例えるなら小さな向日葵
「それで、学生会を手伝うのか?」
帰り道、斜め右上を見ながら恐る恐る問いかける。本心では行って欲しくない。
だって、あの二人は誰がどう見てもモテる。もちろん日葵がどうなるって話じゃないが……なんていうか、もやもやがあるのだ。
……いやまぁ、言葉にすればコンプレックスに嫉妬なんですけどね。
しかし、この感情を日葵にバレるのはめっちゃ恥ずかしい。男にはかっこつけたい気持ちがあるのだ。
「うん。手伝うって言ったからね。あっ、明日の学食は一緒に食べれないかも。昼休みも呼ばれているんだよね」
「……ラウンジでそんな話してたか?」
「今、Iine(SNSアプリ)に連絡来きたのです。ほいっ」
差し出してくるスマフォの画面には、可愛い動物のスタンプ付きで明日の昼と放課後に学生会室へ来るようにと書かれていた。
というかこれって赤井 錬の連絡先わかっているってことだよな。
「日葵、その連絡先を知っていること、他の女子とかには言わない方がいいぞ」
「そうなの?」
ふわふわのポニーテールが揺れる。振り返る彼女は夕日を受けていつもより黄色い。
花に例えるなら向日葵か、それにしてはチビすぎるか。
「あぁ、血の雨が降るかもな」
二人の王子に対することでの女子の嫉妬は、冗談ですまない事態には発展する。
噂では、青柳の近くの席を取るために、クラスの席替えで権謀術策が飛び交ったりとか、バスケ部である赤井に近づくために、わが校のバスケ部のマネージャー倍率は20倍を超えるとか。
非公式の親衛隊が存在するとか、うん、マジだとは思いたくないな。
「ちょっと、見てみたいっ!」
「なんでだよ」
ガチで釘を刺して止めておく。頼むからやめてくれ。
「それにしても学食行けないなら、明日はお昼はお弁当だね。せっかくだからイックンのも作っておくよ。うん、気合入った。七難八苦だね」
「使い方違うと思うぞ。でも弁当はいいな。日葵は料理上手いから、楽しみだ」
「早起きと料理は私の特技だからね。じゃあ、帰りに商店街寄ろうよ」
「わかった。割り勘な」
「やったー。ちょっといいもの買いますです」
「やめろバカ」
飛び跳ねる俺の彼女はやっぱり、可愛い。
……だからこそ、明日が心配だ。
「俺って小さい男だ」
「私の方が小さいよ?」
些細な呟きも彼女は逃さず拾い上げる。
ニパッと笑う彼女を正面から見ることができず、ただ頭を撫でた。
さて……明日どうするかな?
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