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ザッシュゴッタ  作者: みの狸
第一章

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歌詞

 

 ~会いたくて会えない 切ない気持ちに涙がこぼれる 君だけじゃない 白い翼を広げて飛び立とう 僕は会いに行くよ 星の海のその先 君の所へ 瞳を閉じないで 扉を開けて待っていて WOWWOWWOWWOWWOWWOWWOW~




「正気か?」

「なんか既視感がスゴくあるんですけど、なんですか。この歌詞」

「あああーー、仕方ねえだろ! 歌詞は今までカイリが考えてたんだから! 文句あるなら、お前らが作れよ!」


 真っ赤になってキレた伊与里先輩が無茶なこと言いだした。

 歌詞を作る? ……それは無理だ。こうなったら仕方ない。


「よく見ると王道を行く素晴らしい歌詞な気がしてきました。さすがです。先輩」

「おお、そうだな。そんな気がしてきた」


 赤鐘さんと視線を交わし、歌詞を褒め称える。


「お前ら、これっぽっちもそんなこと思ってねえだろぉ! これはボツだ。お前らが考えろ!」

「「ええ~~っ」」


 どうしよう。伊与里先輩を怒らせてしまった。このままだと、本当に歌詞を作ることになってしまう。


「歌詞を作れと言われてもなぁ。この曲って遠岳をイメージして作ったんだよな?」

「照れます」

「遠岳の声に合う曲ってだけだよ! 声に! 誤解すんじゃねえ!」


 何で、そんなムキになって声を強調するんだろう?


「確かに、遠岳に歌わせてみたい曲だよな。海里の声に合わせた曲とは違った感じで面白い」


 赤鐘さんが何度も頷いている。

 前の曲はカイリさんの声に合わせて作ってたってことか。歌うボーカルによって曲調を変えてるってこと? もしかして、伊与里先輩ってすごい人なのか?



 伊与里先輩が憤慨した感じでギターを弾きだす。その先輩の背後になにかいる。こっち見てる。毛むくじゃらの……。伊与里先輩ちの猫ちゃんかな? でも、いつも見かけている猫とは違うような……


「先輩のうち、猫増えたんですね」


 ずんぐりむっくりしていて可愛い。まだ子猫かな?


「は? ……ああ、子狸だよ。寺に住みついてるタヌキに子供が生まれたみたいで、境内をよくうろついて……、そういや、遠岳はタヌキみたいだよな」


 また、先輩が唐突に意味不明なことを言い出した。


「タヌキ? う~ん、そう言われるとそんなイメージか」


 赤鐘さんまで……。タヌキのイメージって意味わからないよ……

 子狸のほうに視線を向ける、逃げるどころか、なぜかこっちに向かってきていた。


「先輩! 子狸が徐々に距離を詰めてきてます!」

「バカ、目を合わせるな。うちのタヌキは檀家が甘やかすせいで人間慣れしちまって、目が合うと餌をねだりに近づいてくるんだよ」

「へえ、可愛いなぁ。あ、デカいのも出てきた。親かな?」


 伊与里先輩に習って目を逸らしているというのに、赤鐘さんだけ子狸をガン見してる。つい、気になって子狸のほうを見ると、大人のタヌキが後を追ってでてきていた。


「親が迎えに来たから大丈夫そうですね」

「うちのタヌキを甘く見るなよ」


 伊与里先輩が低く呟く。意味を考える間もなく、タヌキの親子が揃って迷いのない足取りで、こっちに向かってくるのが目に入ってきた。野生動物とは思えない堂々とした足取りだ。


「お腹が空いてるんでしょうか? でも、あげられるような食べ物は……」

「……アメリカンドッグだ! 狙いは、それっ」


 伊与里先輩の指摘に、残ったアメリカンドッグの袋に目をやると、毛むくじゃらがすでにいた。


「ああ、すでに抑えられた!」


 親子狸に気を取られている隙に、別の大人狸がアメリカンドッグの入った紙袋に近づき、奪い去っていってしまった。親子狸も反転して逃げていく。


「子狸は陽動か。思ったより知恵が回る」


 思わぬタヌキの強襲を受けて、脱力してしまう。まさか、タヌキに頭脳戦で負けるなんて……


「こうなったら、タヌキのことを歌にして、元を取ってやろうぜ」


 赤鐘さんが妙なことを言い出した。伊与里先輩が頷く……。賛同してるということか。歌にすると元が取れるという発想がよく分からないけど、音楽の世界はそういうものなのかな。

 真剣にタヌキのことを語りだした二人は本気のようだ。

 ……タヌキの歌を歌うことになるのか。



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