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第三部 2章 恐怖! 国立魔法剣術学院 014



 四人は屋上より、扉を開けて校舎の中へ侵入する。

 息を潜ませながら、忍び足で先頭を進む双子。その後ろを、アルルにルビーが続く。

 そこは三階で、アルルがつい昨日来た学長室がある階だ。


 フレイにフレアは、慎重に気配を探る。

「やっぱり……流石にこの時間までいないわよね、お父様は」

「うん、そうだね。気配は……全く無いものね」

「アハー、お父さんですカー?」

 双子の背後より、声をかけるルビー。その声は特に忍んではいない。


「ああ、そうそう。ここの学校の学長さん……校長みたいな人、かな」

 それには答えられると、アルルがさらに後ろから、口を挟む。

「アハー、なるほど。そうなんですネー……でも、こんな時間まで居る可能性があったんですカー?」


「あんた達……もうちょっと、静かに喋りないさいよ。まぁ、そうね……」

 嗜めるフレイに、フレアが続きを話す。

「お父様は忙しい方なんです。家に居た記憶は、ほぼ無くて……学院に入ってからは、私達も寮生活というのもありまして。実際、お父様が日頃どうしてるいるのか……全く知らないんです、それで……」

「フレア……そう、ね。そうなの。だから、一応の確認をしておきたかった。ってのはあるわね。実際、ずっと学院(ここ)に居るのかって。……ここに住んでるって、噂になってたから院生の間で。ふふ……」

「うん、そうだねお姉ちゃん。あ、これは別に七不思議には入って無いです。ただのありふれた噂です。ふふ……」

 双子はどことなく寂しそうに笑って、気配の無い学長室を見つめる。


 それから、学長室の扉には鍵が掛かっている事を確認して、双子は見合う。

「フレア、鍵掛かってるって事は……」

「うん、お姉ちゃん……そうかも」

「アハー、何ガー?」

「もしかしたら、図書室も鍵が掛かって入れないかも……」

「アハー、なるほど。まぁ、それなら他の噂を確かめましょうカー。今日一日で、全部を済ますつもりもありませんしネー。アハハー」

 お互いに頷き合う三人。

 次の七不思議の候補である、校舎の謎か夜泣きババアを探そうという事になった。


 アルルは無言で三人に付き従うが、この真夜中の侵入が今日だけで終わらない事に、それなりのショックを受ける。


 四人は一通り校舎内を見て回り、人が居ない事を確認しつつ。図書室や音楽室の施錠具合も確認。やはり、扉は施錠されていた。

 そこから一階にある教室(扉は施錠できる造りでは無い)に、四人は集まり今後を話し合う。


「それじゃあ次を決めましょうか。幻の校舎か、夜泣きババアね。フレアは何か情報持ってる?」

「うーん、情報ってほどじゃないんだけど。ええと……この学院は、大昔に起きた戦争の最中に、焼き討ちにあって一回全焼してるんです」

 フレアは間を置いて、ルビーに視線を移す。

「アハー、戦争の最中……ですカー。まぁ、それはいいか。ささ、続きヲー」


「あ、はい……で。戦後、同じ場所に建て替えを行ったという記述が歴史の教科書にあるんですが。それが、何十年も前の教科書には違う事が書かれていた……らしいんですよ。正確には、その昔の教科書には学院が焼き討ちされたという記述が、そもそも無いんです……」

 フレアは、瞬きをせずに訥々(とつとつ)と語りだす。


「学院にとって、重要な歴史のはずの焼き討ち事件が。そこだけの記述が……無い、らしいんですよ。不思議……じゃありませんか? なぜ? なぜ、学院にとっての事件を、昔の教科書は省いていたのか……」

 そして、段々と調子を暗くするフレア。その様子に、フレイは息を飲む。

「嘘っ……そんなの聞いた事無い。ほ、本当なのフレア?」

 フレアは、姉のその言い分に返答するでもなく、目を虚ろにしたままさらにトーンを落とした。


「実は、省いていたのではなく。新たに書き加えられたのだとしたら……? なぜ? なぜ、書き加えられたのか……」

 そこでフレアは話を区切り、姉のフレイに向き直った。瞬きをせずに、虚ろな瞳のままで。

「ちょ……フレア? え……?」

「そこだぁっーーーーー!」

 フレアは急に大きな声を出した。


「いやぁぁぁあぁぁっーー!」

 フレイの絶叫は、学院中に響く。

 それを見て妹のフレアは、くつくつと肩を振るわせ、やがて。

「あっはっはっは、ごめん! お姉ちゃん、ごめん」

「フレア……あ、あんたねぇ〜」

 自身の両肩を抱いて、少し涙目のフレイは、妹を睨みつける。


 ーー怪談かっ。

 それをただ見ていたアルルは、そう思わずにはいられない。


「アハー、アッハッハー。中々面白かったですヨー。ヨキヨキー。フレアちゃんは、吟遊詩人の素質があるかもですネー」

「あは、ルビーさん……ありがとう御座います。友達とたまに、こういう話を出し合って誰が怖いかって遊びをしてるんです」

「フレア……あんたねぇ、私は怖いのダメだって知ってるのに」

「あはは、ごめんお姉ちゃん。なんか、真剣に聞いてるお姉ちゃんの目を見てたら、なんとなく路線を変えたくなっちゃって」

「あんたねぇ……」


 女性陣が、わいわいと(アルルの目からはそう見える)しているその側で。小さな英雄はたまたま、窓から流れ星を目撃する。

 アルルにとって、別に見られて良かったなどの考えは無いものの。早く帰らしてくれないか、などと星に願いをしてしまうのだった。


 大まかに今の女性陣のやり取りを見るに、アルルはもう、七不思議などどうでも良くなってしまう。最初から、それなりにどうでも良かったが……

 短い嘆息をして、椅子から立ち上がり。両手で伸びをしながら、教室のあちらこちらを所在なげにぶらぶらするのだった。


 小さな英雄は、そこで見つけてしまう。

 否、辿り着いてしまうのだ。どうしようも無く……

 バッドステータスの影響は計り知れない。

 ーー因果改変:不利益。誰かの知られたくない秘密は、運ステータスの改竄によって、小さな英雄の前に晒される。


 ごうん。と、いう音と共に、教室の床から地下へと続く隠し階段が出現した。


 本来であれば、特殊な手順を踏まなければ開かないはずが。

 アルルにかかれば、適当にそこらを物色していただけで、偶然にもその特殊な手順を満たしてしまう。


「「え……?」」

 双子は驚きのあまり、声にならない。

「アハー……アッハッハー。さすがは、アルルさん。いやはや……まいったナー、アハハー。サスアルすぎる。サスアルすぎてクサー」

 ルビーは手を叩いて、小さな英雄に賞賛を贈る。


 ずくり。

 アルルは眼前の光景に、先ほど空を飛んだ時に感じた不安が蘇る。

「え、嘘……だろ?」

 地下はヤバい。

 その思いが、一斉に押し寄せ。ライライローの街で見た、あの教団の館が脳裏に浮かぶ。

 ーーなんだ、なんだ!? どういう事だ? まさか……そんな。

 そんな逡巡をよそに、フレイにフレアはアルルの隣へ。


「ちょっと……何よ、コレ」

「うそ……これが、まさか……校舎の謎、なの?」

 地下からの冷たい風が、アルル達のいる教室へと流れ込む。


 夜とはいえ、真夏の空気は蒸し暑い。だから、少しの運動でもじっとりと汗をかくだろう。

 しかし、地下から流れる空気は、ひやりとした冷気を孕んでいた。


 フレイとフレアは、その冷気に身震いをする。

 それは寒い故の反射なのか。それとも、何か途轍もない事態が起こっている事への恐怖なのか。


 双子にはそれが、どちらなのかの区別は出来なかった。

 


 


 

 

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