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ザッシュゴッタ  作者: みの狸
第二章

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片付けの合間

 

「それじゃあ、建物の中を案内するね」


 うれしそうにシゲさんが調理スペースから出てくる。住居兼喫茶店になっている建物は意外に広い。階段を昇ると壁がないだだっ広い空間に物が雑然と置かれていた。


「物が多いですね。シゲさん、ここに住んでるんですか?」

「これね。この建物の前の持ち主のものなんだぁ」


 前の? そう言われて、散らばってるものを改めて見ると、女性が好きそうな可愛い雑貨が混じっている。シゲさんのではないだろうな。これは。


「この家、息子が居抜きで買ったものなんだけどね。前の持ち主がカフェの設備や備品だけでなく、家具や生活用品みたいなものまでほとんどのものを残していったから、まだ片付け途中なんだよね」


 他人のうちの片づけをするようなものだから大変なのは想像がつく。自分の部屋を片付けるのだって面倒なのに、家一軒分の片づけは気が遠くなりそうだ。


「大変そうですね。片付け手伝いましょうか?」

「いいのかい?」

「そのくらいしますよ。タダで貸してもらうだけじゃ悪いですから」

「じゃあ、頼もうかな」


 将さんも申し出に異議を唱える者はいない。こんないい場所を貸してもらえるのだから、片付けくらいいくらでもする。



「それじゃあ、使えそうなものと、使わなそうなものに分けていってくれる?」


 シゲさんの指示に従い、とりあえず、その辺に転がっていたものを手に取っては見たものの、片付けが思ったより難しいと気づいた。石の薔薇?こんなの何に使うんだ?使わないもの……でいいのかな?

 とりあえず使い道が分かるものからやろう。


「そうそう、ドラムや必要なもの、港町の倉庫にあるから運んでこないとね。今からちょっと行ってくるよ」

「え?店は?」


 シゲさんがいなくなったら、喫茶店はどうする気なんだろう?


「お客さんが来ることないと思うけど、もし来たら、なにか適当にだしてあげて」

「シゲさん?なにを無茶なこと言ってるんですか?」

「じゃ、お願いね。あ、赤鐘くん、運ぶの手伝ってくれる?」

「はあ、……いいですけど……」


 気ままなシゲさんが将さんを連れ出し車で出て行ってしまった。客、来ないといいけど……


「扉閉めてれば客も来ないだろうし、3人で片付けるか」

「そうですね。来ないですよね」


 伊与里先輩が言うなら来ないだろう。来ても先輩たちが何か作ってくれると信じよう。


「じゃあ、二階の片付けの続きを……、埃すごいな。掃除機かホウキ捜してくる」


 動くたびに埃が舞いあがる状況に音を上げた宮さんが一階に降りていく。


「物が多いな。前の住人は相当な趣味人だったみたいだな」

「そうですね。日用品より遊びや趣味で使うものが多い感じですね」


 どういう風に使うものか分からないものもあって仕分けに困ってしまう。

 島から出ていく時、いらない物は全て置いていったという感じなのだろう。雑多過ぎる。


「お!ウクレレ」


 無造作に床に置かれていたウクレレを伊与里先輩が手に取る。


「水鉄砲……、ボードゲーム、ダーツまでありますよ」

「色々あるな」


 先輩がウクレレのチューニングをはじめてしまった。片付ける気ないな。自分だけでも真面目に片づけしようとは思うんだけど、用途不明な物もあるから捗らない。これは何だろう?木の箱?ギターボディーくらいのサイズがあるけど。


「これはスピーカーでしょうか?」


 スピーカーかと思ったら、丸い穴が開いていて空洞だ。巣箱かな?


「お!カホンじゃねーか。パーカッションの一つだよ」

「楽器なんですか?どういう風に使うんですか?」


 巣箱にしか見えないのだけど。


「これ持ってろ」


 ウクレレを渡してきた先輩が、木の箱に座る。


「楽器に座るんですか?」

「疑いの目で見るなよ。こういう楽器なんだよ!見てろよ」


 そう言って木の箱の側面を叩き出した。

 なるほど、楽器だ。音に響きがあって、叩く場所によって音程もある。


「ボーっとしてないで、遠岳もウクレレ弾けよ」

「え?はい、………なんの曲をですか?」

「こういうのは、適当に楽しげなのならなんでもいいんだよ」


 適当にか……

 ハワイアンをイメージして、適当に、



 なんか楽しくなってきた。ウクレレってギターとはまた違った魅力があるよなぁ。


「………楽しそうなことしてんな」


 背後から恨めしそうな声が……


「オレが埃やクモの巣と格闘しながら掃除用具を探してた間、お前らは……」


 宮さんが階段を上がりきらずに半身だけだして、こちらを睨んでいる。


「ひ、弾きますか?」


 ウクレレを差し出すと、ゆっくりと近づいてきて黙って受け取った。怒ってる?


「いいだろう。オレのウクレレの腕を見せてやろう」

「別に見せなくてもいいけどな」

「遠岳は、そこにあるマラカス担当な」


 マラカスまであったのか。

 それじゃあ、適当に。


 ウクレレとカホンに合わせてマラカスを振る。



 南国の音楽って感じで楽しい!


「………お前ら」


 またおどろおどろしい声が……

 振り向くと、将さんが恨めしそうに、階段からこちらを見ていた。



 シゲさんと将さんが戻ってきたので、全員で片付けを再開。シゲさんに聞きながら順調に片づけは進んでいった。やれば、出来るものだな。ずいぶん片付いてきた。


「一休みしようか」


 片付けが一段落したところで、シゲさんがアイスコーヒーを淹れてくれた。みんながまったりと雑談をしている間に、レイくんに連絡を入れとこう。

 カウンター席から離れ、窓辺でスマホを操作する。

 レイくんからすぐに返事がきた。英語とともに、URLが記載されていたけど、なんだろう?

 URLを開くと、ジャクリーンさんの写真が画面に現れ、その下には小さな写真がずらりと並んでいた。


 どういうことだろう?レイくん、まさか母親の写真を見せたかったのか?


 ジャクリーンさんのSNSアカウントみたいだけど……。自撮り写真の他には服や小物が中心で、女性向けといった感じだ。その中に一つだけ他とは雰囲気の違う動画がある。そういえば、レイくんのメッセージにビデオがどうこう書いてあったな。これのことかな?とりあえず、再生っと。


…………あれ?この動画って


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