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妖精の住処  作者: 速水零
49/312

ツーショット

あらすじ

現役女子高生のSNS講座受講

 豪勢な食事をしている涼、空、海の三人だが、柚の分はない。


 柚は普段涼にくっついて行く時はサンドウィッチや、おにぎりを持たされる。カツサンドやBLTサンドは難しいが、卵サンドやハムサンドなら小さく切ってやれば美味しく食べられる。


 おにぎりも三角に握るのは面倒だがパチンコ玉より一回り大きいサイズに握れば良いだけだ。塩を粒単位で求めてくるのは世界広しといえど柚くらいなものだろう。


 もちろん、他の料理が昼ごはんになる時もある。貴族おうちセットを販売している会社は貴族ピクニックセットという商品(貴族とピクニックがあまり結びつかないが、子ども相手の商品名なら分かりやすさ重視なのだろう)も販売しており、柚のお弁当や水筒など出かける時の必要品は大抵それで揃えた。


 そんな便利な弁当があるのに涼が柚に作ってやらないのは、単に柚サイズの弁当を作るのが面倒なだけだ。


 今日の柚の昼ご飯はおにぎり3つ。具材は鮭におかかにネギトロだ。鮭はフレーク状で混ぜやすく、おかかも同じだ。ネギトロももちろん混ぜやすいのだが、あまりおにぎりにするには保存の観点からオススメできない。しかし、柚が豪華な食事をしてくるであろう涼に普段は食べない美味しいものが食べたい、というリクエストをしていたので仕方なく作った。


 涼たちの食べている料理は匂いくらいしか伝わらないが、明らかに美味しすぎるものを食べているのがわかる。料理の値段も会話から丸聞こえだ。


 すでに3人で万を超えている。驚愕と遠慮をする空と海の声ははっきり柚に聞こえていた。


(これだけじゃ足りないわ。私もそんなイタリアン食べたいー!! なんでこの双子だけこんないい思いして私はこんなネズミみたいな真似してなきゃいけないのよ! あとで絶対涼にいいもの食べさせてもらうんだから!!!)


 なぜネズミなのかは柚にもわからない。こそこそ隠れているやつというイメージなのだろう。


「涼さん、アマトリチャーナってなんですか?」


「私聞いたことありません」


「僕も詳しく知っているわけじゃなくて、少し聞いたことがあって食べた記憶がほとんどないから興味が出て頼んだんだ。見た感じトマトとベーコンを煮込んだソースを使ったパスタだな」


 涼の言う通りアマトリチャーナとはベーコンや玉ねぎをトマトと煮込んだソースと、チーズを用いたパスタで、アマトリーチェというローマの北部にあるラツィオ州の中の村が名前の由来である。アマトリーチェ風という意味だ。


 元々はトマトを使われておらずその時の料理をグリーチャと呼んだ。見た目も今とはだいぶ違う。そして、トマトソースが作られるようになり、グリーチャとまざってからアマトリチャーナと呼ばれるようになったのだが、今ではトマトが入っているのをアマトリチャーナ・ロッサ、トマトが入っていないものをアマトリチャーナ・イン・ビアンコやグリーチャなどと呼んでいる。


「トマトを使ったパスタっていろいろな名前があるので覚えにくいし違いが分かりにくいですね」


「ボロネーゼがその一つですよね」


「あれもトマトソースを使うな。でも食べた感じボロネーゼのように挽肉を使うんじゃなくてベーコンを一緒に煮込んでいるからかなりさっぱりしているな。トマト本来の酸味が強調されてサッパリしていて、それでいてコクが出ている。チーズの種類は慣れ親しんだもののようだけど、質が違うな。原料から拘っているのだろう。よく合っている」


「そう聞くととても美味しそうで、心惹かれます!」


「私も一口食べて良いですか?」


「ああ、僕もそっちの料理が食べたいからシェアしよう。ほら、あー……」


 流麗な所作でクルクルとフォークにアマトリチャーナを巻き付け海に【あーん】をしようとしたが、途中で涼が固まった。


 墓場まで持っていきたい黒歴史の一つ、柚と初めて逢った日の夜ご飯で自分が壊れた事件を思い出す。


 海と空に【あーん】をすることで柚の時のような問題は起こらないが明らかに奇異な目で見られる。マナー違反かは知らないが、一対一のデートならともかくこちらは一対ニ。見るからに双子とわかる二人相手でも非難は避けられまい。


 二人は【あーん】されることに期待の眼差しを涼に向けるが、気づかないフリをして無視し、追加の取り皿を店員に頼む。


「「あ……」」


 残念そうな顔をする双子達。一瞬やっぱりという気持ちが湧き出てくるが、涼のリュックサックから微かに物音が聞こえ正気に戻る。


(小さい音だから僕くらいしか気がつかないだろうけど、バレたらどうするんだ。何しているかは知らないが大人しくしていてもらいたい)


 その後豪華に盛り付けられたパンナコッタを注文する。「これが伝家の宝刀」「映え過ぎ、感動」という二人の反応は見ていて心地よく、一緒に食事をするのも良いものだな、と思った。


 またどこか一緒に食べに行きたいと思うくらいには涼も楽しい食事をできた。パンナコッタの撮影会が長かったのはマイナスだが。



「ほんと、ご馳走になってすみません」


「とっっっても美味しかったです!!」


「ならよかった。僕もここは初めてきたんだけどとても美味しかった。またどこか食べに行こうか」


「はい、喜んで!!!」


「楽しみにしてますね!!!」


 首が千切れんばかりに縦に振る二人。会計の時も割り勘で、と提案されたがこんな笑顔が見られただけで十分得だろう。可愛い妹にご飯を奢った気分だ。


「さて、まだ時間あるし、いろいろ見て回るか」


「「はい!」」


 柚のアドバイス通り、これからはウィンドウショッピングに行くことにした。


「では、次のステップに進みましょう!」


「お洒落なレストラン以外にも撮るべき対象はあるのです」


 涼達が食べたイタリアンは表参道と原宿の間あたりにあり、そのまま食後の散歩も兼ねて原宿にやってきた。


 もう終わったと思ったSNS講座もまだ続きそうだ。


 空と海の一番やりたいことはまだできていない。


「次のステップ?」


「「ツーショットです!!」」


「ツーショット? なんで?」


「ツーショットというよりも友達との映え写真ですね。兄貴がたまに新しい彼女と撮ったりしますよね」


「あれです。彼女である必要はないんですけど、異性と撮るというのは殊の外重要なんですよね」


「涼さん男友達としか撮らないし中々上げないじゃないですか」


「これからタイミングを見計らって私たちと写真を撮りましょう!!」


 双子と一緒に写ったらスリーショットというんじゃないのか、と思ったが黙っていることにした。

詐欺…じゃないはず。でも次のタイトルどうしよう。

食事風景、味の描写を凝りまくって全品書いたら多分3話に渡って描き続けることになりそうですね。


次回

ウィンドウショッピング

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