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ザッシュゴッタ  作者: みの狸
第二章

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エッグベネディクト

 

「この張り紙したの、誰だろうな」

「指紋とか取れねえかな?」

「脅迫して来てる奴だろうとは思うけど……」


 伊与里先輩が張り紙を裏返したり透かしたりしているが、何も見つけられなかったようで、宮さんに渡す。受け取った張り紙を持て余した宮さんが、ボクに渡してくる。


「脅迫者が島に来てるってことですか?」

「じゃないか。しかもオレらの練習場所まで把握済みときてる。調べがついてるってことだな」

「そうなると、やっぱり、怪しいのはジャクリーンたちだよなぁ」


 カフェに入っても先輩たちは、推理を続けている。


「けど、なんだって、遠岳の彼女なんて存在しないものを出してきたんだろうな?」

「……幼馴染の子たちを彼女だと誤解したんじゃねえか?」


 幼馴染のことをか……


「そういえば、モエちゃんといる時に、ジャクリーンさんたちに会いました」


 幼馴染たちといた時の状況を思い出すと、確かに誤解される余地はある……か?


「そうなると、怪しいのは、ジャクリーンと付き人の3人……」

「レイが船を降りてきた時にもいたよな。モエちゃんとナナちゃん」


 伊与里先輩の呟きに宮さんが補足する。


「レイとレイといっしょにいた男もってことか」

「バスマもフェスの時、幼馴染たちを見てるよな」


 将さんも新たに情報を追加する。


「……全員じゃねえか」


 伊与里先輩が嫌そうに顔をゆがめる。

 怪しいと思われる人物、全員が容疑者か……



「明日にでも、レイくんにアシスタントさんたちのこと聞いてみましょうか?」

「そうだな。レイが脅迫状の送り主ってことはないだろうし、敵の情報は少しでも仕入れといたほうが動きやすいからな」


 真面目な顔で頷く将さんだけど、口の端が上がってるから楽しんでるのが丸わかりだ。


「話はこの辺にして、新曲づくり始めるぞ!」

「おー、やるかー」

「やりますか」


 伊与里先輩が発破をかけると、将さんと宮さんがやる気があるのかないのか分からない返事を返した。


 新曲づくりは遅々として進まない。

 どうしたんだろうな。前2曲は割とスムーズにできたのにな。

 アカフジ間に合うのかな……




 今日も暑くなりそうな好天。

 ばあちゃんは仕事に、先輩たちはバイトに。みんな出かける前でバタバタしている。

 島フェスも終わって、今日からは海辺のカフェなので、ボクはのんびりしていても大丈夫なので気楽だ。

 寅二郎のブラッシングをしていたら、伊与里先輩に呼ばれた。


「遠岳、新曲の歌詞、大まかにでいいから数日中に作っとけ。それに音つけるから」

「え?」


 いきなりのことで、言葉の意味を理解したころには、先輩は玄関から出て行った後だった。


「メロディーもなにもない状態で、詩だけ作れってことなのか……?」


 どうしていきなり……




 幼馴染たちが考えてくれたメニューを書いた看板を表に飾る。

 今日から、また海辺のカフェだ。お客さん来てくれるといいんだけど。



「コーヒーと、このベジタブルエッグ?ベネ?」

「エッグベネディクトですね」

「じゃあ、私は、ローズアイスティーとサーモンとアボカドのエッグベネディクトにしようかしら」

「洒落たもんが、たくさんあって迷うなぁ。洋ちゃん、おすすめはどれ?」


 客がいる。なぜか地元の年配の人たちが何人も……


「洋ちゃん、今日は歌わないの?」

「歌?島フェスの時は、先輩たちがいたからできたことで、ボクだけだと無理というか……」

「そうなの?残念だわぁ」


 もしかして、歌目当てで来てくれたのかな。……ちょっと、照れ臭いな。


「じゃあ、レコードでもかけましょうか?」

「いいわねぇ」


 マスターがどこからともなくレコードを持ってきた。お客さんたちのリクエスト曲をかけると、店内がのんびりした空気になっていく。ばあちゃんがよく聴いている懐メロか。この店にはこういう曲があってるな。


「レイくん、音楽が気になるようなら静かな席を用意するけど」

「大丈夫 音楽 聴きながら 楽しい」


 奥の涼しい場所でレモネードを片手に勉強しているレイくんに話しかけると、硬い表情が幾分柔らかくなった。懐メロが気に入ったのかな?


 家庭教師のオルヴォさんに教えてもらいながら数式を解いているレイくんは普通の高校生に見えるな。


 それにしても、レイくん、夏休みまで勉強か。大変だな。勉強の遅れを取り戻すため、夏休みの間も勉強をしないといけないらしいけど。遅れたのは、ボクを捜すために、日本でうろうろしてたせいだろうか。


 レイくんに色々聞きたいことあるのにな。オルヴォさんといっしょじゃあ話は聞けないな。


 午後になっても客は途絶えることなく忙しかった。夕方前にマスターと相談して店を閉めたけど、くたくただ。


「洋太くん、お疲れ様」

「マスターもお疲れ様でした。片付けはボクがやっておきます」

「そうかい?じゃあ、頼もうかな。悪いけど、お先に失礼するよ」


 休みなく料理を作っていて疲れたのだろう。マスター、帰っていく姿がフラフラしてる。


「手伝う」

「ありがとう。じゃあ、床の掃除をお願い」


 レイくんにホウキを渡す。課題が終わってオルヴォさんが帰っても、レイくんはカフェに残って寅二郎と遊んでいたのでヒマなのだろうけど、手伝わせてばかりで申し訳ないな。


 スマホが点滅しているのに気付いて確認すると将さんからだった。

 バイト先の漁港でカジキマグロを分けてもらったから夕飯は期待しろとのことだ。


「レイくん、夕飯の予定、まだ決まってなかったら、うちで食べて行かない?」


 手伝ってもらっているお礼も兼ねて、島の美味しいものをごちそうしたいし。


「ありがとう ごしょうばんにあずかります」

「む、難しい言葉、知ってるんだね」


 レイくん、どこで覚えたんだろう?日本語の修得が早いだけでも驚くのに。



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