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妖精の住処  作者: 速水零
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クリスマス・イブ夕食の部

「水族館って江ノ島にもあるんだっけ?」


 アクアミュージアムを出た涼たちは八景島シーパラダイス内にあるレストランに向かっていた。


 ホテルもあるこの八景島シーパラダイスはレストランも充実しており、海を見ながらオシャレにディナーが楽しめる。


「あるよ。正確には江ノ島に入る橋の近くにあるんだけど、そこも割と有名なのかな? 県外からどう思われているか知らないけど」


「江ノ島に遊びに行って水族館回って砂浜を歩く、そんなデートもありね!」


「ははっ、すっかり水族館にハマったな」


「そりゃもう! なんか別世界の生き物みたいで最高よ! 動物園とかもまあいいんだけど、前に鹿に出会った恐怖がね……。柵があるから安全だってのはわかるんだけどさ」


 夏に伊豆キャンをした際、柚は一人で自家製(?)露天風呂に入っているタイミングで鹿と出会っている。


 幸い襲われることはなかったものの、あれだけ大きな野生動物に遭遇すればトラウマになってもおかしくない。実際、柚は一時期精神疾患を負って外に出られない時期があった。


 もう涼がいれば安全だと思っているが、怖いものは怖いのだ。


「確かに動物園の方が水族館よりは怖いよな。ホッキョクグマとかはともかく、魚は陸じゃ無害みたいなもんだし」


「そうそう。それに、動物園って子どもの頃よく行ったけど、水族館は中々行かないからすごく新鮮なのよ。海なし県出身からすれば海中生物はある種憧れみたいなものだし」


「海がない県か……なんか辛いな。僕はたまに海見ないと落ち着かないかも」


「よく横浜とか横須賀とか行ってるもんね」


 涼は海を見ながら缶コーヒーを飲むのが最高の娯楽だと思っている。海の遠い県には住みたくないと思った。


「だからって港とかに住むのもなぁ。別荘ならいいけど、そういうところ住むと車やバイクが塩害で酷い目に遭うんだよ」


「それに海の感動が薄れるもんね」


「それな」


 どこのレストランで食べるかはあらかじめ柚が決めており、涼は柚の案内のもとイタリアンが楽しめるレストランに入った。


「なんか最近外で食べるってなったら高確率でイタリアンになるよな」


「そうね。海鮮料理とかなんでもいけるファミレスとかもいいけど、あんなに綺麗な魚を見た後で海鮮はいやだもん。ファミレスも好きだけどせっかくここに来たんだし……消去法? イタリアンにハズレなし!」


 ハワイアンカフェというおしゃれで美味しそうなレストランもあったが、残念ながら営業時間がもうすぐ終わる。


 他には海カレーなんていうものもあったが、柚の頭の中にはドラマで見るような「美味しいディナーを囲みつつワインを傾ける」デートが浮かんでおり、美味しそうなカレー料理屋があったが、眼中になかった。


「ヴェネチアとか海の見える街でも食べられている印象があるしな。和食もいいけど、今回もやっぱこれだな」


 クリスマス・イブなだけあって席はほとんど埋まっていた。ちょうど海を眺められる個室にいたカップル客が帰り、手早く片付けた店員にその場所まで案内される。


 涼が場違いにも一人で入店したことに店員は僅かな反応も見せない。


 ここで柚を取り出してテーブルに着かせたらどんなリアクションをとるのか試してみたい気持ちに駆られるが、涼は自制して一人メニューを広げた。


 そして店員が出ていったのを見届けて柚を対面に座らせる。


「個室になってるなんてすごいな。これなら柚を出しても見られることはないだろう」


「でしょでしょ! メニュー決めもそうだけど、この店は個室で食べられるからちょうどよかったのよ!」


 柚は女らしさを得た胸部を張ってドヤ顔を見せる。


「さすがいいとこを選ぶな。……それじゃあ何食べようか。柚の好きなのを選んでいいよ」


「いいわよ、涼が食べたいものを私もいただくわ」


「んー、なら、パスタは柚が選んで、ピザを僕が選んで食べよう。それでいい?」


「そうね、そうしましょう!」


 メニューをじっくりと眺め、涼は店一押しのマルゲリータを、柚はボロネーゼを選んで注文した。


 十五分ほど談笑して待っていると待望のディナーがやってきた。


「ヤバっ! エモッ! 激エモじゃん!」


 海を見ながらイタリアンに舌鼓を打つ。柚の理想が完成した。


 涼は柚のはしゃぎっぷりをにこやかに眺めつつ、料理を写真に収める。柚はスマホを弄れても写真を撮るのは不得手だ。高い視点から撮ることも背景を調節するのも難しい。


 しばらく涼は柚の指示に従い夜景をバックにディナーを記録していった。

フラグとかじゃなくて、普通に投稿できてませんでした。

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