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ザッシュゴッタ  作者: みの狸
第一章
21/133

パンク

 

 学校の帰り道、自転車がパンクして押して帰ることになってしまった。原付が横を通り過ぎていく。

 バイクかぁ。いいかもなぁ。宮ノ尾さんもバイクに乗ってるって言ってたな。先輩の家に行くのも楽になるかな?でも、バイクって故障したら押して帰ることできるのかな?


「なんだ、兄ちゃん自転車パンクしたんか?」


 横からいきなり声を掛けられ慌てる。ツナギを着たおじさんが、タバコを(くゆ)らせながら店の中からでてきた。自転車とバイクが並んでおいてある。看板を見ると、柏手商店と書いてあった。はくしゅ?変わった名前の店だな。

 看板見ても何屋なのか分からない……。バイクと自転車の店でいいんだよな?


「うちなら、学生割引でパンク修理一か所なら500円、パンク箇所が複数ある場合は一か所に付き300円増しだよ」

「えっと、……じゃあ、お願いします」


 500円か。それなら払える。押して帰るの憂鬱だったから助かった。


「おう、コウイチ!お客さんだ!パンクの修理してやんなー!」

「………ああ、分かったよ」


 おじさんが声をかけると、店の奥から若い男がのっそりとでてきた。

 赤鐘さんほどではないが体格のいい、ガラの悪そうな強面のあんちゃんだ。年齢はボクとそう変わらないと思うけど、色々と経験値が高そうで、正直怖い。


「パンクっすかぁ」


 客だし大丈夫だよな。


「はい、お願いします」


 修理道具を持ってやってきたあんちゃんが、ボクの顔を見て止まる。


「ああ~、………んんん?」


 え?何?あんちゃんが(がん)つけてきた。

 なんで、客に眼つけるの?……目を逸らしたほうがいいのか?逸らさないほうがいいのか?威嚇してくる犬とは目を合わせないほうがいいらしいけど、人間の場合はどっちなんだ?


「おい、何やってんだ。コウイチ!お客さんに失礼だろっ!もういい。お前はすっこんでろ!」


 おじさんが見かねて、あんちゃんを店の奥に引きずっていってくれた。


「悪いね。息子なんだけど、どうにも愛想がなくて」


 愛想の問題じゃない気がするけど……。息子さん、完全に喧嘩を売ろうとしてた気が……

 お詫びだと言って、自転車屋のおじさんがタダでパンク修理してくれた。懐が寂しくなってたからある意味助かったけど、父親というのは、大変だな。


 ✼


 今日はどんよりとした雲が空を覆っている。雨が降るのか降らないのか分からない天気というのは厄介だ。

 教室に入るなり、中村が近づいて来て、メンチ切ってきた。またか……


「う~ん、どう考えてもな~。気のせいか。オーラが全然違うしな~」


 オーラ? 中村のやつ、オカルト趣味にでも嵌ったのか?


「でも、なんか似てる気がするんだよね」


 同じ中学だった田原さんまで近づいてきて、じっと見てくる。


「なに?」

「ん~、変なこと聞くけど、遠岳くんって、もしかしてさ」


 半眼になった田原さんが声を潜めて顔を近づけてくる。


「バンドやってたりする?」


 ………………え?


「え? なんで?」


 バレた? いや、別に隠してるわけじゃないからいいけど。何で、いきなりバレたんだ?


「あ~、やっぱり違うか~。そういうタイプじゃないよね。遠岳くんって」

「だよな~。遠岳に限って、バンドはないよなぁ」


 何も答えないうちに、田原さんと中村が勝手に否定して勝手に納得してしまった。オーラって何?


「気にすんな。他人の空似ってやつだよ。遠岳には無理なことくらい分かってるさ」


 何が分かったんだ?

 状況が全く分からないまま、席に着くと、少し離れたところにいる女子数人と目が合い、すぐに全員が首を振った。

 なんだ? 何かあったのか? 他にもチラチラ見てくるクラスメイトがいるけど、視線が合うと逸らされてしまう。

 まあ、伊与里先輩と関わるようになってから、こういうのは慣れたけどさ……

 モヤモヤはする。


 ✼


 家に帰ると、いつもは犬の寅二郎が大はしゃぎで駆け寄ってくるのに、どこにもいない。辺りを見渡すと、身を隠すように物陰から、じっと睨みつけてくる寅二郎の姿が。寅二郎、お前まで眼つけるのか……


「散歩、行くか?」

「うああぁん」


 駆け寄ってきた寅二郎の足元から、花柄の兎のぬいぐるみが転がってきた。耳が取れて綿が飛び出してる。壊してしまって気まずくて隠れてたのか。犬は分かりやすくていいな。人間はよく分からないことが多すぎる。



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