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第三部 2章 恐怖! 国立魔法剣術学院 003



「すみません……無理矢理な形で、了承させてしまって。その……」

 妹のフレアは、申し訳なさそうにアルル達へ向けて謝る。

 客人扱いをして、街の案内(実際は宿屋の)という体を採った訳は。人だかりにまで発展して、注目されてしまった事が原因ではあるだろう。


「あ、いえ。はは……」

 アルルは、なんとも言えない表情で愛想笑いを浮かべる。

 三人と一匹は、フレイとフレアの双子に付いて行く形で、進んでいる最中だ。


「本当にすみません。私たちの家は……かなり有名で、その。厳しい家柄ですので。……揉め事などを極力、起こしてはいけないのです」

 フレアは、初めてこの街に来ただろう人間には、全く関係の無い話なのは承知の様で。少し、恐縮するように喋った。

 ーーまぁ……きっと、よそ者には分からない(しがらみ)はあるんだろうけど。なんかなぁ……なんか、なんだかなぁーなんだよなぁ。

 と、アルルは内心で一人ごちる。


「フレアは気にしすぎよ。いいじゃない……私達だって、色々……自由にしたって。ふんっ」

 姉のフレイは、気の強そうな瞳を尖らせて、明後日の方向に首を振る。

「お姉ちゃん……そんなだからっ! お姉ちゃんが、そんなだからっ。ーーそんな感じで方々で、揉め事起こすから……」

「え、ちょっとフレア……?」

 妹のフレアは、目に涙を溜めて姉を見据え立ち止まった。

 拳は強く握られている。


 ーーえ、うわぁ。なんか……。この口悪い子ってやっぱり問題児なのかぁ。


「アハー、まぁまぁ。ーーまた、ここで注目を集めたいんですカー?」

 ルビーが言った至極真っ当な意見に、アルルは深く頷く。「うん、うん」声にも出ていた。


「はい、そうですね……すみません。ごめんねお姉ちゃん……」

「……私も、ごめん……」

 会話なく一行は歩いて行く。もはや、アルルには何処へ向かっているのかも分からない。


 と、気まず過ぎて目のやり場に困ったアルルは、取り敢えず空を見たり、そこら辺の建物。街に随所に流れる川を見る事にする。

 そこで、ふと疑問に思った事を口にした。

「この川の水って飲めるのかなぁ……」

 ぼそっと言っただけであったが、聞こえていたらしい。

「え、あんたそんな事も調べてこなかった訳ぇ? ほんとボンクラね。ここの川は排水路で、飲める訳ないじゃない。ま、飲んでもいいけど……お腹壊しても知らないんだから」

「あ、そうなんですねぇ……」

 ふふふ、と乾いた笑いを添えるアルル。胸中では、気にしない気にしないと、連呼していた。

 隣のアイーニャは、中指を立てている。アルルはそれを、優しく折り畳んだ。

 

「生活用水路としては、別ラインで各家に供給されているんです。主に屋上からなんですが……カラットの家屋は、基本は隙間なく建てらてれるんです。」

 フレアが、説明を補足してくれる。

「アハー、なるほどナー。ウシロロと違って、建物の間隔が極端に無いとは思ってましたヨー」

 感嘆の声をあげて、ルビーは楽しそうに建物を見渡す。意外と、異国の旅行を楽しんでいる様だ。

 猫のマーコは、ただじっとアルルを見据え。そして、一行の後について行く。


「そう言えば、あんた達は何が目的でカラットに来たのよ?」

 目的も聞かずに、逆に何処に向かっていたのか聞きたくなったアルルだったが、ぐっと堪える。

「あぁ、ボクはそのー。魔法剣術学院という所に、少し用事が……」

「「えっ!?」」

 フレイとフレアは、同時に声をあげた。


「え、なにあんた! もしかして、転入生か何か? 聞いてない!」

「や、……違います」

「じゃあ、なんなのよ」

「え……そのぉ」

 アルルはたじろぐ。フレイの話し方は、色々と情報が省かれていて、中々に整理に時間がかかるのだ。


「お姉ちゃん、待って。その、ごめんなさい……まず、自己紹介からしないとですよね。なんだかんだ、どさくさに紛れて怠っていました」

 フレアには、アルルの混乱が伝わったのか。もしくは、筋道立てる必要性を感じたのか。器量の良さが、そこかしこに見受けられる。

 姉の方とは真逆な印象を、アルルは感じてしまい。ぼそっと、良かったと言ってしまうぐらいだった。


「私は、フレア・イーベンゲェルと申します。サイ・ダート国立魔法剣術学院に籍を置く、魔法剣士の学生です……ん、お姉ちゃんっ」

 恭しく頭を下げるフレアに反して、フレイは突っ立ったままだ。

 肘で促されて、面倒くさそうに続ける。


「……フレイ。フレイ・イーベンゲェル……痛っ! お、同じくよ。わかるでしょ? もう、それで学院の一番偉い人がこの街の名士で、私たちの父よ。これでいい?」

「もう……お姉ちゃんたら」


 アルルは、苦笑いをしつつ自分達の自己紹介をする。

 アイーニャは無口なフリ(アルル的には懐かしくもある)をし続けた為に、アルルが伝えた。


「それで、あんたはなんで学院に用事があるのよ……転入じゃないならさ」

「ああ、ええと……今、歴史を学んでて。それで、ある人にお勧めされたんで旅行も兼ねて……ですかね」

「歴史……ねぇ。そんな殊勝な奴には見えないけどなぁ」

「……は、はは」

 喉が乾いている様に感じて、アルルは水かお茶が飲みたいなと思った。


「お姉ちゃん……、その。アルルさんごめんなさい。お姉ちゃんは、本当に口が悪くて」

 ーーそれは知ってる。

「でも、学院に用事があるなら、宿も近場がいいですよね。心当たりあるので、そこまで案内しますね」

 ようやく目的までが伝わり、そこまでの案内に入る。

 

 どうやら魔法剣術学院は、カラットの街でも外れの方にあるらしいのだ。

 河川は広がって、外周に行けば行くほど、細かくは分かれていないので。広い面積を必要とする建造物は、必然的に外周寄りに建てられるという事らしかった。


「あんた……アルルって言ったっけ。あんた、何で歴史なんて調べてるの?」

「えぇ、まぁ伝承とか伝説に興味があって……調べてます」

「だから、なんで興味があるかって聞いてるのよ。ほんとボンクラね、あんた」

 ーーもうこの子と喋りたくないなぁ。


 隣のアイーニャが(おもむろ)に、フレイの鼻の穴に目掛けて人差し指を差し込んだ。

「ふがっ!? ちょっと何! 何すんのよっ」

 ばっとアイーニャの手を払う。

 が、アイーニャは突っ込んだ指をフレイの服に押し当てて、ぐりぐりと拭くのであった。

「え、何!? ちょっとやめなさいよあんた! きゃーもうっ!」

 アルルはそっと、アイーニャをフレイから遠ざけ。

「そういうのは止めようね、アイーニャ」とだけ言った。

 ルビーは、ニヤニヤしながら「ボンクラのアルル……ボンルルー。アハー」と、ぶつぶつ言っているだけである。


「でもアルルさん……その、観光でこの街はわかるんですが。いくら古い歴史ある学院でも、お勧めするというのは……中々思い付く事じゃないと、思うんですよ」

 フレアは、先程のやり取りには介入せず。そうアルルに問いかけた。


「ああ、それはですね……その学院の卒業生って言ってた人が、ボクにお勧めしてくれたんですよ。勝手知ったるっていうんですかね……」

 アルルは、ナーサを思い浮かべ。懐の内ポケットに入れている、預かった封筒を思い出す。

 ーーまぁ、お勧めって言ったのは方便で、封筒(これ)を学院長に渡すのが目的だったんだろうな……きっと。うまく使われてるのかなぁ……別にいいんだけど。


「へぇ……ここの卒業生、ですか……。え、失礼じゃなければ。その人のお名前はわかりますか?」

 フレアは神妙な顔になっている。

「ん? ……ええと、ナーサ・ミ=ショーオって女性の人なんだけど……知ってる人ですか?」


「「なっ、ナーサっ!?」」

 どうやら聞き耳を立てていたらしい、フレイも揃って同時に驚く。

 ーーああ、なんか双子っぽいなぁ。

 と、そんな感想を抱くアルルであった。

 

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