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妖精の住処  作者: 速水零
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柚の悪巧み

あらすじ

涼の友達の妹から合コンの誘いが来た

「教えて欲しい? どうしようかな〜」


「見ようと思えばそこで充電しているスマホで見られるんだぞ」

 

 涼はベッド付属の棚に無設置充電器を置いている。手を伸ばせば届くが、柚がやってくれるならわざわざ動く必要はない。人形型のAIに頼んでいるみたいな感覚だ。生意気なので売れはしないだろう。


「しょうがないわね。えっと、「えーっっっっ!! 涼さん彼女できたんですかっ! まさか海!? いや、それはないですよね。いつから付き合っているんですか? どんな所に惚れたんですか? どちらから告白したんですか? 涼さんからってことはありませんよね?」だって。すごい捲したてるようにきているわね」


「本当に誤解するとは……」


「でしょ!」

 

 どこか誇らしげな様子だが、少し影が見える。


「何か気になるところでもあるのか?」


「そういうところ、ほんと鋭いわね。なんかこの子取り繕っている気がしたのよ。返信も既読ついてからにしてはちょっと間があったしね。ここまで興味津々っていう文面で来ているのにそれはおかしいと思って。もしかしてこの子涼のことが好きなんじゃないの?」


「さあな。懐かれているとは思うが、恋愛感情までは知らん」


「なんか他人事のようね」


「気にしたり考えたってしょうがないからな」

 

 心底興味がないといった様子。柚は少し涼のことを見失った気分だ。


「で、返信どうするの?」

 

 涼の底を確かめる気が起きない。そういうのは時間をかけて知っていけばいい話だ。


「ただの常套句だ、恋人はいない。とでも返信しておいてくれ」

 

 涼は話が終わったと思い再び横になる。


「……ええ、わかったわ」

 

 面白いことを思いついた。

 

 柚はカメラアプリを開いて内カメラに変更し、遠近法を意識しつつスマホペンを駆使してシャッターボタンを押した。

 

 パシャッ!

 

 無音設定にしたのを忘れたことを後悔したが、音がなってしまっては仕方がない。急いで先ほどまで開いていたringを起動させる。最後に会話していた空との連絡画面が自動的に開かれる。それを視認した瞬間慣れた手つきでいま撮った写真を送信し、「これが新しい僕の彼女。遠くの女子高に通っている子で、今遊んでいるとこ。とっても可愛いだろ!」という言葉を添える。涼のキャラではない文面だが気にしない。


「おい、柚いま何をした?」


「ただ自撮りしただけよ」


「なぜ今やった?」

 

 女子高生についての知識が浅い涼でも今写真を撮るというのは唐突すぎる話だとわかった。起き上がって柚を睨む。


「遠近法っていうのを実感したくてね。ほら、テレビとかでもコップに乗ったように見せた映像とかあるでしょ、その逆をやりたくて」


「何の目的で?」


「目的なんてないわよ」


「空に送るためじゃないのか?」


「……さすが涼ね、とだけ言っておく」

 

 それを聞いて涼はため息をこぼした。一瞬怒りが湧いたが、冷静になってみるとそこまで実害はないように思える。

 

 なら、もうどうでもいいか。

 

 柚が送りそうな文面を想像し、そこから空の反応、海への伝達を予測。色々頭の中でこれから起こりそうなことを検証した結果、わざわざ空に何か送る必要はないと判断し、三度横になる。

 

 涼の興味がすぐに失われたことを見て、柚は不審に思った。


「柚、明日の天気と僕の好きそうなニュースを教えてくれ」


「えっとね……」

 

 柚は天気アプリを起動して天気予報を確認し始める。いきなり話題が変わって驚き、思わず涼の言うことを聞いていた。


「天気は晴れね、気温もそこまで今日と変わらないみたいだわ」


「ニュースは?」


「涼の使っているスマホ会社の新作予想に、新型バイクのインプレ、観光地特集、携帯会社の新しいサービスに、漫画の劇場化や実写化情報、色々あるわね。なんか変な趣味ね、相変わらず」


 涼は多趣味で色々な情報を集めるのが好きだが、興味がある分野とトップニュース以外は全く受け付けていない。


「全部読み上げてくれ」


「ええ、わかったわ……ってなんで私がそこまでやらなきゃいけないのよ。スマホにあるAIでもそこまでのサービスはしてくれないわよ」


 手を止めて、涼の方を睨みつけるが、涼の目はキャンプ用品の雑誌から離れない。


「そのくらいいいだろ」


「私はあなたの僕じゃないんだけど」


「手助けしてくれる妖精さんだろ」


「だからって召使い扱いはやめてほしいわ」

 

 今涼に使われることに対して文句があるわけではない。いや、少しくらいはあるが、問題はこれから先、柚と涼の関係が対等の人間同士ではなく、主従関係や道具と使用者のような関係になるのは嫌だった。


(涼が私のことを便利なペットのように思うようになったら私と恋人みたいにはなれない。私以外の可愛い彼女ができるのは絶対イヤ! 気にしすぎなような気がするけど……)


「嫌ならしょうがないか。あとでチェックすることにしよう」


「涼ってニュースとか気にするのね」


「全く興味ないさ、自分の好きな記事以外はな。でも学生だから時事を知っておくととても便利なことがある。勉強の補助になるし、一部の意識高い系の奴らとの話題合わせにもなる」


「勉強の補助はいいとして、涼が話題合わせって違和感しかないわね」


 我を貫き通すような涼が普通の高校生らしいことを言うものだから面を食らった。


「友達と仲良くするための話題づくりじゃないからな。ある意味合ってはいるけど」


「どういうこと?」


「僕自身は政治家になるだとか、IT関係に進みたいだとかいうことには興味がないが、それを目指している人には興味がある。うちの学校は俗に言う天才ってやつがチラホラいるからそいつらと話していると飽きない。会話のリズムや波長みたいなものがよく合うんだよ。発想力もその場の機転も凄いしな」


「私にはあんたもそんな人種の一人に見えるわ」


「僕はそこまでの器じゃないさ。ホンモノってやつは本当に凄い。その中でもさらにピラミッドのような上下があるんだから面白い。僕の知り合いで何十万人に一人ってほどの天才がいるんだが、話していていつも驚かされる。何時間語り合っても足りないしそいつの底が見えてこないんだ」


 涼は饒舌に語った。柚は初めて涼の高校生らしい一面を見れたと思った。他人に全くの無感情な冷たい人間なのかもしれないと考えてしまう時多かったが、涼の顔は好きなスポーツ選手について語る少年のようだった。


 ただ、少しだけ涼という人間が余計歪に見えてしまった。


 そして、やはり柚には涼もその天才の集団の一員にしか見えない。上には上がいるのだろうが、それでも柚にとって涼は完璧な超人としか捉えられない。


 それは口に出さずに他の言葉を並べることにした。


「でも高校ではほとんど誰とも喋ってなかったわね」


「お前がいたからな」


「あ、確かに」

 

 あの時の自分は涼と話していなければ不安でしょうがなかった。それを無視して友達と談笑することができるほど涼は冷酷ではない。

 

 ちょっと申し訳ないように思えたが、涼ならいいかと思い直す。


「ま、だからと言って普段たくさん話しているわけじゃないけどな。基本的に人付き合いってやつが僕は嫌いだ。だから気分がいい時とか向こうからアプローチがあった時だけ会話する」


「あんたそういうところあるわよね。治したほうがいいわよ」


「よく言われる。だけど必要以上の付き合いはあまりしたくないんだよ」

 

 何故だか柚は涼のことを不憫に思えた。

ちょっと柚の本音が見えました。

なかなか突飛な発想ですがネガティブになりやすいので仕方ないかもしれません。

お茶会回避できましたかね?


次回

思い出した欲求

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