天然少女とハンバーグ弁当。
お昼休み、弁当が入った鞄を持って日葵と西棟へ向かう。
「今日はお手製合いびきハンバーグです。イックンが割り勘してくれているので、ちょっといいお肉を使ってまっす」
「そりゃあ楽しみだ。だけど、わざわざ弁当まで持って何をするんだ」
「お昼も業務のお手伝いです。パソコン室で作業します。後、放課後に向けて学生会室の前へ棚を運びます。ふふん、PC室の鍵と一緒に、西棟の準備室の鍵を借りれているので、二人きりでお弁当が食べれるよ」
チャリチャリと鍵を振る日葵、二日目にして学生会の権限を使って好き放題しているんじゃないか?
「なら先に弁当にしようぜ。腹減ったしな」
「賛成です。期待してねっ。今日は自信作だからね」
というわけで、PC室横の準備室へ入る。中は使ってないパソコンやプロジェクター。椅子などが置かれていた。日葵は手提げ鞄からシートを出してペシペシと叩いてならす。
ホコリっぽいが、ちょっと楽しい雰囲気だ。
「ほら、イックンどうぞ」
「あぁ、準備良いな」
「イックンには働いてもらうからね、報酬前払いです。じゃじゃーん」
そう言って、差し出されたのは分厚いハンバーグが中央にデンと置かれ、周りに野菜が並べられた男子高校生の食欲を刺激する美味しそうな弁当だった。
「おお、デカい」
「250グラムです。私の小さいけど、イックンのはご飯も大盛りです。最後に仕上げっと」
取り出されたのはトマトケチャップ。これはまさか、ハートとか描くのか、描いちゃうのかっ。
多少恥ずかしいが、まぁ、二人きりだし問題なしだ。むしろありきたりだからこその良さというか王道を行くというか、ちょっとドキドキしてきたぞ。
「旨く書けたよ。エヘヘ」
「おぉ、どれどれ」
そこには無駄に達筆な字体で『七難八苦』と書かれていた。
……どうツッコミを入れるか悩んでいると、隣のPC室から声がした。この時間は鍵がかかっていたはずだが……。
「わわ、イックン。ここでご飯食べているの秘密だからシーッってしないとだよ」
「わかってるって、むしろ、隣に入ったの誰だ?」
倉庫室の壁は薄く、隣の部屋の音がわりと聞こえる。耳を澄ませると、かなり乱暴に椅子を移動させて何かしているようだ。
「最悪っ! どうして私が呼ばれないのっ! 玲次様も錬様も間違ってる。何のために、あの女をハメたと思ってんのよ!」
甲高い声がここまでしっかりと聞こえた。おいおい、普通じゃないぞ。
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