、君も呼ばれていたか。随分早めに現地入りするじゃないか」


「……」


「……」


 睨み合う無言の時間。お互い全てを察していた。

 主催側である日葵は早めに福岡に来るはず、それを狙って自分も早めに福岡に入る。

 できるだけ早く現地入りすればそれだけ現地を調べることができる。

 『仕事』など言い訳に過ぎず。お互い日葵狙いなのは見え見えだった。どちらともなくため息をつき、フロントの椅子に腰かけた。


「お互い考えることは同じってわけか。同じ女に惚れた仲だ。それもやむなしか」


「彼女は有能で、血筋も良い。青柳の家にとって有益と判断したまでだ」


「お前まだそんなこと言ってんのかよ」


「何とでも言え……まぁいい、こうなってしまったのなら、力を貸してもらおう」


「力? おいおい、俺らは恋敵だろうが」


 怪訝な顔をする錬を見ながら玲次は眼鏡のズレを直す。


「その卜部のことで、今は協力する必要があるということだ。さっさとチェックインしてこい」


 疑問符を浮かべながら、言われるがままに錬はチェックインを済ませフロントに戻って来ると、玲次はフロントにあるごみ箱の所に立っていた。錬を見るとテーブルに戻り座る。

 玲次はスマフォを取り出し、テーブルの上に置いて錬に差し出す。画面には写真を投稿するSNSアプリが表示されていた。


「ん? これがどうしたのか」


 投稿された写真は、やや古い町並みを背景に軽薄そうな男の自撮りだった。


「その画像に映っているのは、『道明』の長男だ」


「あん? 『道明』って言うと、総合商事の『道明』か。確か、長男が問題児で次男が跡取りになったって噂があったな。へぇ、コイツがその長男か」


 学園でも情報通を自称している錬は、業界の情報も積極的に調べている。道明商事の長男の悪評は畑違いの業種である錬の耳にも入るほどであった。


「知っているなら話は早い。道明の長男は女性関係で度々問題を起こしている。その画像は今日投稿されたもので、背景はここからそう遠くない海沿いの街だ」


「近くにいんのか……話が見えてこないな。何が言いたいんだ?」


「家の情報部門が調べたんだが、そいつは次男から跡取りの座を取り戻すために、色々と画策しているらしい。『道明』にとっても龍造寺御大の孫娘は魅力的というわけだ。画像のコメントを読んでみろ」


 画面を下にずらすと『今から、お姫様をナンパします。余裕っしょ』とコメントが書かれていた。錬の額に青筋が浮かぶ。


「狙いは卜部ってことかよ。許せねぇ! 何してんだ、さっさとこの街へ行くぞ。卜部もそこにいるんだろ?」


「すでに車を呼んでいる。あまり大事にはしたくないからな。『赤井』と『青柳』で同時に牽制すれば、多少は効果があるだろう」


「ならさっさと行くぞ。この投稿は数時間前だぞ。卜部はすでに九州にいんのか?」


 玲次の腕を掴み移動しながら矢継ぎ早に錬が質問を投げかける。


「あいつが使う空港は俺達と同じだろう。ファーストクラスの予約状況を調べている。今日の早朝の便が貸し切りだったからな。多分それだろう」


「……お前、ストーカーみたいだな」


 若干引き気味な錬の指摘が入ると、玲次は掴まれた腕を振りほどいた。


「うるさい。来ないなら置いていくぞ」


「おい、待てって」


 眉間に皺を寄せて先に進んだ玲次を錬が追いかけていく。ホテルのテーブルには錬が読んでいたデートスポットが書かれた雑誌がそのまま置かれており、それと同じ雑誌が隠すように近くのごみ箱に捨てられているのであった。

ブックマークと評価ありがとうございます。

感想も嬉しいです。


ハイファンタジーでも連載しています。よかった読んでいただけたら……(文字数100万字から目を逸らしつつ)嬉しいですっ!下記にリンクあります。


『奴隷に鍛えられる異世界』

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奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
[良い点] 王子達の無駄な努力が面白い。
[一言] 赤青さん来ましたね。デートスポットを探しているあいだに思い人は彼氏とデートへ。 そして前回のチャラ男さん跡取りでは無かったんだな。まあ、性格を見たら納得しちゃうもんなー 今回も面白かったで…
[一言] 更新お疲れ様です! 何やら不穏な雲行きですね、、、 先が楽しみです! しばらくリアルの方でテストがあるので更新されても見れないかもしれませんがテストが終わった後の楽しみにとっておきます! 更…
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