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第三部 2章 恐怖! 国立魔法剣術学院 011



 以下、サイ・ダート国立魔法剣術学院の七不思議についての説明。


 一つ、音楽室の謎。ーー勝手に音を奏でる楽器がある。

 二つ、図書室の謎。ーー夜な夜な本を並べ替える光る幽霊がいる。

 三つ、校庭の謎。ーー大昔の戦場の跡地らしく、地下には大量の死体が埋まっている。

 四つ、校舎の謎。ーー現実には出入り口のない、幻の校舎がある。

 五つ、夜泣きババア。ーー真夜中に現れるババア。泣く所を見ると死ぬ。

 六つ、泣き鬼。ーー悲鳴をあげて襲ってくる鬼。見られた者は死ぬ。

 七つ、泣き別れの潮騒。ーー校庭を貫く河川が、血の様に赤くなるのを見た者は死ぬ。


「な、なんで……後半三つは“泣き”で、同じなんですかね? 必ず死ぬなら、見た人はいなくなるんじゃ……」

「知らないわよ、そんなの。私も思ってたけど……昔から言われてるんだから、そう思うしかないじゃない。大方、味付け弱いなって思った昔の生徒が、パンチ出す為に足したんじゃないの」

 気になったことをアルルは思わず聞いたが、フレイは身も蓋もない事を言った。


「アッハッハー、お二人とも甘いですネー。チッチッチ」

 ルビーは得意げに、指を振ってみせる。

 ーーあ、出た。ゾンビの探偵グセ……

「火の無い所に、煙は立ちません。よって、一見バカバカしい噂であっても、中々に馬鹿にできない事って多いんですヨー、ばかだけニー。アハハ」

「どこにかかってるんだ、それ……」

 一応のツッコミを入れるアルル。


「うーん、ルビーさんの言う事も最もだと思います。私も気になって、噂の出所を探った事があるんですが……」

「フレア……あんた、そんな事してたの」

「あはは……そうなのー、ちょっと気になっちゃって。でも、いつから出始めた噂なのか。調べても全然分からなかったの。そもそも、学院(ここ)って夜には入れないじゃない、学則でもそうだし。夜に入れないから、結局確かめようもないの」

 双子は七不思議について、ルビーほどの熱量は無い様にアルルには見受けられた。

 結局、手合わせが目的なのだろうと解釈する。


「えーと。で、これからどうするの?」

 ここはルビーに任せた方が良さそうだとアルルは考え、彼女に話を振る。

 彼女が納得するまで、何も言わずに従おうと。

 そして、その後空いた時間で双子所望の手合わせをすれば、満足してこれ以上関わり合いにならなくて済むかも知れない。

 そんな、穴の空いた皮算用を小さな英雄は立てる。


「アハー、そうですネー。まずは一つ目から、行きますカー。フレイちゃんに、フレアちゃん。音楽室とやらに案内をしてくれヨー」

 はーいと、元気よくフレアは先導して、校舎に入っていくのであった。


「あんた、ナーサ様とどういった関係なのよ」

 フレイは道すがら、アルルに聞いてくる。

「え、どういう? ただの……図書館の利用者と、案内や説明してくれる人? ですかね」

「ふーん……」

 つまらなそうに鼻を鳴らすフレイ。思った回答を得られなかったのだろう。


「そう言えば、ナーサさんの封印とか指定ってなんですか?」

 アルルは前々から気になって、聞きそびれていた事をここぞと思い口にする。

「え、何!? そんな事も知らずにナーサ様と、話してたの?」

「あ、はい……そうですね。ウシロロに来たのも、ここ半年位なので……」

「え、あんたウシロロの人間じゃないの?」

「え……はい。そうです」

「へぇ。えっ? そうゆう事、なの……」

 何を納得したのか、フレイは腕を組んでしばらく黙りこくった。


「まぁ、いいわ。封印指定ってのは、連邦法で定める……まぁ、そうね。簡単に言えば……人の強さに基準を設けるのよ。その基準からはみ出した、強い一個人を認定するの」

「はぁ……」

 気のない返事を、ついしてしまうアルル。


「はぅぁっ! じゃないわよ。もう……ちゃんと、分かってんのあんた?」

「あぁ、はい……」

 アルルに似せたつもりで顎をしゃくる仕草はスルーして、アルルは相槌を打つ。


「で、えぇ……そうね。その基準からはみ出た人は、一個人が持てる戦力を逸脱しているという事で、連邦機関に帰属しなければならない。っていう法律があるのよ」

「へぇー……」

 ナーサが強いって事なのかなと、なんとか解釈するアルル。


「そして、連邦の為に働く事を義務付けられるの。一生ね……」

「一生……? じゃあ、ナーサさんはずっと図書館に居続けるって事ですか?」

「まぁそうね……何かしらの有事が起こるまでは。ーー早い話が封印指定ってのは、飼い殺しね。人を逸脱した人を、野放しにしない為の」

「そ、そうだったんですね」


 ーー人として逸脱? だから、隔離されて。いや、そんな風に見えなかったけど……ん? だから友達も作れず、あそこでずっと一人。なのか?

 と、そんな事をアルルが思った所で、音楽室に着く。

 校舎二階の、一番奥の部屋だ。



 結論から言うと、そこの音楽室で特に変わった事象は発見できなかった。

 金管楽器に木管楽器や弦楽器、そして大きなパイプオルガンが部屋の中央にあるだけの、普通の音楽室なのだ。

 一応で、方々四人で手分けして調べたが、それらしい痕跡すら無い。

 すぐ見つかる様なら、とっくに誰かが見つけてるよなとアルルは思ったが、思っただけに留める。


 アルルは、ふと置いてある弦楽器を触った。

 ポロリと弦を鳴らす。が、これが自分の知っている楽器ではない事は分かっている。

 調律は狂っているだろうし。そもそも、この世界の音階が、元の世界の音階と同じかどうかすら分からないのだ。

 原理はほぼ同じだろうから、調律を直せば弾けるのかも知れないが……


「何、あんた。それ弾けるの?」

 フレイは、常にアルルを見ているのか。と、思われる位、アルルの一挙手一投足に言葉を投げかけた。

「ああ、いや……弾けないです」

 そしてアルルは、逃げる様に違う楽器を調べるフリをした。

 ……

 …


「アハー、何も起こらないし、怪しい所もないですネー。今のとこロー」

 ルビーは、音楽室の椅子に腰をかけて、両手を上げて伸びをする。

「そうですねぇ……まぁ、あくまで噂ですから」

 フレアは苦笑いをして、自身も近くの椅子に腰掛けた。


「そうね、ちょっと詰まってることだし。気分転換に……アルル。手合わせしなさい!」

 と、フレイが提案。

 何が気分転換で、なんで手合わせをしなくてはいけないのか。アルルにはとんと謎であったが、覚悟はしていた。

 取り敢えずの七不思議調査をしつつ、アルルに付いて回って機会を窺っていたのだろう。


「分かりました。どこでやりますか?」

 やれやれと思いつつ、アルルは仕方なしに応じる。

「もちろん、昨日の修練場で……」

 アルル達は、調査を一旦止め修練場に行く事となった。


 修練場での出来事は、語るまでも無い。

 終始、一撃も当てられないフレイがそこに居ただけであった。

 負けん気の強さから、何回も挑戦し。最後の方はフレアも混じって、一対二の構図になったが、それでも双子はついぞ一撃もアルルに入れる事は叶わなかったのだ。


「あのー、もういいんじゃないですか? そろそろ、お昼になりますし」

 アルルは、息切れもしないままに言い放つ。


 双子は揃って、息を切らしてその場に膝をつく。

「アルル、さん……すごい、です。はぁはぁ……やはり、連邦の上層部は、はぁ。こ、こんな人達が……はぁ。お、多いんでしょうか?」

 フレアは、息も絶え絶えでそう言った。

「いや……ボクは、その」ーー連邦の上層部? なんだそれ、知らないって。


「あんた……くそっ。はぁはぁ……悔しい、くっ……」

 フレイは、その大きな瞳に涙を溜める。本当に、負けず嫌いなのだ。

「どうしたら、いいの。アルル……くっ。教えなさい、よ……」

 意地とプライド、そして現実が激しくぶつかり合って、折り合いがつかないままに、本音らしい事をアルルに問う。


「そうですねぇ……もっと速く、動けばいいと思いますよ」

 アルルは真面目に回答する。


 それを聞いて双子は、持っていた模擬刀をがらんと落とす。

 一部始終見ていたルビーは、あちゃーという顔をして、もうお昼だし休憩にしようと提案するのだった。



 


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