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日の出国 序章

作者: Karyu
掲載日:2009/06/20

これは、序章パートのみです。


 旧世紀より数多に存在する妖怪や幽霊の類は、怨念を宿いし人間の熟れの果てだと言われてきたが、真実は違う。


 この世に蔓延る俗に言う魑魅魍魎の類は全て、元人間ではなく、人間の願望なのだ。願望……それは具現化されずに熟成された人の想い。その強気思念に惹かれ、様々な思惑が巻き込まれやがて命を宿す。


 それが、我々が古来より記してきた俗物の正体……それら悪性無上の下種を討伐するのが我々、【ART】なのである―――。















現代:


「百円玉一枚で何でも撮ります! 想い寄せる気になるあの子の写真! 自分の作品を展示用として出す写真! 参考にしたい資料用の写真! どんな写真でも一手に引き受ける! 俺が部長の写真部、【アルト】いかがかねー!?」


 昼休憩の三年生ようの廊下……そこで一人の少年が、一見年季の入ったような古びた黒い厳ついカメラを首に掛けながら大声を上げる。


 そんな彼の姿はもはやこの校舎の名物ともなっており、用の無い者はその横を普通に通り越し、用のある者はその生徒の前に立ち止まる。


 しかし、今日だけは違う。今日はいつに増してそいつの声は大きく、しかし透き通るような単語が耳をくすぐる。


 そう、今日は入学式。進級した二年・三年生による部活勧誘が隆盛となるこの瞬間、我が校の写真部【アルト】の部長は勧誘などそっちのけで商売・・を続けている。自棄に張りきっているのは今日は普段に比べて人が多いからだろう。一瞬期待してしまった自分が馬鹿だったのだ。


「義人、お前も少しは手伝いな! さあ、どうだねー!? 写真はいらんかねー?」


 僕は嫌々立ち上がりながらも、部長より手渡されたパネルを腕一杯に持ち上げ、アピールするように左右交互に体を向ける。所謂、宣伝だ。


 部長の周りを囲むは高校あがりたての新顔ばかり……興味津々そうな奴もいれば、ひやかしをどこぞで吹っ掛けてやろうかとか考える無謀な一年坊主、何か言いたくとも部長の威勢に気が引けてしまっている女子、はたまたまったく違った意味でここに訪れていたりする邪魔者など……自分の視界に映るすべての人間の表情を読み取れる能力に嫌気が差してくる。


「部長、もうすぐ昼ですよ」

「なんだ義人……お前もう腹が減ったのか」

「いや、そういうことじゃなくて……」


 まあ、今この人に何を言っても無駄だろう。写真に命と野心を捧げる、この異人には……。


 仕方が無く、廊下のほぼ中央で「写真部【アルト】写真一枚百円!」と書かれたレッテルを掲げながら、窓の外を見つめる。


『青いなー』


 そんな言葉しか脳裏を掠めない……。やばい末期症状かもしれない、と思いつつもすでに部長の大声は爽やかなBGMとしてしか耳を震わさない。


 時々、こうやって現実世界と自分の世界の中間点に思考を飛ばすことがある。居心地がいいのかもしれないし、それとも自分の中途半端な性格がこうやって素に現れるのかは謎ではあるが……しかし、決してこんな自分を否定しようとは思わない。


 だから、僕には願望なんてものはない。あるとしても中途半端で他人にとっては普通で、傍から見ればどうでもいいようなこと……そんなのはすぐに叶えられるさと鼻で笑われてしまうようなささやかな願いや望みなのだ。


『ま、今の願望っていったら、コレが少しでも早く終わってくれさえすればな……』


 そんな事なのだ。


 そして窓の向こう側へと放たれている視線は、一面青しか無かった風景に一羽のスバメが飛び込んできたことにより自我を現実世界へと呼び覚ました。


「義人、撤収だ、撤収!」

「へ……?」


 そんな素っ頓狂な答えを出したことに若干歯噛みしつつも、部長が急いでこの場を逃げ出そうとする理由は耳を劈くノイズによって遥かに明確になった。


「こらーーー! また、お前らかーーー!!」


 廊下の端を見れば駆けつけてくる一人の男教員。いかにも体育会系なその教師は、なぜか頭がつるっつるの禿げ坊主。なんでもトレードマークは頭頂に生える一本の気高き毛なのだそうだが、僕にはアホ毛にしか見えない。


 それでも、このままでは捕まることがわかっているので、自分も部長に続くようにこの場から逃げ出す。新入生達は呆然とそんな僕達の逃走劇を眺め、二、三日もすればこの写真部の噂を耳にして寄り付かなくなる奴も増えれば、その逆も増えることになるだろう。


 しかし、今は一刻も先にとんずらすることが最優先事項だ。


 僕は、昨日部長命令で作らされたダンボール箱の一面を切り抜いて完成させたパネルを片手に、この清らかなる入学式行われた校舎を奔走した。















 あなたは言われたことは無いだろうか? あるいは、考えたことはないだろうか?


 いかにも平凡な日常……。楽しいけど惰性で続く毎日。変化もたまにあるけど、それは本当に稀でしかない。こんな自分は一体どうなるんだろうか? など……。


 しかしそんなものは思春期の若者が連ねる日常における挨拶のようなもので、ただ毎日繰り返すだけのものである。


 答えなど、教えてもらっては意味などないではないか。


 自分で見つけなければ自分の為にならないではないか。


 それをコツコツと努力して見つけていなければ、ただの平凡な毎日で終わってしまうよ。


 そんな戯言も聞いたことがある。こんなもの、人に言われた時点でお終いなのだ。自分のしたいこと、やりたいこと、成し遂げたいこと……全部は人の願望でしかない。


 それらの願望を口頭で言われ、どう答えれば良いのかなんてわかるはずもない。答えられるほど、自分は人間もなってないし。それに答えなければそれはそれで相手になってない人間だと思われるのがオチだ。


 ただ否定、肯定を繰り返す世の中で、人々は中間を選んでしまうから中途半端な人生を送る……。世の中はきっちり別れているのに、その世界に住む人々は境界線の間を綱渡りしている。


 こんなステージの上で、願望なんて抱けるはずもない。でも、だから平凡なんだとは考えたくても、脳はそう感じてしまう。


『はぁ……空は青いな………』


 古典の授業中、窓際の席にいる僕は、自然と視線を傾けて蒼穹を眺めながらただ呟く。


 平凡だと思わせる風景……でも、確実にその時、変化は生じようとしていた。


 別に願った訳でも、望んだ訳でもないのに、ソレはちゃっかりとこの平凡な世界を壊しにやってきたのだ。少なくとも、僕の日常を……。

思いつきでアイデアを隠し持っていた脳が書き上げてくれました。


序章とつけているのは、もし続きを読んでみたいな〜と思われる読者様がいたら、頑張って書いてみようかな? と思わせくれるぐらいの魅力をこの小説に感じたからです。


もし続きが気になる方は、あなたの願望を感想として送ってください。


              写真部【アルト】幽霊部員より

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