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妖精の住処  作者: 速水零
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幼馴染の嗅覚

「なあなあ、なんか面白いことないかぁ?」


 涼の幼馴染であり親友の一人、碧光は同じく幼馴染であり親友でもある田中希、鳥海翼、木下涼を呼び出して問い掛けた。


 普段から同じような質問をしてくる光だが、この時ばかりは涼の他二人も不満に思っていた。


「わざわざみんなを呼び出しておいてそんな話をするためだったのか?」


 翼と涼が合コンに言った次の日の日曜日、突然呼び出された。もしかして光は合コンの案件を知っているのではと疑う二人だが、お互い「あのことは他言無用にしよう」と盟約を立てている。


 漏れたとするなら葵からだが、あんな性格をしていても口は固く、人の信頼を裏切ることはない性格なのでその線も薄い。


 ただの光の気まぐれかと判断した二人は希よりも一層面倒くさそうに対応していた。


「そうだよな。俺だって明日から色々と予定があるから準備したかったんだけど、光が「どうしても相談したいことがある」って言うから来たんだけど……」


 希は自室で害虫でも見つけたかのような苦い顔をして光に文句を垂れる。


「明日から色々と予定? 何かあるのか?」


 最近いつもの地元仲間たちで集まることが少なくなり、希以外の三人は何かあるのかと疑問符を頭に浮かべている。涼が代表して希に聞いてみた。


「んーん、特に何かあるわけじゃないけど、まあ高校の友達と明日からスノボーに行くんだよ。スキー場の近くに別荘持っている金持ちがいて、そこにお邪魔するんだ」


「へぇ、それは楽しそうだね。でも希ってスノボーやったことないんじゃなかった?」


「まあな。でも行くって約束しちゃった以上行かないとダメだろ。別荘持っている奴が結構うまいみたいだから色々と教えてもらうさ」


 希は一見嫌々参加するような態度をとっているが、長い付き合いの幼馴染達はそれが本当の感情の反対であることを容易に見抜いている。


「ふぅん……どうやらここに面白そうな話が眠っているみたいだな」


 ドーベルマンもビックリな嗅覚を発揮した光は希に焦点を合わせ「それって誰と行くん? 当然女連れなんだよなぁ?」としつこく捲し立てる。


「えっ、そ、そんなことあるわけ……な、ないだろ! あ、相手はみんな男だって!」


 本当は希以外参加者は全員女である。


 希、希の妹(超ブラコン)、希によく突っかかる永瀬という転校生、希のクラスの委員長、永瀬を慕う後輩の五人で永瀬の家が持つ別荘に向かう予定だ。


 こんなことを話したら光だけでなく涼と翼に根掘り葉掘り尋問されるに違いない。


 別にやましいことは無いのだが、この幼馴染達は人の弱みをこれでもかと攻め立てて来る。彼らから受ける精神的苦痛はテストで赤点を取ってしまった時に匹敵する。


「そ、そういえば涼って新しい講師を雇ったんだろ! そ、その子はどんな子なんだよ?!」


 実は楽しみイベントの前に余計な悩みを抱えたくない希は、何とか興味の矛先を変えられないか頭をフルに回転させていた。


「ああそれな! 俺達には頼まずに誰か雇ったんだろ!? 俺もずーっと気になってたんだよ! 誰なんだ、涼が選んだ相手ってのは?!」


 希が嘘をついていると見抜いている光は後でその事に追求すればいいかと考え、あえて希の作戦に乗ってみることにした。


 涼が新しい講師を雇ったことは他三人も知っている。それが誰かは分からないが、涼が高校に友達がほとんどいないので、誰にお願いしたのか希と光はずっと気になっていた(翼は昨日答えを知ったのでもう解決済み)。


 もしかして相手は女なんじゃないか、そんな空気が涼たちの間に流れ込む。


「そんな面白い話じゃないよ。僕のやっているファミレスのバイトの後輩が結構頭良いから頼んだだけだ。光の望むような面白い話はないって。……それより、光ってクリスマスに彼女とデートに行くんじゃなかったのか? 面白い話は自分が持っているだろ」


 涼は肯定も否定もせず、そもそもの問題を問い詰めて発問を潰そうとした。


 希も先程までは涼に矛先を向けようとしていたが、焦る原因は光が作ったことを思い出し、再び焦点を光に合わせる。


 翼も涼が追い詰められたら合コンの話を吐いてしまうという恐れを感じ、光に鋭い視線を向けた。


「な、なんだよお前ら。そんな人を殺しそうな目を向けてぇ。そんなに俺が彼女と聖夜を過ごすのが羨ましいのかよぉ!」


 光は前世がイモムシなのではと思わせるほど気色悪く体をくねらせ、憎たらしい声色で涼の言葉を受け止める。


 もしかしたら光が彼女に()()振られて鬱陶しく絡んできたのかと思った涼たちだが、今回は光が惚気話を語るために呼び出したのだとようやく理解できた。


 光はこれまでにないほど長い期間同じ相手と交際している。自慢話は山ほど溜まっているのだろう。


 三人とも突っ込まれたくない話を持っている以上、ウザったい話でも甘んじて受け入れるしかない。


 涼たちに話題を求めていた光はその後饒舌に惚気話を永遠と語り続けた。


(僕も公に柚と付き合っているってなったら光みたいになってしまうのだろうか……)

二泊三日バイクで旅行してきました。たまには旅館に泊まるのも良いですね。ご当地グルメと地酒を呑みすぎて一日投稿出来ませんでした……。

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