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妖精の住処  作者: 速水零
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【サブストーリー】もう一つのクリスマス・イブ後

 稲村ヶ崎から江ノ島まで歩いていこうかと思った二人だが、江ノ電で何駅も離れている事を忘れていた。


 ただでさえ歩きにくい砂浜を二キロ以上も歩くのはしんどく、結局七里ヶ浜駅から江の島駅まで江ノ電を使って向かう。


「乗り放題で良かったね」


「そうだねぇ。いやぁまさかあんなに遠いとは思わなかったよ」


 江ノ電の中で二人はまた見通しが甘かったなぁと笑いあった。


 再び江の島駅に到着してからは歩いて江の島弁天橋を渡る。


「歩いて島に行けるってよく考えたらすごいよね」


「確かに。普通島に行くってなったら船だもんね」


 他の観光客の流れに乗りながら翼たちも江ノ島を目指す。


 江の島弁天橋はそれほど長い橋ではなく、少し談笑しただけで島に渡ることが出来た。


 憧れの江ノ島はクリスマスムード一色。街は明るく盛り上がり、辺りはかつて見ないほどの観光客に埋め尽くされていた。


「翼さん、昼食どこで食べる? もうこんな時間だけど……」


「そうだね……まあそこら中に店があるから空いてるところに入ればいいんじゃない?」


「オッケー!」


 寄り道しながら観光していたら既に二時を回っていたが、それでも飲食店は混雑している。


 翼たちは名店など調べず、とりあえず入れる店に入った。


「へぇ、江ノ島ってしらす丼が有名なんだね」


「ほんとだ。色んな店が推してるし、ここもやってるみたいだから食べてみる?」


「うん!」


 そういうことで、翼たちは釜揚げしらす丼を食べてみた。


 言うまでもなく美味しかった。


 二人は興奮してかきこみ、普段食すしらすとどう違うか、海鮮丼をどう思うかなど色々語る。


「どこ行っても人人人だね」


「それはしょうがないよ。なんてったってクリスマス・イブだもんね」


「恋人だったらここで違うものを頼んでアーンッとかやるんじゃない?」


「ははは、そうだろうけど食べたいものが被ったらしょうがないって。でも……できないわけじゃないよね?」


 翼は自身の釜揚げしらす丼を箸で掴み上げる。


「えッ……えーっと……あははははは……じゃあ、あーん」


 白は恥ずかしそうに視線を左右に振ってから小さく口を上げ前に乗り出す。


「あっ……あーん」


 まさか本当にやることになるとは思わなかった翼は一瞬戸惑いながらも、ここで逃げるわけにはいかないと覚悟を固めて箸を突き出す。


 そして親鳥に餌を求める雛鳥のような小さな口にしらす丼を届けた。


 気恥しい。


 周りの客からの視線も相まって翼と白の顔は今日一番赤く染まっていた。


 普段の白なら「じゃあ次は私の番だね!」と恥ずかしがる翼を攻め立てるのだが、流石に気恥しすぎて押し黙ってしまう。


 結局釜揚げしらす丼は早々に食べ終え、お茶をゆったり飲んで一息ついた。


 時計の短針は3を回り翼たちは店を出る。翼の行きたいスポットの江ノ島シーキャンドルを目指し坂を登っていく。


 途中江島神社辺津宮という有名な神社を通り過ぎ、むすびの樹が目に映る。二つの幹が一つの根で繋がっているこの樹木の付近にはピンクのハートが描かれた良縁成就の「むすび絵馬」がたくさん掛かってており、一目で恋愛スポットの一つだと理解した。


「すっご……これみんな今日結んでったんだ」


「日付今日のばっかりだね。一体この絵馬の願いが続くカップルは何パーセントなんだろう?」


「ははは……確かに気になるけど、そこは黙っていようか」


 白の厳しいコメントに翼は苦笑いで答える。この言葉により二人は絵馬を結ぶ気が失せた。


 目的地はさらに先なので少し立ち止まった後さらに坂を登っていく。


 そして江の島中津宮広場という有名な花園をわいわい楽しみながら進み、エスカーという坂をショートカットするチート乗り物を避けて亀ケ岡広場にやって来た。


 クリスマス用に電装で彩られ、このまま日が沈むと艶やかにライトアップされるのだろうと期待が高まる。


 目の前に目的地の江の島シーキャンドルが現れたが、先に展望台に出て辺りの景色を満喫し、満を持して江の島シーキャンドルを登っていった。


 冬の日は早く沈んでいく。クリスマス・イブは一年を通してトップクラスに早く沈む時期で、翼たちがのんびりと坂を登って景色を楽しんでいる間に大分日が傾いていた。


「おおおっ! さっき展望台で見たよりもずっと綺麗!」


「ほんとほんと……ここに行こうって提案しておいてなんだけど、さっき見たところからでもう十分じゃないのって思ったらこの絶景。いやぁ、お金を払う価値のあるいい所だね」


「ははっ確かに」


 白も同じことを思っていたのか深く頷く。


 二人は伊豆半島の先に沈んでいく日を眺めながら引かれるように手を握り合う。


 白の小さくて愛らしい顔が翼の肩に寄り掛かる。


 馴れない二人は周りの熱い雰囲気とムードに押し流されて、恥を胸の中で抱きながら攻め合い、確かな心地良さを実感していった。

テンポ早めに進みました。サブストーリーなのでじっくり出来ません涙。江ノ島いいところですが紹介しきれず、次話で終わります。

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